2025/07/05 Sat
自然
隊員Gのセントルシア日記_23 〜Zero Shadow of the Moon〜


第16話で、セントルシアでは、今年は4月29日と8月13日がゼロ・シャドウの日で、正午頃には天頂から太陽に直射され、私たちの影が消え失せる、というお話をさせて頂きました。そして、この4月29日から8月13日までの間は、太陽が南の空になく、一日中北の空にあるということにも、触れました。写真は、北向きに設置されたソーラーパネルが、とても珍しかったので、思わず撮影したものです。日本ではちょっと考えられない発想ですよね。
ゼロ・シャドウは、北回帰線(北緯23.4度)と南回帰線(南緯23.4度)の間に位置する北緯14度のセントルシアだからこそ体験できる天体ショーですので、私自身はワクワクする気持ちを抑えることができません。そして、ごく自然に、「もしかすると、セントルシアでは、月も天頂から直射する日があるのではないか?」という問いが、私の中で湧き上がってきました。「月の光が天頂から私たちに降り注ぐ夜」とは、なんてロマンチックなのでしょう。早速、考察してみることにしました。皆さんと考察して仮説を立てた後に、Chat GPTに尋ねて、検証してみることにしましょうね。


最初に、とても自分勝手な仮定ではありますが、満月に限らせて頂きます。満月は、地球を挟んで、ちょうど太陽の反対側にありますので、考えやすいのです。素人なりの考察ですので、どうかお許し下さい。まず、セントルシアをはじめ北緯14度の地点が、天頂から太陽に直射される日のモデル図(上)です。昼の正午(A地点)には、見事に直上から太陽光がやってきます。しかし、残念ながら、この日の真夜中の午前0時(B地点)には、(太陽の反対側にある)満月の光は、南の空からやってくることがお分かりいただけるのではないでしょうか。数学が得意な方であれば、この日の満月の南中高度が90度―(14度+14度)=62度という計算もできるのではないでしょうか。(実際には、月の公転面が、地球の公転面に対して、5度程度傾いていますので、実際の南中高度は約57度と計算されます。)
残念ながら、セントルシアにおいて、太陽のゼロ・シャドウの日は、(たとえ満月であったとしても)月のゼロ・シャドウの夜ではないことがわかりました。しかし、モデル図を眺めると、どうやらこの日、月に天頂から直射されている場所が南半球にありそうですね。その通り、南緯14度の地点で、満月のゼロ・シャドウが実現しているのです。


そこで、次は反対に、南緯14度の地点が、太陽が天頂から直射される日のモデル図(直近)を用意しました。昼の正午、南緯14度のB地点には、見事に直上から太陽光がやってきます。そして、真夜中の午前0時、今度は北緯14度のA地点に、満月の月光が天頂から降り注いでくるのです。(水を差すようで恐縮ですが、月の公転面は、地球の公転面に対して5度程度傾いていますので、実際にはこんなに単純な計算ではありません。また、「満月」という仮定も強引すぎるかもしれません。「考察を皆さんに楽しんで頂きたい」という趣旨ですので、どうかご容赦下さい。)
従って、仮説は「南緯14度の地点が、正午にゼロ・シャドウ(太陽が天頂から直射する)となる日、もし満月であれば、北緯14度の地点では、午前0時に月が天頂から直射する。(月のゼロ・シャドウが実現する)」となります。それでは、この仮説を疑問文にして、ChatGPTに尋ねてみましょう。すると、「とても鋭い質問です。」と嬉しい前置きがあって、「はい、ほぼ確実に、午前0時ごろに、月が北緯14度の地点で天頂から直射します。」という結論を得ることができました。
今年、次回、南緯14度の地点が(太陽の)ゼロ・シャドウとなる日は、2025年11月1日(月齢9.1)です。残念ながら、満月ではありませんので、直近の満月の夜、11月7日午前0時に夜空を見上げて、ゼロ・シャドウに近いロマンチックな月を味わいたいと思います。ごめんなさい、セントルシアなど北緯14度の地点に限定したお話でした。日本では何も起こりませんので、悪しからず。
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