2026/07/15 Wed
食べ物
隊員Gのセントルシア日記_90 〜Tropical Fruits〜

第88話で、居宅近くのセカンダリー・スクールでの奉仕活動についてお話をしました。その学校の数学の先生が、毎回のように、トロピカル・フルーツを、お土産に持たせてくれるのです。「一人暮らしだから、そんなには食べられないよ。」と私は主張するのですが、「家で作っているから、気にしないで。」と話を切り返して、マンゴーやトロピカル・アプリコット、レモン、グレープ・フルーツ、オレンジ、パイナップルなど、いつもたくさんくれるのです。詳しく尋ねてみると、父親から庭の果樹を受け継いだのですが、教職に勤しむ中で、果物づくりが丁度よい気分転換になっていると言います。
セントルシアでは、都市部を除くと、庭で野菜や果物を育てたり、鶏を飼って卵や肉を得たりする家庭が少なくないようです。そして、近所で分け合う、またはコミュニティー内で売買することによって、生活の一部を支えています。余剰は、首都カストリーズの路地ベンダーとして、売りに行きます。中には、サワー・ソップやパッション・フルーツなどを、ローカル・ジュースにして販売する人もいます。セントルシアン達のたくましい生活力の一端を、感じとることができます。もちろん、私のように、スーパーマーケットで、高価格の生鮮食料品や輸入品を購入する人もいます。どうやら、都市部と山間部では、その暮らしは大きく異なるようですね。実は、日本にも、ひと昔前までは、似たような風情がありました。田舎の叔父の家に行くと、決まって鶏肉のすき焼きをご馳走してくれたのですが、ほとんどの具材は、自ら畑で栽培したものであり、養鶏小屋で調達したものであったのです。

さて、トロピカル・フルーツに話を戻すと、温帯モンスーン気候のリンゴやミカンと比べ、同じフルーツとは思えないほどの、エキゾチック感があります。例えば、マンゴーには、自然界が作り出したとは考えられないくらい、豊穣な甘みがあります。そして、それを裏付けるかのように、果肉の種の周りに維管束を張り巡らせています。光合成で作られた養分や、土の中の水分が、維管束を通って、次世代の元へと集まってくるのです。食べると、歯の隙間に張り付いてしまうほどの繊維感があります。動物の歯に挟まりやすくして、種子をできるだけ遠くへ運ぶための仕組みではないか、と私は最初、考えていました。しかし、生存競争の激しい熱帯において、可能な限り果実を甘くして、動物に食べてもらうための進化の形であったのです。台湾で口にするマンゴーは、品種改良され、この果肉の筋が少なくなっており、とても食べやすくなっています。ところが、カリブの在来種のマンゴーは、今も野生味があり、より異国情緒を味わうことができるのです。私も、セントルシアンと同じく、いつも自然体で丸かじりすることにしています。

パイナップルは、日本でも馴染みのあるトロピカル・フルーツですので、あの繊維感をお分かり頂けることでしょう。他のトロピカル・フルーツも、同じように食物繊維が、果肉に張り巡らされていることがあるのです。植物には、骨格がありませんので、形状を保つために細胞壁という仕組みがあります。そして、葉から光合成でできた養分を運ぶための師管や、根から土中の水分を運ぶための道管が、維管束として、この強い細胞壁によって作られているのです。パイナップルにも、個性的なエキゾチック感がありますが、一方で、口に残る繊維質を疎んじる方もおられることでしょう。しかし、それも生き残りをかけた、種の保存のための一つの姿なのです。セントルシアン達は、繊維の多い果物を、「お通じにも抜群の効果があるよ。」と言って、いつもポジティブな発想を与えてくれます。自然の摂理に想いを馳せながら、豊かないのちを頂いてみませんか。
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