JICA海外協力隊の世界日記

スリランカ便り

Kandyで最も貧困な地域に射す光~Mahaiyawa公衆トイレ清掃・壁画プロジェクト~ part4

スリランカ第2の都市・Kandy市の中でも最も貧困層が暮らす地区、
「Mahaiyawa(マハイヤーワ)」の衛生環境を向上させるために、1つの活動が始まった。

この地区がどんな場所で、どんな人々が暮らしているのか——
気になる方は、ぜひこれまでの記事をご覧いただきたい。
                 ↓
~Mahaiyawa公衆トイレ清掃・壁画プロジェクト~ part1
~Mahaiyawa公衆トイレ清掃・壁画プロジェクト~ part2
~Mahaiyawa公衆トイレ清掃・壁画プロジェクト~ part3

・海外で活動すると言うことは…
前回の訪問から2週間。
アーティストのYutoが再びMahaiyawaを訪れ、壁画制作の続きを始めた。
私は、別件で3日程遅れてプロジェクトに参加すると、そこには少し疲れた様子のYutoの姿があった。

理由を聞くと
「地域の人にペンキを買うのは明日と言われ、翌日になると『祝日だからお店が閉まっている』って。テキトーすぎてがっかりした。」
「せっかく描いた絵に色が定着していないのに、水道を開けて水を流す人がいて、絵が流れてしまったんです。」

k4-1.jpg

彼はしっかりと“スリランカの洗礼”を受けていた。

そこには、責任感の欠如、見通しの甘さ、相手の意図をくみ取る力の弱さ——
多くの途上国で共通して見られる課題が、はっきりと浮かび上がっていた。

しかし同時に、彼らの主体性を引き出せていないこと、見通しを持たせる工夫の欠如、言語力の不足といった、私たち自身の課題にも目を向けなければならない。

言葉も文化も異なる国で活動するということは、一筋縄ではいかない。
そのことを、あらためて思い知らされた。

k4-2.jpg


・本当の目的は?
一方で、日を追うごとに「私も絵を描きたい!」とトイレを訪れる子どもたちの数が増えていった。
筆を手に取り、笑顔で壁に色をおいていく。

k4-3.jpg


活動5日目。
子どもたちと一緒に、トイレ正面の壁に新しい壁画を描いた。
マスキングテープで山の形を作り、その中を自由な発想と色彩で満たしていく。
子どもたちは思い思いに筆を走らせた。小筆で、大筆で、時には手で。
笑顔と絵の具があふれる光景だった。

k4-4.jpg

しかし、完成した壁画を見てYutoは浮かない表情を浮かべた。
激しい雨が降り出した。
「浮かない顔をして、どうしたの?」―私は尋ねた。
少し沈黙のあと、彼は静かに言った。
「このままではだめです。」

——子どもたちが自由に描くのはいいんです
でも、絵から“このトイレを大切にしたい”という思いが伝わってこない——

「絵の力は信じている。でも、“なぜ描くのか”と結びついていなければ意味がない。」

その言葉に、私はハッとした。

k4-5.jpg


私はこれまで、住民が約束を守らなかったり、時間になっても集まらなかったりという経験を重ね、どこかで「どうせ思った通りにはいかない」と諦めの気持ちを持っていた。

この日も、「絵を描くことで少しでもトイレに愛着を持ってくれたらそれでいい」と、
低いゴールを設定していたのだ。
しかし、それでは継続性も、変化も生まれない。
当初の目的——「子ども達の衛生意識の向上によって、トイレ及び生活環境を綺麗に保つこと」を見失っていたことを思い知らされた。

k4-6.jpg


私たちは雨音の中で、長く話し合った。
気づけば、雨は弱まっていた。

―やるべきことは決まったー

最後の制作物、「子どもたちのメッセージ壁画」を、子どもたち自身の話し合いを通して、妥協なく作る。

次回、いよいよ最終回。
子どもたちは、自分たちの言葉で「活動の意味」を描けるのか?
そして、私たちは笑顔でこのプロジェクトを締めくくることができるのか。

ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

SHARE

最新記事一覧

JICA海外協力隊サイト関連コンテンツ

  • 協力隊が挑む世界の課題

    隊員の現地での活動をご紹介します

  • JICA 海外協力隊の人とシゴト

    現地の活動・帰国後のキャリアをご紹介します

  • 世界へはばたけ!マンガで知る青年海外協力隊

    マンガで隊員の活動をご紹介します

TOPへ