2025/06/05 Thu
自然
セネガル農業雑記


こんにちはセネガルで野菜栽培隊員をしています、廣瀬です。私は野菜隊員なので、セネガルで野菜を作っていて思いついたことを色々書いてみようと思います。そのため、まとまりのない文章であることをお許しください。
セネガルはアフリカ大陸の西端に位置する国でサブサハラアフリカと呼ばれるサハラ以南の地域に属する国で、地域にもよりますがとても暑いです。日中は40度を超えることは普通です。降水量も日本の約3分の1の年間600㎜で6月から10月の雨季以外の時期は、ほとんど雨は降らないです。土壌は有機物の全然なさそうな白い砂のような感じです(分類ではRegosol(ochric)?といわれているようです)。そんなところでどうやって農業するの?と思われるかと思いますが、私もそう感じセネガルへの派遣を希望しました。結論としては自分の任地に限定して言うと、2種類の農業があり一つは天水依存の農業、もう一つは井戸を利用した灌漑農業です。前者は大規模に行われることが多くラッカセイやトウジンビエなどの比較的乾燥に強い作物が短い雨季を利用して育てられます。後者では比較的小規模に栽培が行われており、日本で作られている野菜がほとんど同じように作られています。この暑い中でも野菜を作ることができるのは本当に驚きです。


興味深いのはセネガルではNature(日本でいう有機とかオーガニック的な考え)が食べ物でも野菜作りでも受け入れられているようです。現地の人は化学調味料や化学肥料の使用への抵抗感があるように感じます。どういう背景でこのような考えが浸透しているかはわかりませんが農業に関しては比較的この考えに忠実なように見えます。実際、化学肥料を使用せず家畜糞、堆肥のみで栽培している例がよく見られます。日本では堆肥や家畜糞は土壌への養分供給も目的としますが土壌改良資材としての意味合いが強いと思います。一方、セネガルでは堆肥や家畜糞は元肥としてだけでなく追肥にも使います。これは高温によって微生物の働きが活発になり、有機物の分解が早いため、ある程度の即効性が期待できるからかもしれません。実際に畑をみても有機物が蓄積されてなさそうな様子で土壌は白っぽく、有機物の分解は速いように見えます。もちろん化学肥料ではなく家畜糞に偏った投入の背景には経済的な要因もあるとも思います。
また、広く栽培されるラッカセイは収穫後の茎葉は飼料として売られ、殻も家畜の寝床に敷く材料として使われています。トウジンビエも茎を針金で綺麗にまとめて家屋や家畜の囲いに使われています。このように作物が余すことなく使われており、堆肥の材料やマルチ代わりに使いたい身としては意外と困るなと思ったりもします。ラッカセイの話をすると、ラッカセイはマメ科の作物の中でも空気中の窒素を固定する能力が比較的高いとされる作物です。一方でマメ科の作物であっても収穫後残渣を土壌に鋤き込まなければ固定した窒素の土壌への供給は見込めないともいわれ、特に家畜の飼料として茎葉が用いられる場合、その傾向が大きいと文献でしばしば見ることがありました。実際に現地の様子を見てみるとまさにその通りで、残渣も換金できる資源として畑から持ち出され、基本的にはそこの土壌への還元は文献通りあまり見込めなさそうです。ただし、家畜糞が堆肥として利用されることで、ある程度は他の畑への還元が行われているようにも見えます。このように文献に書いてある内容を実際に現場で自分の目で見られることはとても興味深く面白く感じています。


もう一点、農業と環境の関係についてみてみます。セネガル小規模農家の一番の仕事は水やりです。太陽光パネルとポンプを利用して水をくみ上げたり、手で水をくみ上げたり色々ありますが井戸の水を貯水槽にためて両手にジョウロ持ちそこから水を汲んで水やりすることが多いです。水やりは朝と夕方の二回行います。はじめは「水をやりすぎだろう」と思いましたが砂質土壌で有機物も少ないことを考えると土壌の水分を蓄える力はあまり期待できないです。それに40度を超える環境では植物からも土壌からも蒸発量は大きく2回の水やりが必須なのだなと思いました。「暑さ→有機物分解が早い→追肥的な堆肥利用&有機物の蓄積が少ない→保水力が低い+砂質土壌→水やりが多く必要」このように農業はその地域の環境を大きく反映していて改めて面白さを実感しました。
最後に一つ気づいた面白い観察があります。セネガルでは棘のある木がよく見られます。日本の木では棘がある方が珍しいかと思います。雨季には一斉に雑草が一面に生えますが乾季には一斉に枯れてしまいます。しかし木本性の植物は乾季のあいだも地下に残った水分を利用して通年葉を残しています。雨季の間、動物は雑草と木の葉の両方を食べることができますが、乾季に入ると残るのは木だけで雑草との競合がなくなり木本性植物は動物からの集中攻撃を浴びることになります。それに対する防御として棘をみんな発達させたのかなと思いました。棘もよく見るとまっすぐな棘、手を入れると返しで引き抜けなくなる棘、反対に手を入れられない棘、その両方の向きで交互についた棘もあり植物の本気さを見ました。
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