JICA海外協力隊の世界日記

バヌアツ便り

アイランド特集:マスケリン島編

2024年2次隊の小澤由紀子です。ニックネームは「イルカ」です。

以前、イルカのトレーナーをしていたことが由来です。

首都ポートビラ市役所(エファテ島)の廃棄物管理課に所属し1ヶ月が経ちました。

海の生き物たちと関わってきたバックグラウンドがあるので、バヌアツに棲息するジュゴンとウミガメを入口にして、小学生に環境の3R(Reduce・Reuse・Recycle)を伝える活動していこうと考えています。

ジュゴンは、IUCNのレッドリストで「危急種(Vulnerable)」に分類されています。最も深刻な脅威は、刺し網に絡まり混獲されて命を落としてしまうこと。

そのほかにも、海洋汚染、船の航行による事故、違法な狩猟なども脅威となっているそうです。

そんな私のテーマのひとつ、ジュゴンの生息地を訪れることが出来ました。83の島々からなるバヌアツには、ジュゴンが棲息する場所がいくつかあります。

今回訪れたのは、マレクラ島の南端にあるラマップ空港(草が生い茂る滑走路が印象的な空港)から、日本車の4WDが大活躍する川のような道?を走り、ビーチまで移動、そして、そこから60馬力のボートに30分ゆられて、ようやくたどり着けるマスケリン島です。

まさに「地球最後の秘境」と呼ばれるのにふさわしい島です。

島の周囲は約15km。3つの村があり、マングローブが生い茂っていて稚魚たちの隠れ家になっています。

ジュゴンの大好物であるシーグラスも豊富に茂っていて、私が見た中でも一番の広さと量がありました。ジュゴンがここに住み着いているのも納得です。

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シーグラスは海岸近くに生えているので(ある程度の水深がないと食べに行けない)、ジュゴンの行動は、潮の満ち引きに大きく影響を受けます。

私が出会えたのは水深15mほどのサンゴ礁エリア。

最初の出会いは、親子のジュゴンが海底をスーッと泳いで通り過ぎる姿。

2回目は1頭のジュゴンで、水面近くを泳いでくれました。私は潜らずに水面で静かに待っていると、何度か回遊して戻ってきてくれて、なんと目の前を横目で(目が顔の横についているので、自然と横目になります。笑)見ながら通り過ぎてくれました。

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特に印象に残ったのは、水中でジュゴンが胸びれをバタバタさせていた姿(イルカの調教で教える「ペック・ウェーブ」という行動に似ていました)。

イルカにも胸びれがあり胸びれを動かすことはありますが、イルカの胸びれは舵の役割があるので、あんな風にバタバタ動かさないんです。

長年イルカと泳いできた私にとって、あの動きはとても新鮮で、「どんな意味があるのかな?」とジュゴンの不思議な生態にますます興味が湧きました。

島の暮らしも、とても印象的でした。

家々の屋根はヤシの葉を編んで作られ、暮らしに必要な道具の多くは自然素材でできています。お水は、雨水を溜めて使っています。海で貝を採ったり、カヌーで魚を釣りに行ったり、バナナをもいだりして生活しています。

プラスチックごみがほとんどなかった理由は、村の中を歩いて納得できました。

「自分たちが持ち込んだゴミは自分で持ち帰る。」というのが、このツアーのルール。

ごみ集積場もなく、自然とともにある暮らしがしっかりと根づいていました。

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旅の最終日、村の集会場に立ち寄ったら子どもたちが私の髪を結ってくれました。

その無邪気で澄んだ瞳に心がぎゅっとなって、別れ際にはたくさん手を振りながら、「みんなの海を守れるように、私、がんばるね。」と心の中で約束しました。

実は、私が住む首都ポートビラの海岸でも、昔はジュゴンが見れたそうです。

見れなくなった原因を特定することは難しいですが、ポートビラの海岸とジュゴンが棲むマスケリン島の海岸を比べると、餌場、海の交通量、ゴミの量に大きな違いがありました。

国の経済発展などを考えると、自然とともにある暮らしだけでは成り立たないことも分かります。しかし、目の前に落ちている街のゴミは街の問題だけでなく、自然と共に暮らしている島へも影響を及ぼします。

この旅で、首都と離島では環境教育のアプローチや課題がまったく異なること、しかし目の前の問題は世界と繋がっていることを、身をもって実感することができました。

そして、ちょっと距離を感じていた廃棄物管理というテーマにもより深い関心を持つきっかけになりました。


この貴重な経験を、これからの活動にしっかり活かしていきたいと思います。

Yumi Wan Solwota(海はひとつ)

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小澤由紀子(2024年度2次隊 /環境教育)

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