2025/04/22 Tue
文化
隊員Gのセントルシア日記_9 〜Monotheism & Polytheism〜


「心」に対応する英語としては、Heart、Mind、Soul、Spirit などがあります。いずれも日本語としても使われていますので、私たちにとって馴染みの深い言葉となっています。ところで、私が、これらの英単語を会話などで使う際には、次のように使い分けすることを心がけています。Heartはハートウォーミングと言われるように、感情としての「心」を表すとき。Mindはマインドセットと言われる通り、理性や知性としての「心」を表現するとき。Soulはソウルミュージックと言われますが、(肉体に対する)魂や精神としての「心」に言及したいとき。しかし、Spiritだけは、例えばアスリートスピリッツなどのように日本語的な使い方をすると、ネイティブには理解されないのではないかと思います。実は、このSpirit、宗教を信じる「心」のことを指しているのではないかと、私は推測しています。宗教ジャンルの本のことをSpiritual Book、宗教的な歌のことをSpiritual Songと、彼らは呼んでいるのです。


過日、教会のイースターの礼拝にゲストとして参列することができました。Resurrection(復活)という英単語は、英検に備えて覚えましたが、その時以来、目にすることも、私自身が使うことも、全くありませんでした。しかし、この日、久しぶりに記憶の彼方から呼び戻すことになりました。牧師の説法やWorship Songの中には、特にwonderful、beautiful、glorious、holy、rich、warmなど、数多くの形容詞が表現力豊かに使われており、メッセージが参列者側にしっかりと伝わってくる感じがしました。もちろん、牧師がエネルギッシュで、雄弁家で、その上歌唱力があるというのも確かなのですが、何よりも言葉のチョイスが洗練されています。そして、その選ばれた言葉に、強い力が乗せられているのです。The cross still stands. The blood still speaks. The grave is still empty. など、センテンス自体にも、もちろん非常に重厚感があります。また、信者たちが、思い思いに高揚感を表現する姿にも、私はとても心を動かされました。3時間という長いServiceではありましたが、私は終始圧倒されっぱなしであった、というのが正直な印象です。そこには、まさにSpiritual な小宇宙が広がっていました。 私も、65歳を迎え、人生の終幕が少しずつ近づきつつあるのですが、何か信じるものが必要になる時がやってくるのかもしれません。


あるセントルシア人に宗教について質問されたことがありました。「あなたにも、唯一崇高の神は存在するのか?」と。ご存じの通り、キリスト教はイスラム教などと共に一神教であり、私たちの仏教や神道は多神教です。まずは、基本的なこの違いを説明するところが第一関門となりました。そして、「私たち自身も仏になることができる」という成仏の考え方や、「身のまわりのすべてのものに神が宿っている」という八百万の神の考え方を説明するに至っては、まさに最難関であり、真意が伝わったかどうかについては、あまり自信がありません。しかし、とても興味を示す人でしたので、国家神道として戦争利用された悲劇についても、少しお話をしておきました。次に会ったときには、儒教が道徳として、家庭教育や地域教育、学校教育において、重要な役割を果たしたことについても説明し、なんとかリベンジをしたいと思います。
草の根レベルの文化交流にはなりますが、日本人のSpiritを、上手く彼らに伝えたいものです。
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