JICA海外協力隊の世界日記

セントルシア便り

隊員Gのセントルシア日記 〜Lighthouse〜

 今回は、セントルシアの中で、特に私が好きな場所の一つをご紹介しましょう。それは岬の丘の上にある灯台(Vigie Lighthouse)です。灯台は船が安全に航行できるように、どこからでも見える位置に建てられています。裏を返せば、灯台からの見晴らしは、視界を遮るものがなく抜群なのです。「息を呑む」という表現が英語にもありますが、この「Breath Taking 」がまさにピッタリの景色となっています。

 首都カストリーズのダウンタウンが、まるで箱庭のように、そこに広がっています。巨大なクルーズ船が、今まさに港に入ろうとしていますが、小さなおもちゃにしか見えないですよね。スフレ地区のピトン山やグロスレイ地区のピジョン島も、遥か彼方に臨むことができます。また、フランス領のマルティニーク島もかすかに確認することができます。そして何よりも、カリブ海が青く広い。まるで大空と仲良く肩を並べているかの様です。一度は、海面から生える虹を見たこともありました。科学としては、もちろんこの現象を理解できるのですが、その神秘的な光景には別世界を思わせる魅力がありました。

 レーダーもあり機密情報が扱われている可能性もあるのですが、朝7時〜夕方6時の間は、「Enter At Your Own Risk」という条件はつくものの、この灯台管理区域は出入り自由の状態となっています。「素敵な国土を存分に味わって欲しい」という粋な計らいなのかもしれません。有り難いほどに、おおらかな国民性ですね。

 カストリーズ港は深く天然の良港で、以前はアメリカ軍やイギリス軍の重要な軍港として活用されていたそうです。そう言えば、私の配属先であるサー・アーサー・ルイス・コミュニティー・カレッジもMorne Fortune という丘の上にあり、とても素晴らしい眺めを味わうことができます。しかし、戦時中は周囲を広く見渡すことのできる軍事拠点として使われていたようで、そのときの兵舎を私たちは今、講堂や教室や教員室などの大学施設として使用しているのです。「さぞかしノスタルジックな雰囲気を味わうことができるでしょう」と現地の人に声をかけられますが、癒しの眺めを提供してくれる愛おしい地形が以前は軍事利用されていたとは、なんとも皮肉な話です。

 実は、私は毎週末、この岬の灯台を訪れています。Vigie Lighthouseは、居宅から3.5kmの距離にあり、土曜日か日曜日の早朝、まだ涼しいうちにジョギングで訪ねることにしているのです。私の海外協力隊員としての派遣期間は2年で、約105週あります。私は、この長期派遣を心身共に元気で乗り切ることができるように、計100回の灯台ジョギングにチャレンジするという目標を掲げました。緩やかではありますが坂道を上り下りするコースですので、体力的には大変なのですが、美しい景色が待ってくれているというモチベーションが私を駆り立ててくれます。

 そして、私にはもう一つ、走る原動力となっているものがあります。私は派遣を控えて、長野県駒ヶ根市での73日間の派遣前訓練(全員参加)だけでなく、愛媛県伊予市でのグローカルプログラムという75日間の事前研修(希望者対象)にも参加しました。その時のJOCA(青年海外協力協会)のファシリテーターが、「研修は非日常ではあるが、自分を見失わないように、普段していることを継続して行うことを勧める。」と、アドバイスしてくれたのです。私は、毎週末に自宅近くのダムを周回するコース(約7km)をジョギングして健康体を維持していましたので、伊予でも伊予灘沿いを往復するコース(約7km)を、駒ヶ根でも訓練所から光前寺を折り返すコース(約7km)を、毎週末に欠かさず走り続けることにしました。そして、私は今、セントルシアで灯台を折り返すコース(約7km)を走り、長旅におけるルーティン・ワークの底力を実感しています。まさにLighthouseの灯火のように、行く道を示してくれるJOCAファシリテーターの一言でした。感謝の念に堪えません。

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