JICA海外協力隊の世界日記

チュニジア便り

【天色日記】深呼吸の必要

皆さま、明けましておめでとうございます。こちらは祝賀ムードも特になく、気づけばいつの間にか年をまたいでしまっていたチュニジア2度目の新年。私の隊員活動もいよいよクライマックスです。

配属先に通うアテトーゼ型脳性麻痺の女性から、新しいスマートフォンを買うので一緒に店に来て欲しいと要望がありました。彼女は一昨年からコンピュータアクセシビリティの機器「スイッチ」でスマートフォンを操作する練習を続け、いまはひとりでスマートフォンが使えます。ただ彼女が持っていたスマートフォンはスイッチを使うための「Swich access」機能がないため、この機能を有するスマートフォンを店で選んで欲しいとのこと。私もチュニジアで販売されているスマートフォンのどの機種がSwitch accessを使えるか、Googleやメーカーに問い合わせていましたが捗々しい返事はなく。同僚たちのスマートフォンで試させてもらいましたが、Switch accessを使えるのは比較的高価な機種ばかりで、もっと安価な機種はないかと彼女たちへの情報提供に二の足を踏んでいました。

そんな中、彼女からの鶴の一声。「買う!(パパが)」。確かに私がお店へ一緒に行って、Switch accessが使えるかどうかスイッチを接続して確認するのが一番安心です。だけど一緒にお店に行って(日本だったら外出訓練)、そのあと彼女の家に行って機器のセッティングとご家族指導(日本だったら訪問リハビリ・家屋調整)って、配属先施設ではありなのかな?と恐る恐る同僚に尋ねたら「いつ行く?」と即質問されまして。「そうだ、ここはチュニジアだった」と拍子抜けしました。

そして彼女とご家族のスマートフォン購入に同行し、結果として大正解。お店の人が快くスイッチ接続試行に協力してくださって、予定していたよりもずっと安価な機種を購入できました。もっと早くこうしていれば良かったと、自分の意気地のなさが不甲斐なく。一方、彼女は主体的に周囲の人を誘導し、自分の希望を叶えた。あらためて彼女が感じている事、考えている事をもっと知りたいな、と思いました。彼女は構音障害があり、伝えられるのは単語がやっとです。知的障害はありませんが、配属先で文字を教えられていないため字が読めません。文字がわかれば、彼女はもっと自分を表現できるでしょう。昨年末頃からアラビア文字学習アプリを楽しんでいますが、少しずつで良いから字を覚えて、いつか私にメッセージを送って欲しいと、私の願いを彼女に伝えました。

お店からの帰りの車の中、彼女がほんとうに嬉しそうに「しあわせ」と「ありがとう」を繰り返していて私も幸せでした。彼女のお母さんが振る舞ってくれたチュニジア料理は素晴らしく美味しく、お父さんが私たちは家族だからまた家においでと言ってくださって、利用者さんの喜びを活動の中心に置いてきたことが報われたように感じました。この2年間、悔しいこと不甲斐ないことたくさんありましたが 彼らからもらった喜びが確かにあったことを心に留めようと思います。

読んでくださってありがとうございます。新しい年が皆さまにとりまして幸多き一年となりますよう 心からお祈り申し上げます。

Besleema , nHaarek ziin (ベスレーマ、ンハーレックジーン) 

           またお会いしましょう。あなたの一日が素晴らしいものでありますように

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