JICA海外協力隊の世界日記

セントルシア便り

隊員Gのセントルシア日記_82 〜Mother's Day〜

 今年も母の日(5月の第二日曜)に、セントルシアのJazz & Arts Festival の最終回が行われました。セントルシア島の北西部にあるピジョン・アイランドが会場です。今は本島とコーズウェイで結ばれましたが、四方を海に囲まれた素敵な小島で、National Landmarkに指定されています。言うならば、国立公園で野外ジャズコンサートが行われたのです。晴天に恵まれ、空は高く広い。そして、海風や山風のなんと気持ちの良いことでしょう。固定席ではありませんので、私はヨガ・マットを持参し、地面に敷いて座りました。普段、その高さで風を感じることは、余りありません。おかげで、海の匂いや、山の匂いを運んでくれるそよ風に、とても新鮮な感覚をもつことができました。そして、まるで当然と言わんばかりに、音楽が耳に馴染みます。やはり、カリブでつくられた曲は、演奏は、歌声は、カリブの気候や風土にピタリと合うのでしょうね。また、母の日ということで、特に女性がオシャレをして来場しています。クレオール風のデザインがあれば、アフリカ風のデザインもあり、皆とても輝いて見えます。日本の野外ジャズコンサートで見かける聴衆のカジュアルな服装とは、大きな隔たりがありました。もちろん、開放的な野外会場ですので、何を飲んでも、何を食べても、とにかくうまい。私の五感すべてが、幸福感に満たされ、とても心地よい時間を過ごすことができました。

 さて、日本で母の日と言えば、家族で集まり、共に食事をしながら、日頃の母の愛情に感謝する、というのがステレオ・タイプではないでしょうか。しかし、ここセントルシアでは、母の日の過ごし方が、少し異なります。ジャズコンサートの他にも、この日は各地で、ダンスや音楽のイベントが開催されました。そして、夫婦そろってオシャレをして社交の場に現れ、音楽に合わせて体を揺らし、リズムを刻みながら、口ずさむのです。教会でも、母の日の特別なミサが行われた、と言いますから、教会にオシャレをして出かける家族も多かったことでしょう。とにかく、社交の場に出かけて、おしゃべりを楽しみ、音楽に合わせて踊り、歌い、自己を表現するのです。それが、カリブの女性達にとっては、何よりも母の日のご褒美なのでしょうね。

 ユニオン地区では、母の日の夜に、コミュニティー・ダンスのイベントが開催されていました。ところが、流れる音楽は、なんと昔ながらのカントリー&ウエスタン・ミュージックだったのです。黒人音楽であるゴスペルやブルース、ジャズ、レゲエなどであれば、話はわかりやすいのですが、なんとアメリカ音楽であるカントリー&ウェスタンに人気があるというのです。私は、「どうして?」というハテナ・マークをつけざるを得ませんでした。ローカル・ルシアンの話を聞けば、第2次世界大戦中のアメリカ軍駐留の影響が大きい、とのことでした。北西部にあるロドニー・ベイのReduit Beachに、アメリカ軍が、戦時中4年間駐留したのです。(現在の美しいビーチの砂浜の下には、当時のコンクリートの地面が今も残っています。)そして、この駐留した米兵達が、アメリカ的なダンスパーティーやカントリー&ウェスタンなど、社交と娯楽を持ち込んだのです。もちろん、カントリー&ウェスタンが、セントルシアの農村文化やラジオ文化と親和性が高かったことも、大きく影響していることでしょう。いずれにせよ、年配夫婦が、コミュニティ・ホールに集い、カントリー&ウェスタン・ミュージックに合わせて、ペア・ダンスを踊る姿には、古き良き時代のアメリカの姿が重なります。遠く離れた日本で青年時代を過ごした私も、実はウエスタン・ギターを購入したことがあります。カントリー&ウェスタンのまったりとしたリズムに魅了され、憧れた世代だったのです。私は、コミュニティ・ホールの賑わいを目にするだけで、思わず嬉しくなってしまいました。私の母は既に他界しているのですが、母の日に、郷愁に誘われるような心持ちを味わうことができました。導きに感謝をしたいと思います。ありがとう!

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