JICA海外協力隊の世界日記

ソロモン便り

ドンボスコ職業訓練校、二年間の活動を終えて。

先日、二年間の活動を終えて帰国しました。

活動していたのはドンボスコ職業訓練校。職業訓練校とはいうものの、日本の方が想像するのであれば専門学校の方が近いかもしれません。ソロモンの高校レベルを卒業した人たち、18~25歳くらいの学生が中心の教育機関です。8つの学科があって、工学関係の勉強をする学生が多いです。

そこでPCインストラクターとしてAutoCADを教えてほしい、というのがメインの要請内容になっていました。AutoCADは見慣れない単語だと思いますが、CADはComputer Aided Designの略称、つまり図面作成用のソフトです。

しかし、蓋を開けてみると、担当するのはiMacの授業で、その授業カリキュラムの中にAutoCADとExcelが入っているので、実際教えていたのは活動期間の半分。さらに図面を書く必要がない観光学科の学生にはAutoCADではなくPowerPointを教えていたので、当初想定していた活動割合とはだいぶ違いました。ただ、Excel、PowerPointはAutoCADよりも多くの場面で使われるソフトなので、AutoCADだけを教えて欲しい、と言われるよりも教えがいはあったように思います。

2年間活動する中で、学生の実態を把握して、それらに合わせた対応をすることに時間を使いました。

授業を進めていく中で、学生の多くは教えた技術は習得できました。ただし、それらの技術を実際に活かす、応用する場面になると途端に混乱する学生が多かったように思います。

例えばAutoCADを教える中で、図形を反転させるコマンドを教えたとします。そのコマンドに加えて、[ のような図形を与えて、□を作って欲しい、という問題を出すと、端点を結んだ線で反転させればいいだけなのに、全ての手順を示さないとクリアできない学生がいました。

Excelを教えている際、平均を計算する関数を教えたときにも同じような場面がありました。わかってもらえてない感覚があったのですが、彼らは平均がなんなのか、どうやって計算するものなのか、を知らなかったのです。さらに、これは特によく覚えている出来事なのですが、学生から説明を受けて個別で解説をしているときに、計算の中の30-29という部分に電卓を叩いている学生もいました。

また課題を出した際には、カンニングやデータのコピーが頻発し、問題の指示文を理解できないという学生もいました。

こうした日本とは違う学生の実態を目の当たりにして、話には聞いていた初等教育の重要さを実感しました。

授業に出席している学生たちは決して不真面目ではなく、能力が極端に低いわけでもありません。実際、授業で取り扱ったことは理解して、そのまま再現することはできています。しかしせっかく覚えたパソコンの技術があっても、基礎力がなければその技術の便利さや、どう使うと有効なのか等、十分に理解することができておらず、もどかしい思いをしました。

根本的な解決にならないことは承知の上で、授業ではパソコンの技術を教えるだけではなく、実生活でどう活かせばいいのか、なぜそう活かすことができるのか、という話を可能な限り取り扱うように意識していました。

課題を出す際にも、学籍番号ごとに自動で問題が振り分けられるシステムを作るなどして、対応しました。

作ったシステムでは、学生が学籍番号をシートに入力すると、学籍番号ごとに振り分けられた問題が自動で表示されます。これにより、単純に友達の答えをコピーするだけでは合格できないので、苦手意識が強く、パソコンに触りたくない、という一部の学生も、自分で考えてパソコンを触る必要性が出てきます。

学籍番号の下二桁を問題文中の変数に入れて、問題を変更するというアナログな指示では混乱する学生が多く見られたので、こうした学生にも優しく、重要な部分、課題に集中できるように設計しました。

以上が、私がソロモンの専門学校にあたる教育機関で授業をする上で意識してきたことです。今になっても、彼らの実態をきちんと把握できているのか、最適な対応ができたのか、自信がありませんが、できる限りの対応はできていたかなと思います。本来は授業をするだけではなく、自分が離れた後もその授業がクオリティも含めきちんと残っていく活動をしたかったのですが、力不足により実現できませんでした。やり切った満足感、というよりは、2年間いろんな人に助けられたな、という感謝の方が大きいです。

ソロモン人の気性は穏やかで、物事の優先順位等に違いはあるものの、価値観はかなり近かったように思います。優しい同僚や学生に囲まれて活動してきたので、実は日本で仕事をしていた時よりもストレスが少なかったかもしれません。

赴任当初は、2年間の活動を経て、厳しい環境で人として大きく変わって帰国するのかな、と思っていましたが、そんなことはなく、変わったところを探す方が難しいかもしれません。帰国して半月、一番言われる言葉は「焼けたね」です。しかし逆に言えば、あまり変わらなくても、赴任前には考えられなかった2年の海外での活動を満了できたわけで。運が良かった自覚はありますが、これ以上無理に変化しなくてもいいのかな、と今は感じています。

今後もソロモンとの関わりを継続して、いつかまた実地で彼らと関わることができたらいいなと思っています。

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