JICA海外協力隊の世界日記

マテ茶とおしゃべりでとらんきーろ

25) 隊員紹介② 家畜飼育隊員

 今回も前回の看護師隊員Sさんに引き続き、隊員紹介を行っていきたいと思います。今回は家畜飼育隊員であるKさんです。Kさんはもともとチーズも作っていて、食品に関することに詳しい人です。専門分野は違えけれど、私も食べることにとても興味があるのでお話が聞けるのをとても楽しみにしていました。

 それでは、はじまり、はじまり。

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①活動について教えてください

 活動場所はイタプア県とアルト・パラナ県を拠点とするコロニアス・ウニダス農協です。イタプア県、アルト・パラナ県は農業が盛んな地域で、大豆やトウモロコシ、マテ茶の栽培も盛んです。配属先ではこれらの部門の他、畜産部門もあり、私はこの中の乳部門で活動しています。また工場が配属先の近くにあり、畜産動物のための飼料や乳製品が製造されています。私の活動は食品衛生に関することです。同僚と農家を訪問し搾乳機器やタンクの洗浄が行われているか確認したり、搾乳方法についてもチェックシートを作りお話したりしています。

これまでの経験(現在の職業になった理由、協力隊の応募動機等)

 衣食住のどれかを仕事にしたいと思っていました。身近な家族の病気をきっかけに食の大切さを感じ、食べることが好きなのもあり、食品(その中でも乳製品)について知りたいと思い、農業・畜産の分野に進みました。協力隊参加のきっかけは大学生のときに、短期ボランティアで1ヶ月パラグアイに来たことです。短期ボランティアが終わった後も心に残るものがあり、もう一度パラグアイに行き、農家さんと共に生活をしながら活動をしたいと思いました。本来であれば大学卒業後に長期ボランティアに参加する予定でしたが、コロナパンデミックの影響で大学卒業後すぐの参加は難しかったため、派遣までの3年間で2つの場所で働きました。1つ目はチーズを熟成する機関で働き、チーズの細菌数の検査や、チーズの検品など品質管理の担当をしていました。2つ目はチーズの製造を行っていました。

③活動の中で印象深かったこと

 パラグアイはもっと田舎なところを想像していましたが、実際に来てみて発展していると思いました。生活面でいえば、デリバリーアプリやタクシー配車アプリが使えることに驚きました。また、大学時短期ボランティアで来た5年前と今回とでの変化にも驚いています。任地では5年前牛乳は手絞りで行っておりとれる量も1頭あたり5L程度でしたが、現在では機械搾乳している農家がほとんどになっています。パラグアイ全土の農家に変化があるわけではなく、私の任地は比較的大きな国道沿いの町であり、内陸の田舎な場所と比較すると差があるようですがその変化には驚きました。酪農の形態も様々になっていて、日本ほどの規模の方がいたり、考え方なども幅広く感じました。酪農方法が以前と比較し改善される根底には同僚たちの努力があります。酪農改善は今までの酪農家のやり方を否定することにもなります。農家さんとの関わりの中で農家さんにリラックスして話を聞いてもらえるように意識的に話の仕方を工夫している同僚達は凄いなと思っています。

 また、移民が多く、様々な国の人がいることは印象深いことの一つです。特に私の任地では、ドイツ、ウクライナ等々の移民が住んでおり、すぐ近くには日本人居住区(ピラポ)もあります。国ごとの文化も残っていて、例えば私の所ではセマナ・サンタ(キリストの復活祭)にはドイツの文化であるDulce de mani(ピーナッツのお菓子)を食べることや、ゴミを捨てない、時間を守るなどが挙げられます。個人的な意見ではありますが、これだけ移民が平和に暮らしている背景には、パラグアイの歴史や人々の優しさ、移民の方々のパラグアイに対する尊敬(=グアラニー語など)があるのかなと考えています。日本人が入植時にスペイン語ではなくグアラニー語から学んだという話を聞いたことがありますが、もしパラグアイにグアラニー語がなくスペイン語だけであれば、どこかの国が勢力を伸ばしている気がします。移民の中でもグアラニー語を話せる人がパラグアイ人に認めてもらえ、パラグアイの社会でうまくやっていけるのではないかと考えます。今まで知らなかった移民の文化から学ぶことがたくさんありました。

➃今後の目標(この隊員生活をどう生かすかも含めて)

 この期間で貴重な経験をさせていただきました。任地が移民の多い地域であること、日本人居住区も近くにあり、日系の方々と交流できたことで新しい見方もできました。日本の大事なものを大切に残している人たちが地球の反対側にいることに驚きがあり、入植から今まで日本文化がパラグアイで伝承されてきたことに対して尊敬の念を抱いています。また、任地で活動する中で日系社会の話が出ることが多く日系社会に属さなくとも身近なところに日系社会があり、その存在に大きく助けられました。日系社会の話は知れば知るほど興味深く、帰国後も日系の方々との交流の機会を持ちたいと考えています。また、パラグアイの住みやすさ、パラグアイ人の優しいところ、物がないからこそ今持っている物を大切にするなど、パラグアイのいいところもいろんな人に伝えていきたいです。また私はこれまでの人生においてたくさんの失敗をしてきました。日本には少々失敗が許されない雰囲気があると感じています。失敗してもいいし、失敗しないと人は成長しません。その失敗を私が話すことで少しでも気持ちが楽になる人がいるのであればこれまでの話を人に伝え、これからも周りの人と一緒に失敗して成長していきたいです。

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 Kさんありがとうございました。乳製品が専門とのことで、話をする中で牛乳についてもたくさん教えてもらいました。私自身普段何気なく摂取する乳製品ですが、知らないことが多くとても勉強になりました。食べ物について知れば知るほど気持ちを込めて食べ物を大切に食べたいという想いが芽生え、改めて食育は大事だと思いました。

 また、同じパラグアイといえど、住んでいる地域でパラグアイの印象が違うことにも驚きました。Kさんの任地に移民が多く住んでおり、Kさんのパラグアイの印象を語るうえで大切な存在になっていることは興味深いと思いました。帰国後は日系社会との関りを持ちつつ、これまでの経験をいろいろな人に伝えたいとのこと、このボランティアの期間で学んだたくさんのことがたくさんの人に届きますように。日本でKさんが作るチーズを食べるのが私の目標です!今後のご活躍も応援しています。

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