JICA海外協力隊の世界日記

セントルシア便り

隊員Gのセントルシア日記_16 〜Sunny & Rainy〜

 雨季に入りました。バケツをひっくり返したようなシャワーであることが多く、日本の梅雨のように地雨が長く続くことはあまりありません。北緯14度に位置するセントルシアが太陽に直射される、いわゆるゼロ・シャドウの日(4月28日)を過ぎましたので、この時期(次のゼロ・シャドウ8月13日までの期間)、太陽が南側に見えることは全くありません。日本人にとっては不思議な光景なのですが、太陽の軌道が一日中北側にあるのです。貿易風が弱まる中、高い位置にある強い太陽光線の影響を受けて、海水の温度が上がり、水蒸気を大量に含んだ上昇気流が発生しやすくなっているようです。ハリケーンのシーズンにも突入しますので、私たち海外協力隊員にも、外出禁止令が発令されることを想定して、水や食料の備蓄を始めるようにとの指示がありました。

 雨季に入って変化したことと言えば、観光客の姿をほとんど見かけなくなったことでしょう。乾季には毎日のようにカストリーズ港に停泊していたクルーズ船が、突然消え失せたのです。また、グロスレイ地区には、気候の良い乾季だけセントルシアで過ごして、雨季には暖かくなるヨーロッパ本国に帰って行く、というまるで渡り鳥のような生活をしている外国人もいると聞きました。そして、「外国人観光客がいなくなると、乾季に成立していた需要と供給のバランスが崩れて、物価も外国人価格からローカル価格に変わるよ。」とも耳にしました。ただし、このプライス・ダウンに関しては、未だに実感できていません。じっくりと心待ちにしたいと思います。

 さて、上の図を頭の中で描いた私は、「セントルシアでは、夏至よりも、ゼロ・シャドウの日(太陽が天頂から直射する日)の方が、昼が長いのではないか?」と疑問に思いましたので、少しミニ探究してみることにしました。結論は、「北半球では、どの地点も、夏至が一年中で最も昼が長い。」です。この天球の図は、私も小学生や中学生の頃に、太陽の日周運動や年周運動を理解するのに、大いに助けてくれた絵です。皆さんも、馴染みがあるのではないでしょうか。春分の日(3月20日頃)と秋分の日(9月23日頃)は、太陽が赤道直下の国々を直射する日。セントルシアのゼロ・シャドウの日(4月28日と8月13日)は、太陽が北緯14度の国々を直射する日、そして夏至(6月21日頃)は、太陽が北回帰線(北緯23度26分)上の国々を直射する日です。

 確かに外見上は、夏至よりもゼロ・シャドウの日の方が、昼が長そうに見えますね。しかし実際には、セントルシアにおける夏至の日の昼の長さは約13時間、ゼロ・シャドウの日の昼の長さは約12時間20〜40分なのです。地軸が北極星の方向(北緯14度のセントルシアの場合は仰角14度)に伸びているのですが、この地軸上に太陽の日周運動(円)の中心があります、そして、昼の長さは「(昼の部分を表すおうぎ形の)弧の長さ」ではなく、「(昼の部分を表すおうぎ形の)中心角」によって表現されているのです。従って、この天球の図は、北緯34〜35度の日本の子どもたちにとっては太陽の動きを理解するのに大いに役立ちますが、北緯14度のセントルシアの子どもたちにとっては、誤解を招きかねない絵となっているのです。

 雨季に入って、私がとても喜んでいることがあります。マンゴーの季節がやってきたのです。信じてもらえないかもしれませんが、日本ではとても貴重なフルーツが、その辺りの路地に実っているのです。アメリカでは草むらにブラックベリーが、イギリスでは庭にリンゴが、タイでは通りにバナナが実をつけていました。しかし、正直なところ、野生の味でしかありませんでした。ところが、ここセントルシアのマンゴーは、路地の果実でも、プロフェッショナル級の甘さがあるのです。まさに楽園と呼ぶにふさわしい、トロピカルな美味です。どうして、何も手をかけなくても、ここまで甘いのでしょうか。太陽と雨の恵みなのでしょうか、それとも生命が繁茂する熱帯で生き残って行くための進化のカタチなのでしょうか。

 いずれにせよ、誰も疑うことのない、文句なしのマンゴーのうまさが、セントルシアンたちの日々の営みに彩りを与えてくれていることだけは、確かなようです。

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