JICA海外協力隊の世界日記

青森県庁林業職員の元気もりもり『森×森』活動記!!

【活動】輸出丸太の検査業務

<ごあいさつ>
 Arau Denga Hola!!(地域言語で「I'm full!! ~腹いっぱいだよ~」)
 今回は輸出丸太を検査する業務についてお話します。

<商業伐採の現場~ロギング~>
 ソロモン諸島では、商業伐採(いわゆる「ロギング」)が盛んに行われています。マレーシアを中心とする東南アジア系の伐採企業が一定期間キャンプを組んで駐在し、路網開設と伐採作業を進めるとともに、まとまった量の丸太を土場(丸太を集積しておく場所)に集めたら貿易船に乗せて輸出する、という工程が通常です。
 輸出先の多くは中国ですが、ここ数年ではインドや韓国、ベトナムなどにも輸出しており、広くアジア各国のバイヤーたちがロギング現場に訪れて数日間滞在し、欲しい丸太の品定めをしていく様子が見受けられます。
 ソロモン諸島では、総輸出額の約半分、国家歳入の約3割を丸太輸出による関税やロギングカンパニーへ発行するライセンス料などで占めていることから、「林業」が重要な存在となっています。
 したがって、国内から海外へと丸太が輸出されるまでの工程を適正に監視する必要があります。

<検査方法は?>
 伐採企業がある程度まとまった量の丸太を伐採し、港周辺の土場(ログポンド)に集積した時点で、我々森林研究省出先機関のスタッフは検査に向かいます。近日中には貿易船に乗せて海外へと輸出する直前の作業となるので、日を置くわけにはいきません。
 検査時には、丸太の材積にして約1,500m3~約6,000m3、本数換算すると約500本~約2,000本の丸太が多量に積み上げられている光景を目にします、その姿は圧巻です。山の中で眠っていた巨大な樹木たちが日の目を見て、海外の市場へと出回ることを考えると非常に感慨深くなります。
 これらの丸太は、全体の材積のうち10%以上を検査する必要があることから、「10% volume check」と呼ばれています。したがって、毎回の検査では約50本~約200本の丸太を抽出検査しています。
 検査項目は、①丸太の長さ(延長:m単位)、②丸太の太さ(直径:cm単位)です。②丸太の太さは両端部を計測し、平均直径を求めます。①と②を測定後はロギングキャンプ内の別室に移り、室内で材積計算を済ませたのち、伐採企業が提出したデータと比較します。
 我々行政側が測定したデータと、伐採企業が提出したデータに3.5%以上の誤差が生じた場合には、ペナルティとして伐採企業に対して反則金を請求することになります。私が所属する森林研究省ムンダ事務所の事案としても、過去には数百万円規模での反則金支払命令を出したことがありますので、伐採企業にとっては輸出丸太の適正管理が求められます。

<今後の資源量は?>
 写真のように、中には直径2mを超えるような大きな丸太も見受けられます。日本人の感覚であれば、「屋久島のヤクスギか、白神山地のマザーツリー(ブナ)のようなものじゃないか、伐採して良いのか?」と、なんだか不安に思う部分もありますよね?
 買い手が海外にいる以上、そして現金収入を得たいとするソロモン諸島の国事情や国民事情を踏まえると、伐採して売ることはやむを得ないのかもしれません。というのも、以前まではこうした商業伐採が行われる際に、「択伐(たくばつ)」と呼ばれる、樹木をある程度残す伐採形態がとられていましたが、近年では「皆伐(かいばつ)」と呼ばれるとおり、存在する樹木は全て伐採してしまうという形態がとられています。
 これまでの歴史を振り返ると、商業伐採は過去に何度か同じ森林内で行われてきたものの、20~30年程度の休養期間を経てすぐにまた同じ森林内で商業伐採を実施しているという現状があります(最短で13年の現場もあります)。20~30年を過ぎた程度では、森は十分に育ちきりませんよね?天然林及び造林木の成長速度が日本よりも圧倒的に早いとはいえ、健全な森林管理がなされているとは言い難い現状です。
 また、ソロモン諸島の森林は「ひとまず切り納め時」に入っているように感じます。アジア・大洋州地域では、丸太輸出を認めている国はパプアニューギニアとソロモン諸島くらいのようです。そのほかの国は既に丸太輸出を禁止しており、パプアニューギニアも近い将来には禁止するものとみられています。そうした中で、ソロモン諸島は「丸太を安く輸入できる国」として扱われている感があることは否めません。
 丸太輸出によらなくても、国内において十分に現金収入が得られる体制が整う日が来ることを期待しています。

<写真の説明>

【写真①】直径2.5mの巨木!!(でも資源量は多くないんです)
【写真②】材積検査の様子(バイヤーの略称や樹種、通し番号が記載)
【写真③】ログポンドの全景
(停泊中のカーゴに丸太を乗せ、沖まで牽引した後に貿易船へ積み替え)

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