JICA海外協力隊の世界日記

セントルシア便り

隊員Gのセントルシア日記_22 〜Roommates〜

 「JICA海外協力隊の活動は、輝いて見える」とおっしゃる方がおられるかもしれませんが、実際には「光があれば影あり」というのが、正直なところです。世界各地に散らばっている隊員に尋ねるならば、おそらくは皆口を揃えて「家に帰れば、虫との戦いが待っています。」という答えを返してくることでしょう。かく言う私も、もちろん、家では蚊と戦っています。「蚊以外協力隊」と名乗りたいくらいです。(英国人にはウィットに富むユーモア、アメリカ人には陽気なジョーク、あるいはパンチライン、と理解してもらえそうなのですが、残念ながら日本の皆さんには、親父ギャグ扱いされてしまうかもしれませんね。)

 幸いなことに、今のところデングをもっている蚊ではないので、刺されても痒いだけです。しかし、就寝中にひとたび蚊の不愉快な羽音を耳にすると、どうしても退治したくなり、寝不足に陥ってしまいます。間違いなく、翌日の活動に悪い影響を及ぼすのです。最初は、日本から持ってきたスプレー式の殺虫剤を使いました。しかし、どうやら隣接する大家さんの倉庫から蚊が侵入してくるようで、次々と入ってくる蚊に、スプレーひとつで対応するのは、やはり限界がありました。次に、現地で販売されている蚊取り線香を使ってみました。匂いが衣服に染み込むのではないか、との周囲の心配はありましたが、昭和生まれには全く抵抗感がありません。ところが、どうやら効き目が弱いようです。おまけに、煙を吸い込むことが多かったのか、私自身に咳き込んだりする症状が現れるようになりましたので、慌てて使用を中止しました。今は、マット交換式の電熱器を使って、蚊を退治しています。クーラーを使わず、(網戸を使いながら)窓を開け放して、風通しを良くしていますので、マットから少し離れると、もう蚊に襲われてしまうというのが現状です。そんな中で、最も効果があったのが、ベッドに蚊帳を設置したことです。大昔に蚊帳を使用した経験のある私には、どうしても不衛生な印象が付き纏っていましたので、中々蚊帳を購入する決心に至ることができませんでした。しかし、現地で販売されている蚊帳は、プラスチック素材で軽く、とても清潔感があったのです。先輩隊員には、最初から蚊帳を勧められていましたので、「こんなことなら、最初からアドバイスを受け入れておけば良かった。」と少し後悔をしています。技術の進歩に感謝です。

 今回は、ルームメイトというタイトルをつけて、私の同居人を紹介しています。蚊に続いて登場するのは、コモン・ハウス・ゲッコーと呼ばれるヤモリです。特徴的な黒い目は夜行性であることを物語っています。また、丸く広がった指先には吸盤がついていますので、壁や天井を自由自在に歩くことができます。夜、さえずるのですが、最初私はホトトギスのような夜行性の鳥の鳴き声ではないかと思っていました。それ程までに、とても味わい深い趣があるのです。狩りの成功を誇示する雄叫びなのかもしれませんね。先輩隊員から予め「ヤモリは家の中の虫を食べてくれるよ。」という話を聞いていたので、入居初日から、仲良く同居しています。ところが、蚊取り線香が苦手なのかもしれません。時々、成長途上の子どものヤモリを、干からびてミイラになった状態で発見することがあります。本当にごめんね。

 この先輩隊員のアドバイスは、私の過去の経験に一致するところがありましたので、素直に従うことができました。もし、知識が乏しく、初対面の時に怖がって、殺虫剤をかけまくり、ヤモリを殺していたら、どうなっていたでしょうか。その昔、中国共産党の指導者・毛沢東が「穀物を食うスズメを撲滅する!」という政策を打ち出しました。しかし、その結果、天敵のいなくなったイナゴが大量に発生して、農作物に甚大な被害をもたらしたのです。わが家のヤモリも、もし仮に駆除してしまったならば、餌となっていた虫が大量発生して、私の「虫との戦い」は想像を絶するものとなっていたことでしょうね。

 それでは最後にそのヤモリの餌となっている蛾を紹介しましょう。実は、我が家の壁には、至る所に繭(写真・上段)があります。「巣を背負う蛾の幼虫」と呼ばれる虫が、家の中にあるホコリや糸屑などで繭を作り、それを背負って、壁の表面を移動しているようなのです。状況証拠だけではありますが、この繭の状態ではなく、成虫の蛾(写真・中段)になってから、ヤモリは食しているようなのです。狩りをした後には、見事に蛾の羽が辺りに散らばっています。(写真・下段)私が出すホコリや糸屑でできた繭は美味しくないのでしょうね。

 この繭、見るからに気持ち悪いです。そして、時々動いたりすると、その憎悪感は限界に達しかけます。しかし、蚊とは違って利害関係がありませんので、私が手を下すことはありません。なるべく自然の摂理を崩さないことを心がけ、ルームメイトの益獣・ヤモリの餌を減らさないように共生しているのです。蚊は別ですよ、蚊は。私は「蚊以外協力隊」ですから。

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