JICA海外協力隊の世界日記

セントルシア便り

隊員Gのセントルシア日記_45 〜Nickname〜

 私は、隊員仲間から「まこっちゃん」と呼ばれています。両親からもらった名前が「誠」ですので、日本人としては、ごく一般的な愛称です。皆さんのお知り合いの中にも、別人の「まこっちゃん」がおられるかもしれませんね。現在、私は66歳ですので、正直なところ、年齢相応の呼ばれ方があったのかもしれません。しかし、20代、30代、40代の異なる世代とも垣根なくお付き合いしたいという思いがあり、定年退職後の第二の人生も、最初の人生の少年時代と同じニックネームでスタートすることにしました。愛媛県伊予市でのグローカル・プログラムの研修期間、長野県駒ヶ根市での派遣前の訓練期間、そしてセントルシアでの協力隊の派遣期間を通して、「まこっちゃん」と親しく声をかけてもらっています。おかげさまで、Z世代の友人(隊員仲間)もできました。私の実の息子や娘よりも年下ではあるのですが、ピアノについては熟練者だったり、英語については上級者だったりします。いつも心地よい刺激と共に、頑張る元気を与えてくれる、素敵なマイ・フレンドです。

 しかし、私の配属先のカレッジで、教員や学生に、難しい発音「まこっちゃん」をお願いするのは、さすがに気が引けます。私は、現役の教員時代、海外修学旅行、海外研修、海外留学など、引率教員として海外で仕事する機会が多くありました。その際、私は、英語名「Makoto」の省略形である「Mak」を、ヨーロピアンな綴り「Mac」に変えて、イングリッシュ・ネームとして使っていました。「Mr. Mac」という呼称で親しまれましたので、海外での仕事がしやすかったことを今でも覚えています。ところが、派遣前訓練において、英語の担当教員であるジョン先生に、ある日「日本人がイングリッシュ・ネームを使うのは良くない!」「日本人としてのアイデンティティーを大切にしなければならない!」と言われたのです。(事実、私にピアノを教えてくれるテリー先生は、「Makoto」という日本的な呼称を、好んで使ってくれています。)私は、もっともな指摘であると思い改め、悩んだ末に、派遣国セントルシアでは「Mako」の愛称で呼んでもらおう、と心に決めました。そして、セントルシアでの隊員生活において、日本人には「まこっちゃん」とこれまで通り呼んでもらう一方で、現地ルシアンの皆さんには「Mako」と呼ばれる日々がスタートしたのです。

 ところが、カレッジでの授業が始まり、学生たちに紹介される段階になって初めて、カウンター・パートを務める教員から「Mako」には、クレーオール語で悪い意味(自分のことを棚に上げて、他人の良くないところばかり指摘する人)があるので使わないほうがよい、と教えられたのです。私は、仕方なく「Mak」と微かにアジアな響きを残す愛称を使うことにしました。そう言えば、首都カストリーズの街中で、「Mako〜!」と、相手を罵る怒声が飛ぶのを耳にしたことがあります。今は、「Mr. Mako」ではなく「Mr. Mak」と、学生たちから優しく声をかけられていますので、ホッと胸を撫で下ろす思いがしています。まさにニアミスでした。

 しかし、派遣期間の初期に知り合ったネイティブの皆さんは、いまだに私のことを「Mako」と呼んでいます。「Makoto」が日本語の「誠実(Sincerity)」を意味することを伝えると、「私たちが、あなたのことをMakoと呼ぶときは、クレオール語の意味ではなく、日本語の意味を込めることにするからね。」と大変嬉しい言葉が返ってきました。まさに多文化共生の小さな花が咲く思いがしました。私は、カレッジで初対面の学生たちに自己紹介をするとき、必ずこのエピソードを盛り込むことにしています。「Makoto」の省略形が「Mako」である、と紹介した時点ではニヤニヤしていた学生も、日本語の意味が「誠実(Sincerity)」であることを伝え、多文化共生に言及し始めると、自ずと表情が引き締まってくるのです。

 「誠」という名前を授けてくれた、亡き両親に感謝しつつ、今回の日記を綴り終えます。「まこっちゃん」「Makoto」「Mako」「Mr. Mak」、呼び方は様々だけど、ここセントルシアでも、みんな親しく声をかけてくれるよ。ビューティフル・ネームをありがとう。

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