JICA海外協力隊の世界日記

コミュニティヘルスナースの奮闘記☆彡

任地での救急医療事情

Maayon Hapon! (マアユーハーポン)=ビサヤ語で「こんにちは」!

ご無沙汰しておりました。

今回は任地での救急医療事情についてご紹介させてください。

私の配属先である地域保健診療所は町で唯一の保健医療機関です。

そこでできる救急時の処置は傷の消毒、縫合、骨折部位の固定、酸素投与、心臓マッサージ等です。

診療所にある備品は限られていますので重症なけがや医療処置が必要な場合は1時間離れた病院に救急車で搬送しなければなりません。救急時に使われる備品は傷の処置の道具や消毒液、酸素ボンベ、酸素投与のための鼻のチューブ、バックバルブマスク(酸素投与時に使用)、サチュレーションモニター(体内の酸素飽和度を測定する機械)、ストレッチャー(搬送用のベッド)、血圧計、救急車等です。

↓写真は救急車の中です。↓

御覧の通り、救急車の中には心電図モニターや、自動血圧計などはありません(泣)

さらに、救急搬送は救急隊員ではなく、役所の運転手さんです。もちろん、医療の資格はありません。

業務時間内で患者さんの状態が重症であれば、搬送時に看護師や助産師が同伴しますが夜間や軽症の場合は運転手さんと家族だけで患者さんを搬送しなければなりません。

皆さん、私の任地の医療事情を少しイメージして頂けたでしょうか?

このような環境の中で私は救命処置に関わる、忘れることのできない出来事を経験したのでご紹介したいと思います。

↑上の写真は今年の1月に任地で開催されたマラソン大会でゴールした時のものです。

この直後に、私は誰かに名前を呼ばれました。

誘導されて行くと、マラソン大会の参加者であろう男性が倒れており、心拍も呼吸もない状態だったのです。

すぐに心臓マッサージをしようとすると同僚の看護師や助産師が救急車とともに現れました。皆で患者さんを救急車に乗せて、同僚とともに大きい町までの約40分間、心臓マッサージを行いました。

救急車内は、患者さんの固定のベルトがないのでとても揺れて、自分の体制を保持するので精一杯でした。

また同僚の心臓マッサージは3回するごとに3秒程停止していました。

日本では、心臓マッサージ30回 対 人工呼吸2回または絶え間ない心臓マッサージが手順となっています。

後で何人かの同僚に聞いてみると大分前にそのように教わったと言っていました。

そのように戸惑いながらも病院に到着し、除細動を何度か受けたあと、何とか心拍が開始されましたが、意識は戻ることはなく、それから数週間後、患者さんは亡くなられました。

ご家族は知り合いのご親戚だったのでお葬式や埋葬にも参列させて頂きました。

ご家族のお話を聞いていると、突然亡くなることへの悲しみが深く、病院まで遠いこと、救急車の設備の向上などをして欲しいと強く訴えられていました。

後に市長さんともにこの話をする機会があり、心肺蘇生の講習会を役所の職員を中心にしてみたいと提案してみると、ぜひして欲しいとのことでした。

フィリピンの医療環境や医療者の技術を否定するつもりは全くないですし、むしろどのように講習を受けているのか理解した上で何か私にできることがあればと感じた出来ことでした。

長文にお付き合いいただきありがとうございます。

次回は、心肺蘇生の講習会についてお伝えしたいと思います。

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