JICA海外協力隊の世界日記

ソロモン便り

Naha Clinicから大洋州へ ― 現場の取り組み、大洋州の舞台へ

(写真:旧ナハクリニック)

みなさんこんにちは、ソロモンの首都ホニアラにあるNaha Clinicで活動しています、助産師Rieです。

今年8月末、オーストラリアの支援により、Naha Clinicは大きく生まれ変わりました。

これまでのNaha Clinicは、小さなクリニックとコンテナハウスで診療を行っていましたが、現在は最新の設備を備えた新しい「Naha Urban Health Centre」がオープン。そして、10月には待望の「Birthing Centre」のオープンも控えています。

毎日たくさんの患者さんで大混雑し、ほこりと汗にまみれながら活動していた日々。狭いスペースでの椅子取り合戦、立ったままの診療や食事、そして住み着いた南京虫との戦いも……。

そんな懐かしくも大変だった日々に、ついにお別れです!

忙しさはそのままに、新しい施設で新しいステージへと進んでいます。

今日は、Naha Clinicでの取り組みを、太平洋地域の学会で発表するまでの道のりについてお話しします。

写真の青いシャツを着ている方は、私が普段一緒に活動している助産師のシェリーさんです。ソロモンの母子保健事情を長年見てきたシェリーさん。

この話の始まりは昨年の夏、シェリーさんから、こんな一言がありました。「Rie、来年はPSRH(太平洋地域生殖保健学会)がトンガで開催されるよ、Rie、いけるんじゃない?」

太平洋地域の様々な国が集まり、研究発表を行なったり、それぞれの課題を話し合ったりすることで、国や地域を超えて経験や知識を共有する場としてPSRHは2年に1度、開催地域を変えて開催されています。前回の学会には私の前任者が保健省の方々と参加していました。ですが、Naha Clinicからの参加者はいませんでした。

「Naha Clinicからも参加できるのかな? 私たちも一緒に行けないのかな?」

そんなところから、私たちの挑戦が始まりました。

しかし、一次医療施設で働くスタッフが、海外の学会に参加するまでには、いくつものハードルがありました。

まずは、インターネットを使った書類選考です。

そのためには、発表する内容について、まずソロモンの倫理審査委員会から許可を得る必要があります。ところが、必要な書類にアクセスすること自体が簡単ではありません。さらに、シェリーさんのようにパソコンを持っていないスタッフもいます。携帯電話も、いつでも安定してインターネットにつながるわけではありません。

「学会で発表したい」という気持ちがあっても、そこにたどり着くまでには、私たちが普段あまり意識しないようなところにも、いくつもの壁がありました。

(写真:左:シェリーさん)

いつも妊産婦さんと真剣に向き合っているシェリーさん。私は、そんな彼女と一緒に学会に参加したいと思いました。

ここから、私たちの挑戦が始まります。

まずは、担当者探しからです。

ソロモンの保健省では、パソコンやインターネットは普及しています。しかし、「誰に聞けばいいのか」「どの窓口に行けばいいのか」「どのような手順で進めればいいのか」といった情報が、組織の上から下まで十分に共有されていないことも多く、必要な情報を得ること自体が大きな壁でした。

そこで、日々の活動の合間や仕事が終わった後に、保健省などを訪ね、学会参加までの手順を一つずつ確認していきました。

発表に必要な書類を集め、倫理審査委員会への申請書類を作成し、発表内容をまとめる。

一つひとつ、シェリーさんと一緒に進めていきました。

しかし、すべてが順調に進んだわけではありません。

担当者が不在だったり、途中で担当者が変わったりすることで、書類を一から確認し直したり、再提出したりすることもありました。

「学会で発表する」という、私たちにとっては初めての挑戦。

その道のりは、思っていた以上に長く、そして簡単なものではありませんでした。

(写真:活動終わり、シェリーさんと発表の抄録を確認しているところ)

それぞれの書類を一つひとつ整え、倫理審査委員会からの承認も、ようやく得ることができました。

「これで、やっと一安心」と思ったのも束の間。

次に待っていたのは、学会に参加するための旅費の確保でした。

当初は、私たちの発表が学会に採用されれば、シェリーさんの旅費は保健省が支援してくれるという話になっていました。

ところが、ここにもさまざまな手続きがあり、簡単には進みませんでした。

書類を提出しては確認し、必要な手続きを一つずつ進めていく。

そして、シェリーさんが旅費を確保できたのは、なんと出発直前でした。

「本当にトンガに行けるのかな」と最後まで心配しながら、私たちは出発の日を迎えることになりました。


24−3 助産師 荒金里英

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