2025/11/20 Thu
文化 現地生活
隊員Gのセントルシア日記_47 〜Suffrage〜

セントルシアは、1979年にイギリスから独立しましたが、緩やかな国家連合であるコモンウェルス(英連邦)の一員として残っています。コモンウェルスには、現在56カ国ほどが加盟していますが、軍事同盟や経済連合のような強い結びつきはありません。主として文化的な交流が盛んに行われているのです。小国が国際舞台において存在感をアピールするための、一つの賢い方法なのかも知れませんね。このコモンウェルスのメンバーの中には、共和国となり大統領をもつ国があれば、セントルシアのように英連邦王国に加わって、イギリス国王を国家元首(Head of State)として共有する国もあります。ただし、セントルシアでは、常駐しない国王の代理として、総督(Governor General)がその役割を担っています。もちろん、実際の行政府のトップは首相(Prime Minister)が務めています。

セントルシアでは、イギリス議会をモデルとしたウェストミンスター方式が採用され、議院内閣制の政治システムとなっています。国会は二院制であり、下院(House of Assembly)と上院(Senate)によって構成されています。下院の国会議員17名(日本の衆議院の定数は465名)は、小選挙区での選挙によって選ばれ、任期は原則として5年です。議院内閣制ですので、下院で多数を占めた政党が、与党として政権を握ることになります。上院の11名(日本の参議院の定数は248名)は、与党が推薦した6名、野党が推薦した3名、宗教・社会団体が推薦した2名を、総統が任命します。そして、下院が、現職議員の任期満了を待たずに、総督によって解散されて、12月1日に総選挙が行われることになりました。日本と比較すれば、与党議員一人一人の入閣の可能性には、雲泥の差があります。与党議員として当選すれば、かなりの確率で入閣しますので、選挙の緊張感がこちらまで伝わってきます。
セントルシアには2大政党、セントルシア労働党(SLP)と統一労働者党(UWP)があります。大きくイデオロギーの違いを感じることはありません。海外資本による観光業と、海外からの支援なくして、行政は成り立たない、とういう根本的な考えが、どちらの政党にもあるように思われます。強いて違いを見つけるならば、SLPは公共事業を中心に豊かな国づくりを目指し、UWPは民間の活力を最大限に活かそうとしています。言葉を変えると、政権を担当した場合、SLPは「大きな政府」、UWPは「小さな政府」を形作ると考えられるのです。

残念ながら、選挙の投票率は50%を少し上回る数字となっています。投票率が低い原因としては、日本と同じく、若い世代や、都市部の有権者の関心が低下していることが考えられるようです。日本では、18歳が選挙権をもてるようになって、にわかにシチズンシップ教育が叫ばれるようになりました。ここセントルシアでも、同じく18歳から選挙権がありますので、学校教育の中でシチズンシップを学ぶ機会があっても良いのではないでしょうか。(配属先のカレッジでは、先生が個人的に、学生たちに向かって、投票手続きをするように呼びかける場面が、何度かありました。)
セントルシア在住ではありますが、もちろん異邦人の私に参政権はありません。セントルシア社会のためにどんなに奉仕しようとも、市民生活にとって重要な政治に参加することはできないのです。投票しない若者に「あなたの投票権が欲しい!」と言っても、全く意味はありません。歴史の流れの中で、投票したくても投票できなかった人々の無念を、今、少し理解できるような気がしています。1838年の奴隷制度廃止後も、選挙権はごく限られた黒人にしか認められませんでした。全ての18歳以上の国民が投票権を手にするには、1967年の自由自治という新しい時代の到来を待たざるを得なかったのです。
海外生活は、日本にいれば当たり前のことでも、新たに見つめ直す機会を与えてくれます。参政権の重さを噛み締める今日この頃です。
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