2025/06/14 Sat
自然
隊員Gのセントルシア日記_20 〜Lobster & Phoenix & Rain Forest〜


常夏の国・セントルシアでは、一年を通して、様々な花々の色彩を楽しむことができます。赤あり、橙あり、薄紅あり、黄あり、白あり、紫あり、薄青あり。色の鮮やかさを、次から次へと切れ目なく味わうことができるのです。太陽が燦々と降り注ぐからでしょうか、それとも海洋性の雨が多いからでしょうか、いずれにせよ、日本の夏とは生命繁茂の次元が異なるようです。というのも、花の彩りだけで話は終わらないのです。植物の形も、見事に力感があるのです。上の画像は、私の配属先のカレッジの茂みの中で、自生していたLobster Claw Plantという植物を撮影したものです。日本では、ヘリコニアという名で、生花やフラワーアレンジメントの素材として親しまれています。ところが、ここセントルシアでは、生き生きとした野生の力強さとして、まるで当然のように、身近に存在しているのです。何せ「ロブスターのはさみ」と名付けられているのですから、言い得て妙ではありませんか。また、この植物、Hummingbird(ハチドリ)が花粉を運ぶ役割を担っている、とも言われています。熱帯でしか見られない、まさに劇的な受粉の瞬間には、心が躍り出すこと、間違いありません。
樹木に関しても、その力強い姿に圧倒されてしまいます。私が、特に心を動かされているのは、鳳凰木です。英語名は、残念ながらPhoenix Tree ではなく、Royal Poincianaという格調高い名前が付けられています。皆さんもご存知のように、鳳凰は、中国の神話の中に登場して、平和や幸福を象徴する、縁起の良い鳥です。この鳳凰の姿をたくましく想像させてくれる鳳凰木が、惜しげもなく、あちらこちらに植樹されているのです。
上の画像は、私が奉仕活動をしているボーイズ・トレーニング・センターの校庭にある鳳凰木です。今まさにカリブ海に向かって飛び立とうとする火の鳥の迫力を写し出そうとしたのですが、面目ありません、私の写真の腕前では少し伝わりにくいかもしれませんね。夏には葉が茂り、大きな木陰を作って、人々に憩いの場を提供してくれるようです。台湾やタイやマレーシアなど、アジアの熱帯でも見かける木ではあるのですが、こうして1年を通して生長の移り変わりを見守ることができるのは、とても幸せなことです。どの鳳凰木にも個性的なそれぞれの力感があるのですが、勢い余って道路のアスファルトやコンクリートを破壊するほどに、土中に根を張り巡らすようです。豆科の植物で、さやは50〜60cmもあろうかというくらい大きいのですが、豆自体は意外に小さく、弱い毒性があるとのことです。子孫を残そうとする本能がもたらした進化のカタチなのかもしれません。


セントルシアの熱帯雨林は、私にとって、まだ未体験ゾーンです。ところが、ジャングルの生命力を容易に想像させてくれるものがあります。その象徴的な存在が、ガジュマルです。上の画像は、カレッジ近くの林の中で撮影したものです。ガジュマルの種子は、果実を食べた動物によって運ばれ、糞とともに落とされます。他の樹木に宿り、発芽し生長していく場合もあります。幹から出た気根が、ひとたび地面に達すると、我が意を得たように、そこから水分や栄養分を吸収し、急成長します。そして、やがては宿主の樹木を覆い尽くし、締め殺してしまうのです。中には、ひとつの個体で森を形成するような例さえある、とも言われています。私自身は、台湾の台南市で、ガジュマルに丸ごと飲み込まれてしまった建物を見ました。まさに恐るべき生命力ではありませんか。ガジュマルの仲間として、ベンガル菩提樹という木がありますが、形が定まらない樹姿は、始まりも終わりもない輪廻を表している、とも言われ、仏教的な哲学さえ与えられているのです。
熱帯植物の鮮やかな色彩、力強い形、溢れる生命力が、熱帯雨林ジャングルにおける冒険の旅へと私を誘ってくれます、正しく畏れて、正しくトレッキングしてみようと思います。未知との出会いは、実に愉しい。
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