JICA海外協力隊の世界日記

チュニジア便り

【天色日記】最後のご挨拶

アザーンが聞こえないことに違和感を感じて目覚めた今朝。そうでした、ここはもう日本でした。たかが2年、されど2年。チュニジアの生活に馴染んでいた心身が、帰国してささやかな違和感を訴えます。日本の小銭が小さい、スーパー等のセルフレジ、カフェのコーヒーの値段、街中の広告や映像など視覚情報の多さ、などなど。チュニジアにいたときは「こんなこと日本じゃ考えられない」という出来事を興味深く感じていましたが、帰国して一週間。今度は日本で「こんなのチュニジアでは考えられない」と思う度、チュニジアを懐かしく感じます。

帰国前に、私が感じていたことについてチュニジアの友人に意見を聴きました。彼女は日本留学の経験があって、日本のことも知っています。

〈チュニジア人気質、日本人気質〉チュニジアの人たちはとにかく短気。自分の用件は周りをとても急がせる。けれども他人の用件は放っておいて、忘れてしまうこともある。日本人は他人の用件を優先して 自分のことは後回しだから、チュニジアと逆でしょう?日本人は何をどうしたいのかはっきり要望を伝えない。まず他人のことを考えるのは良い所でもあるけれど、伝えるべきときに伝えないと話が進まない。(!激しく同意!!)

〈障がいのある子どもに対する家族の愛情深さ〉かおり(筆者)が働いている施設は比較的生活が安定している家庭が多いのだと思う。多くの親は「なんで子どもが障害をもったのか」と心の深いところで苦しみを抱えている。障害があるから何もできないと考える親もいるし、そういう家庭の子どもたちは何も経験させてもらえない。子どもたちも「自分には何もできない」と思い自分を責める子もいる。けれども一方で、障害があっても小さいときからその子に合った学びや経験をさせて、仕事に就く人たちもいる。

〈彼女の憂慮〉チュニジアでは若者のうつ病が増えている。いまだ他国からの影響力は強く、自分たちのアイデンティティに迷い彼らはどう生きていくのが良いか分からなくなっている。将来に希望が持つことができないでいる。

〈チュニジアの良いところ〉女性の地位が高いこと。女性でも仕事に就けるし、タクシーの運転手など主に男性がするような仕事にも就ける。だから夫が病気になっても妻が生活を支えることができるし、独身でも離婚しても生活していける。親が病気のとき、女性でも病院に連れていける。これらは、他のアラブの国々では難しいこと。そして、チュニジアの人たちは優しい。困っているときは人々が集まって助け合う。

この2年間、自分の価値観に疑問を抱き、当たり前は当たり前じゃなかったと気付かされることが多くありました。一つ一つはささやかですが、それらは確かに自分の中に蓄積されて、以前よりも自由に考え行動できるような気がします。

『共に暮らして心を通わせ 異文化において日本の姿を知り 実践のなかで世界を理解する。そして未来に続く高い志をもって あまねく人々と平和の道を歩む』 派遣前の訓練所にあった掛け軸の言葉です。JICA海外協力隊ってなんだろう?と考えるとき、この言葉が指針になってくれました。あまねく人々の平和を願うとき、私には心に思い浮かべるチュニジアの人たちの顔と名がある。遠い国にも思いを馳せる人々がいるというのは良いものです。

これが最後の「天色日記」になります。今まで読んでくださってほんとうにありがとうございました。

بارك الله فيكم

Barak allah fikum(バラカラオフィーコム:皆に神のお恵みがありますように。心からの感謝を伝える言葉)

2022年度3次隊 作業療法士 勝澤 香織

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