2019/08/11 Sun
文化 生活
74.ジブチでの「インシャーラー」
こんにちは。2018年度1次隊ジブチ派遣(青少年活動)の遠藤浩之です。
今回はジブチの文化,というかジブチ人の考え方についてお伝えします。
「インシャーラ―」という言葉は聞いたことがあるでしょうか?
アラビア語で「神のみぞ知る。」「神が望むなら。」などといったような意味です。
英語では“If Allah says,”と表記されます。(1枚目の写真:私が活動先で実施している英語教室で使用しているジブチの英語テキスト)
すべては神アラー(イスラム教の唯一神)が決めることで,我々人間にはあらゆる決定を下すことができないということだそうです。
ジブチ隊員は,この言葉による異文化の壁を乗り越えなければいけません。
いくつか例を示します。
(活動先で同僚と)
「明日の会議は何時から?」
「9時からだよ。インシャーラ―(神が望めばね)。」
→実際には,会議が開始したのは11時
(活動先のバスケットボールの試合にて)
「試合は4時からじゃなかったっけ?一体何時に始まるの?」
「4時だよ。」
「いや,もう4時過ぎてるけど。」
「うーん,じゃ4時半かな。とにかくもう少しだよ。インシャーラー(神が望めばね)。」
→まもなくして選手が到着し,試合は5時過ぎに開始。
(日本語教室で)
「今日は彼欠席だったけど,来週は来るかな?」
「うん,来るよ。インシャーラ―(神が望めばね)。」
→実際には,彼は来なかった。
(配属先にて)
「報告書に記入する配属先からのコメントをいただきたいのですが…。」
「うん,今週中にはメールで送るよ。インシャーラ―(神が望めばね)。」
→実際には,1ヶ月ほど待った。
この異文化に適応する難しさは,次のような場合です。
「明日の会議は何時から?」
「9時からだよ。インシャーラ―(神が望めばね)。」
→実際に,9時に会議が開始される
このように,いつも開始時間が遅れたり,約束が守られなかったりすることばかりではないということ。
また,一番困った体験は昨年の夏に活動の一環で海岸清掃ボランティアに参加したときのこと。
「明日の海岸清掃の場所がよく分からないんだけど,どこに集合すればいい?」
「じゃあ,フランス大使館の近くで朝7時に待ってて。」
「了解。朝7時にフランス大使館前ね。」
「インシャーラ―(神が望めばね)。」
(赴任して間もない私はこの異文化を理解できず,素直に時間通りに行くことに。)
→1時間近く待っても誰も来ない。電話しても出ない。
自力で海岸清掃場所を見つけたが,誰もいない。
9時頃になってやっと関係者が現れる。
とりあえず海岸清掃イベントがあることが分かって安心。
ただ,炎天下の中2時間近く待たされ,そこからの清掃ボランティア。
体調が…。
ここから分かったのは,ジブチ人は時間通りに来ないことが多いため予め参加者には開始よりも早めの時間を伝えることが多いということ。
たしかに,活動先の日本語教室も本来の開始時刻は17:30だが,センター長は新しい生徒には17:00からだと告げている。
日本のすべて時間通りに動く電車や,時間通りに開始される会議,イベントは本当にすごいと思います。
ジブチで生活する方はこの異文化理解に頭を悩ませることでしょう。
余談ですが,任国外旅行で訪れた同じイスラム教の国ヨルダンでは,ほとんど「インシャーラー」という言葉は聞きませんでした。(タイミングなどの問題もあると思いますが。)
ただし1回だけ言われたのが以下の場面。
(ヨルダンの床屋にて)
「ヨルダン人みたいになりたいんですが…。」
「インシャーラ―(神が望めばね)。」
→無事にヨルダン人のような髪型にしてもらえました。
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