JICA海外協力隊の世界日記

ソロモン便り

「体育」が当たり前になるその日まで

モーニン!2024年度3次隊(小学校教育)としてソロモン諸島で活動している西園優菜です。

「体育をするのは何のため?」 体育が時間割にない学校ばかりのこの国で、体育教育を中心に活動を続ける自分自身に何度も投げかけている問いのひとつです。

現在ソロモン諸島では、体育を教科として実施している学校はごくわずかで、JICAの隊員が配置されている学校やインターナショナルスクールなど、一部の学校だけが体育の授業を行っています。多くの学校ではイベントとして「Sports Day」が時折実施され、サッカーやバレーボールを楽しんでいます。そのため、現地の先生方に体育についてのアンケートをとると「体育=スポーツ」というイメージを持っている人がほとんどでした。

でも、私は体育にはもっとたくさんの価値があると思っています。仲間と協力することやできなかったことが少しずつできるようになる過程を味わうこと。コツや作戦や考えながら体を動かすこと。そんな学びも体育の魅力ではないでしょうか。

教育省が作成した体育のシラバスもありますが、その存在を知っている先生はほとんどおらず、体育を実施するかどうかは学校の判断に委ねられていて必修ではありません。しかし国立大学には体育教育を専門とする教授がおり、教員養成課程では体育を学ぶ学生の姿があります。そんなこれからの体育に注目が集まるソロモンで、私は今、「ソロモン諸島で持続可能な体育をどう作るか」を模索しています。

現場の先生方に体育の障壁を聞いたところ、道具や場所、時間がないことが挙げられていました。配属先の学校では体育館は中高生と共有施設となっており、体育を実施している同じ空間で中高生が歌の練習をしていて指示の声が通りにくいこともしばしば。時には、砂利だらけの木の下で野良犬の糞をよけながら体育をすることもありました。

一方で、決して恵まれているとは言い難い環境でも懸命に体を動かして楽しんでいる姿や、「明日は体育だよ!」と教室へ伝えに行くと、毎回歓声を上げて喜んでくれる子どもたちの姿を見るたびに、どうにかして体育が続く仕組みを作りたいと考えていました。

そんなある日、驚くべきことがありました。校長先生が「外でも安全に体育ができるようなスペースを作ろう」と、自ら工具を持って動き始めてくれたのです。コミュニティのつながりを活かして工事のための人員を集めたり、AIを駆使しながら作った資料をもとに今後の展望まで熱く話していたりする校長の姿にも、強く心を動かされました。

さらに今学期からは、通知表にも体育の評価欄が加わり、体育の正式な教科として位置づけていくための土台が少しずつ整ってきました。私が考えた評価の指標と、校長が作成した通知表のテンプレートを組み合わせて形になった評価表を見て、"We are investors!"と笑い合う瞬間がなんとも嬉しかったです。

先生や子どもたちが体育に何を望むのか、どんな授業なら「やってみたい」と思えるのか。そして、どうすれば彼らの手で体育が続いていくのか。環境や仕組みといったハード面が少しずつ動き始めた今、次はソフト面をどうしていくか。対話を繰り返しながら、また一つずつ考えていきたいと思っています。

日本では「体育があること」は当たり前でしたが、ソロモンに来て、その当たり前は、誰かが少しずつ積み重ねてきたものだったのだと気付くことができました。日本では考えもしなかった"そもそも"を問い続ける毎日です。だからこそ、この一つひとつの変化が、私にとっては何より嬉しい財産になっています。

これらの変化の積み重ねが、いつかソロモン諸島で体育が当たり前になる、そのきっかけの一つとなれたらと願いながら、残りの活動期間も一歩ずつ前へ進んでいきたいと思います。



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