JICA海外協力隊の世界日記

レレ村からナマステ

दैनिकी_११ 2024年9月のネパール大雨による任地レレの洪水について

2024年9月末、ネパールは大雨となり、任地レレは43年ぶりの大規模な洪水が発生しました。
世界日記に文章にしようと思いながら、考えているうちに月日が経ってしまいました。
大雨から半年が経ち、復興の進み具合も地域によって異なりますが、今でもレレの日常の景色に大雨、洪水の爪痕が残ります。
改めて当時を振り返り、言葉に残したいと思います。
(最初の写真は大雨の翌日。水があふれているところは道です。)

ーーー

2024年9月26日からネパールでは雨が降り、雷を伴う大雨に。
任地レレは26日から停電し、電波もなくなった。
いつもみたいに数時間で戻るだろうと思ったらそのまま戻らずに水道ホースが飛ばされ、カトマンズへの道が土砂崩れで通れなくなったと聞いた。
レレは陸の孤島となってしまった。

翌日も翌々日も一日中、強い雨だった。
1日中薄暗く、外に出ることもできず、ろうそくをつけて過ごした。
家の窓から外を見ると、一面黄金色の美しい田園だったはずの景色はまっ茶色な湖になっていた。
一緒に耕し、一緒に種をまき、「来シーズンは新規作物に挑戦してみよう」と話していた畑たちが、
すべてまっ茶色だった。

29日は快晴だったので、外に出て歩ける場所を歩いてみた。
収穫直前の美しかった黄金色の棚田はまっ茶色の土砂と水、上流から流れてきたゴミに溢れ、澄んだ空気の真っ青な空とのギャップが異様だった。
川の近くの家や畑は流されてしまい、山の斜面の家は水を多く含んだ赤土の土砂崩れに巻き込まれ壊れてしまった。
小さなレレの街で7名の尊い命が奪われた。
家を流されてしまった人は空き家に移り、住民たちで古着、米や野菜を分け合った。
私の家は大きな被害はなく、残り少ない飲み水と食料を近所の人たちと分け合った。
大変な時なのに、外を歩いてて、「大丈夫だったか」「怖くなかったか」と明るく強く、優しいレレ住民。
「自分の畑も水びだし。野菜にも被害が出てしまった。これから野菜は値上がりするだろうから、
今のうちにしっかり食べなさい」と自身も大変な状況にあるにも関わらず、満面の笑顔で私に野菜をくれた。

携帯もつながらないので、普段は道端で携帯ゲームをしている人たちも携帯から離れ、
いつも以上に活発な井戸端会議。
様々な方々がいた。

姪っ子が大学の試験のために大雨の中歩いてレレからカトマンズへ。
ネットもつながらないから無事に到着したかわからないという人。
草刈りに行ったら蛇にかまれてしまい、でも道が閉ざされて病院に行けないという高齢女性。
水が残る道のバイク移動。タイヤが滑り、あっちでもこっちでも事故が。
家族の牛の世話担当者が病気に。牛のエサのために慣れない草刈りに行かなければいけない若者たち。
トタンの家の中にも土砂が流れ込み、服もベッドも泥だらけになってしまった大家族。
雨の中病院に行ったまま帰って来ない親子。

大変な状況の方々の情報をシェアし、助け合っていた。

その後、私は首都カトマンズに避難した。
道が閉ざされていたため、水を含んだ土砂の残る山を歩いて超え、途中で車に乗り首都カトマンズに向かった。
カトマンズも洪水の被害があったが、電気もあれば水もあり、夜遅くまで明るい街。
いつもと変わらぬ食材たっぷりなカトマンズのダルバートを目の前にレレとの違いに、申し訳なくなった。

避難から1週間後、レレに電波と電気が戻り、任地に戻れることになった。
水も2-3日に1回届くようになっていた。
道も1車線分通れるように土砂がどけられていた。

任地に戻ってきたら、びっくりなことにレレのメインロードには外国人、カトマンズの富裕層がたくさんいた。
様々な団体がレレのために支援に来ていたのである。
支援をする人、支援を受け取る人、受け取れない人、様々な方々がいた。

家が流され、茶色の湖となった畑を目の前に、ストレスで高熱を出して寝込んでしまった農家さん。
畑に被害はなく、収穫可能な農作物がたくさんあるにも関わらず、道が閉ざされ出荷できない農家さん。
ストレスで片耳が聞こえなくなってしまった農家さん。
「神の天罰だ。農薬を使う農家には支援するな」と言う人。
「自分より地位が高い人に「助けてください」「支援物資をください」なんて言えない。」というチヤのお店での井戸端会議。

本当に大変な人ほど「大丈夫」と言って、
家の場所、自分の職業で周りへの助けを求めることができたりできなかったり。
復興の進み具合も被害の大きさではなく、場所によって全く異なり、
何もできないもどかしさを実感したのでした。

▲大雨から2週間後。左側の家は土砂が流れ込み屋根がつぶされてしまった。

▲大雨から1か月後。ゴミと土砂の残る畑。毎日手作業でゴミの撤去が行われました。

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