2026/02/06 Fri
文化 生活 自然
幸せな野良猫、ちょっと幸せな野良犬、そしてアラバイ犬

執筆:菅谷 祥生(JICA海外協力隊2024年度1次隊/日本語教育)
シルクロードの要衝として栄えたこの国のどこを歩いても、街に溶け込んでいる彼らに出くわしま す(特に地方)。そう、野良犬と野良猫です。しかし、彼らの立ち位置は日本とはかなり違います。 今、ウズベキスタンは厳しい冬です。氷点下まで下がる夜、アパートに帰宅すると、アパートの敷 地内に住み着いている猫たちが一階の重い扉の前でじっと待機しています。「カチャッ」と私が鍵 を開けた瞬間、私が一歩踏み出すよりも早く猫たちが足元を通り過ぎていきます。アパート内の 階段踊り場下の暖かい一角が彼らの桃源郷なのです。 私のアパートの住人もそうですが、町の中では猫に餌を与えている光景をよく目にします。猫はイ スラム教の預言者ムハンマドに愛されていたという逸話があり、ウズベキスタンでも猫は大切に 扱われています。露店や飲食店に入ってきても誰も追い出しません。餌をあげる人が決まってい たり、毛布がそっと置かれていたりと、飼ってはいないけど放ってもいないというゆるやかな共生 関係がそこにあります。
種類は違うけど仲がいい猫(親子?)
犬かと思ったら猫でした。
寒いからボクも入れてよ!
一方、犬たちは様子が違います。体調万全の猫が多いのとは対称的に痩せた犬が目立ちます。イスラム教ではコーランにこそ書かれていないものの犬は不浄の動物とされているそうです。なので以前は牧羊犬や番犬などで飼うことはあってもペットにするという習慣はなかったそうです。そういえば、犬を散歩している人は見た目がロシア系の人が多い気がします。ヒジャブを被った女性が犬を散歩している姿をまだ見たことがありません。ただ、だからと言って犬を邪険にはしていないようです。
ゴミを漁る野良犬
「おすわり」と言ったら本当にお座りした日本語を理解する野良犬(UJC日本センターで勉強中?)
日本では、人間が野良犬たちを捕獲して数を減らす政策がとられていますが、ウズベキスタンでは、動物と人間の関係に「境界」がないように感じます(注1)。また、そのことが人間に対しても差別なく、誰に対しても親切に接する文化に繋がっているのかもしれません。この国で生活して1年半になりますが、どれだけ多くの方たちに親切にされたか分かりません。差別しない背景の延長線上には、きっと日本のように移民が大きな政治問題にならない文化もあるような気がします。
日本の方がもしこの国を訪れることがあれば、ぜひ街角の犬や猫にも目を向けてみてください。ただ、狂犬病の恐れがあるため犬に餌をあげたり近づくことは絶対に避けてください(注2)。少し離れたところから眺めるだけでも、その国の価値観や歴史、人々の暮らしが意外なほどよく見えてきます。一昔前の日本(私の子供の頃)にもあった道端で寝そべる犬や猫が人間と同じ日向を共有している、そんな光景がウズベキスタンの日常です(タシケントでは旧市街がおススメです。)。
まちの食堂のテーブルの下に普通にいる野良猫
死んでいると思った4頭の野良犬 実は(お腹がすいて?)寝ているだけでした。
最後にウズベキスタンの在来犬を紹介します。代表格はアラバイ(セントラル・アジア・シェパード・ ドッグ)です。日本の秋田犬や紀州犬のように地域の歴史と深く結びついてきた犬種です。4000 年以上前から遊牧民とともに暮らし、羊や家畜をオオカミから守るために育てられてきたそうで す。体の大きさに似合わず、飼い主に対してはとても忠実でおとなしいそうです。
アラバイ犬です。中央アジア各国で呼び名は異なります。写真のアラバイは耳がありますが、多くは生後 すぐにオオカミ対策として耳と尻尾を切断されるそうです。
半年ほど前、タシケント市内で散歩されている柴犬に遭遇しました。あまりの感激に写真を撮るの を忘れてしまい、未だに後悔しています。写真を撮れなかったので我が家の柴犬「ふくちゃん」を 代わりに掲載します。
(注1)タシケントでは野犬を行政が捕まえることもたまにはあるそうです。
(注2)狂犬病を持つ犬もいるので、この国で生活するなら狂犬病の予防接種をお勧めします。
歩道のコンクリートに残ったままの野良犬の足跡
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