JICA海外協力隊の世界日記

青森県庁林業職員の元気もりもり『森×森』活動記!!

【活動】ソロモン国立大学にて

 今回は「ソロモン国立大学(SINU)の林学科で行ったヒアリング」についてお話します。

<大学での林学教育ってどうなっているんだろう?>
 ソロモン諸島において、主要な「林業・森林保全」関係の大学教育がなされている現場事情を把握するため、大学関係者へのヒアリングを行いました。

 期日:2019年12月4日(水)
 場所:ソロモン国立大学 自然資源・応用科学部 林学科
     Solomon Islands National University
     School of Natural Resources and Applied Sciences, Forestry Department
      ※Venue:SINU KUKUM campus, Honiara

<教育課程>
 ・①Certificate、②Diploma、③Bachelor、④Master、⑤Doctorの5区分のうち、①Certificate(1年間)と②Diploma(2年間)の過程はすでに確立されており、2021年度より③Bachelor(3年間)の過程が確立される予定である。④Masterと⑤Doctorは現時点で開設予定が無い。
 ・①Certificate課程は1986年から開始(前身の専門学校時代より)、②Diploma課程は2017年から開始。
 ・③Bachelor課程は2021年から開始予定だが、一般的に考えると就学期間が3年だけであればBachelor(学士)取得には相応しくなく、Diploma(専門士)程度にすぎないと捉えられかねないため、諸外国の情勢を引き続き注視していきたいという状況。
 ・林学科関係の教員は10名程度いるが、実際に教鞭をとるのは7名程度であり、ソロモン人の教員は4~6名程度とのこと。ペルー人やインド人の教員も所属している。
 ・Certificate及びDiplomaともに、毎年2月~6月頃までが1学期(Semester 1)、7月~11月頃までが2学期(Semester 2)となる。ただ、それぞれの期間中において実際に講義がある週は14週間だけとなる(最近までは12週間だったとのこと)。
 ・Diploma課程の2年次では、毎年6月頃にWestern州Poitete地区などでの実習を計画しているものの、Certificate課程では同実習が計画・実施されていない。大学内での講義のみで課程を終えることになるため、実学教育の不足が懸念されている。
 ・5冊程度の使用テキストは毎年バージョンアップさせて製本し、学生はSBD100ドル/冊(約1,500円/冊)で購入している。いずれのテキストについても、基本的な要素は「Siliviculture Manual in Solomon Islands(1993 GRAHAM CHAPLIN著)」を参考にしながら製作しているとのこと。
 ・ソロモンの森林・林業事情に関する書籍の多くは、昔であれば宗主国であったイギリスのものが多いほか、近年であればオーストラリア支援のものが多い。

<卒業生の動向>
  2018年度末以降、本学で初めてのDiploma資格保有者の卒業生が誕生しているが、こちらの情報は極めて少ないようなので、Certificate資格保有者の卒業生について記述する。
 ・主な就職先は、①ソロモン諸島では主要な林業事業体であるKFPL社(Kolombangara Forest Products Limited)、②森林研究省(MoFR:Ministry of Forestry and Research)、③製材会社等(個人所有含む)、④オイルパーム会社(GPPOL:Guadalcanal Province Palm Oil Limited)、⑤学校教員などとなっている。
 ・①2016年以降の卒業生では、毎年約30名のうち10名以上はKFPL社に就職していた。しかし、これらの新入社員は訓練生扱いとなり、2年間の試用期間を経て優秀と判断されれば正採用となるが、そうでなければ退職となる。また、KFPL社の社員事情として、No.1のGM(General Manager)やNo.2のFM(Forest Manager)らを筆頭とする幹部職員と一般職員との間で、職務レベルに大きな差異が生じることが無いように、今後はSINUのDiploma資格保有者も採用していきたい様子。
 ・②森林研究省では定期的に採用があり、女性職員の採用も目立ってきているが、特に20歳代の職員を中心として、テキスト主体の講義だけで就学していた経緯から、現場経験の未熟さが気にかかるという声がある様子。
 ・③製材会社等については、国内に3つ立地する主要な製材会社のほか、個人ベースで小規模に取り組んでいる卒業生もいるようである。
 ・④GPPOLについては詳細情報無し。
 ・⑤林学科の卒業生のうち、さらに他学部で所要の単位を得ることによって教員免許を取得し、PrimaryやSecondaryの教員となる卒業生もいるようである。

<森林研究省職員の学位保有状況>
 ・Doctor 保有者は1名(他国で取得)。
 ・Master保有者は2名(他国で取得)。
 ・Bachelor保有者は若干名(他国で取得)。
 ・Diploma保有者は若干名(他国で取得)。
 ・Certificate保有者は多数。現在のSINUのほか、前身となる専門学校での卒業生など。
 ・Certificate未保有者も多数いるが、職位が低く給料が安い。

<所感>
 現在の大学課程ではなく、前身となる専門学校時代のほうが、キャンパスのあったウェスタン州コロンバンガラ島ポイテテ地区において日々現場経験を積むことができていたことから、現在の座学中心の林学教育では不十分である様子がうかがえる。また、女性の学生が増えてきていることや、主な就職先である森林研究省において女性職員が増加傾向にあることを考慮すると、実学教育の拡充と森林・林業分野での女性活躍の環境整備などが必要な状況となってきているようである。

<写真の説明>
【写真①】林学科の担当官であるMr. Peter Mahoa(Lecturer)
【写真②】ソロモン国立大学ククムキャンパスの林学科の全景
【写真③】ソロモン国立大学の看板

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