JICA海外協力隊の世界日記

セネガル便り

受け継がれる名前、繋がる想いーセネガルの命名文化

セネガルの首都ダカールで、青少年活動隊員として聴覚障害者施設(学校)に派遣されている山中小春です。
わたしのセネガル名は「アンタ」。

セネガルではよく「あなたは〇〇ね!」とセネガル名をつけます。


この国に到着してわたしもすぐに名付けてもらったのですが、「自分のことを“あんた”と名乗る」ことが面白く、瞬時に気に入ってしまいました。セネガルではとても多いこの名前。

「アンタちゃん」

とても可愛い響きです。

~セネガル人の名前について~

セネガルに来た当初、同じ名前の人があまりにも多くて驚きました。よく聞く名前は
男性ならモハメッド、アマドゥ、ママドゥ、ムッサ……
女性ならファトゥ、アワ、ハディ、アミナタ……
ある日、会った人全員がモハメッドさんだった、なんてこともあります。

名前の由来を尋ねると、
• 「祖父の名前をもらったよ」
• 「叔母の名前なの」

と答える人がほとんど。
宗教的背景もあるようですが、ここではわたしが見聞きし、感じた範囲でお話しします。

話を掘り下げていくうちに、セネガルでは名前を受け継ぐことが一般的で、祖父母や親族、または尊敬する人の名前を授けることが分かってきました。

日本は漢字の意味や画数から、両親の想いを名前にのせますよね。その感覚でいたわたしは、

「そのまま誰かの名前をつけるなんて両親の想いをあまり込めないのかな」

と少し寂しく感じていました。ですがそれはただの思い込み。すぐに自分の勘違いだと気付かされました。

~想いが受け継がれる“ゲンテ”の儀式~

赤ちゃんが生まれると「ゲンテ」という命名の儀式が行われます。
わたしも活動先の同僚宅で行われたゲンテに招待していただきました。

その場で赤ちゃんの名前が初めて公表されるのですが、その瞬間、同僚が肩を震わせて泣き始めたのです。
同僚の亡くなったお父様と同じ名前がその子につけられたと知り、神への感謝と、お父様への込み上げる想いで胸がいっぱいになったのだと、後から教えてくれました。

ゲンテの主役である赤ちゃんにミルクを飲ませています。とても癒される時間です。

~名前がつなぐ温かい関係~

日常生活でも、こんな出来事があります。
わたしのセネガル名「アンタ」と同じ名前のお母さんを持つ人に出会うと、必ずと言っていいほど

「私のお母さんと同じ名前だ!」

と嬉しそうに声をかけてくれ、特別に優しくしてくれます。
「お母さんは一番大切にしないといけない存在だから」と。

この言葉に、はっとしました。ゲンテでの出来事でも感じたこと。
受け継がれる名前には、尊敬や愛情、祈りや感謝という深い想いが込められているのです。

ちなみに、「アンタ」は名付けてくれた方の娘と同じ名前。当時は分からなかったけれど、もしかしたら遠い国から来たわたしを娘のように感じてこの名前をくれたのかも、と時々想いを馳せています。

名前を通じて伝わる気持ち。
セネガルの温かさは、名前にも宿っています。

SHARE

最新記事一覧

JICA海外協力隊サイト関連コンテンツ

  • 協力隊が挑む世界の課題

    隊員の現地での活動をご紹介します

  • JICA 海外協力隊の人とシゴト

    現地の活動・帰国後のキャリアをご紹介します

  • 世界へはばたけ!マンガで知る青年海外協力隊

    マンガで隊員の活動をご紹介します

TOPへ