JICA海外協力隊の世界日記

セントルシア便り

隊員Gのセントルシア日記 〜The Land The People The Light〜

セントルシアは北緯14度に位置します。北回帰線が北緯23度あたりにありますので、1年に二度天頂から太陽に直射されて、私たちの影が消え失せてしまうという驚くべき瞬間があります。日本であれば理科年表を紐解くところですが、ここセントルシアでは叶いませんのでAIに手っ取り早く尋ねてみると、夏至を挟んで5月13日または14日の正午と、7月29日または30日の正午と計算してきました。そして、この間の時期は太陽の南中高度が90度を超えるのです。どうりで暑いはずです。

生命繁茂の夏が一年中続きますので、命あるもの全てが輝いて見えます。特に熱帯の花々はその美しい色彩を競い合っているようにさえ見えます。また、その花々に集まる鳥のさえずりも南の島らしさを醸し出してくれます。(世界日記に音声データを貼り付けて、ご紹介できないのが残念です。)そして何よりも、灼熱色に輝く人々の笑顔がとても素敵なのです。イギリスとフランスが14回もこの小島の領有権を争った歴史があるとのことですが、「島の魅力、さもありなん!」と納得してしまうのは私一人ではないことでしょう。

大航海時代、ヨーロッパの帆船は貿易風を利用して大西洋を横断し、新世界を目指しました。北半球では、赤道から北緯30度くらいまでのところを吹く北東の風のことを貿易風(Trade Wind)と呼んでいます。そして、植民地政策を推し進め、公易品をたくさん積み込んで、偏西風に乗って再び祖国へと帰っていくのでした。私は北回帰線まで上がれば西風が吹いているのかと思っていましたが、間違いでした。地球が公転することによってできる太陽の通り道(黄道)の北限が北回帰線ですので、回帰するのは太陽だったのです。さぞかし、船乗り達が西風に乗るのは大変だったことでしょうね。

セントルシアは島国であり、海を大きく見渡すことのできる開けた景色がたくさんありますので、この貿易風を感じることができます。目に見えると言った方が適切かもしれません、雲の流れや入道雲の発達の仕方を見ていると、貿易風が大きく影響していることが分かるのです。セントルシアでは12月から5月が乾季とされていますが、この間は貿易風の勢いが強く、入道雲も高さ制限を受けて浅くしか育たないのです。雨は降ってもすぐに止みます。セントルシアン達もそのことをよく心得ており、全く気にかけていないようです。正直、日本の夏の入道雲の方が、たくましくて立派・・・。いえいえ、私はまだ雨季を経験していないので、偉そうなことは言えません。6月から11月の間は貿易風が弱まり、入道雲もしっかりと発達するようですから。その時が来たら、また日記に綴りますね。

50年以上も前の話にはなりますが、私も子ども時代にスチーブンソンの「宝島」を読みました。ドキドキしながら、ワクワクしながらページをめくったことを今でも覚えています。もちろん、子どもですので「カリブ海には海賊がいて、宝島がある」という夢を描きました。そして今、なんと、そのイメージにぴったりの奇妙な形をしたピジョンアイランドという島がセントルシアの北部に浮かんでいるではありませんか。しかも、近くにはハリケーンの影響を受けたという難破船が乗り捨てられているのです。ものすごく臨場感がありますよ。映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」のロケ地として、すぐ南にあるセントビンセント島が選ばれたことも、至極納得できます。

金銀財宝ではありませんが、セントルシアには輝く宝物があります。「星の王子さま」が「最も美しいものは見たり、触れたりすることはできない。心で感じるものなんだ。」と言っている様に、セントルシアの宝物も、実は目には見えないのです。国章に描かれているモットーに「The Land The People The Light」とあるように、大西洋とカリブ海に囲まれた国土の風景が、どれをとってもまるで宝物の様に輝いて見えます。そして、アフリカにルーツをもつ、インドにルーツをもつなど、様々な人々が、過去の不幸な歴史の巡り合わせの中で、国民としての誇りを共有しながら力強く日々の生活を営んでいるのです。これはまさに、見たり、触れたりすることのできない、心で感じる宝物と言えるのではないでしょうか。私は2年間、JICA海外協力隊員としてセントルシアの教育に携わりますが、何よりもこの誇りを大切にすることのできる若者を育てていきたいと思います。美しさを心で感じることのできる人を。

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