JICA海外協力隊の世界日記

マテ茶とおしゃべりでとらんきーろ

26) 隊員紹介③ ソーシャルワーカー隊員

Hola 今回も隊員紹介を行っていきたいと思います。3回目となる今回はソーシャルワーカー隊員のTさんです。ソーシャルワーカーという職種はパラグアイ赴任前病院で看護師として働いているときに業務の面で大変お世話になっており、医療・福祉という意味で私にとって身近な職種です。また、私自身日系社会に大変興味があり、ソーシャルワーカー隊員とはどんな活動をされているのか話を聞いてみたいと思っており、今回お声掛けさせていただきました。それではよろしくお願いします。

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①活動について教えてください

 首都圏にある、パラグアイの日系人・日本人団体の連合組織で日系社会隊員(ソーシャルワーカー職種)として活動しています。配属先は国内にある9日本人会・文化協会と1日系団体からなり、世界日記を現在執筆中の宮村隊員(文化職種)と同じ職場です。パラグアイ日系社会は「福祉」と「教育」の両事業に力を入れており、私は国内各地で活動する福祉ボランティアの方々への研修や、各地区で新たな福祉活動者を増やすためのパンフレット作成、昨年実施した日系高齢者健康調査の分析などをしています。

 研修はコロナ後オンライン方式も取り入れられていますが、各移住地を訪問することも多いです。パンフレットは、各地区での福祉活動が開始して15~20年経つなか活動メンバーの固定化が進んでいるため、今年初めて印刷物として作り各日系社会へ配布する予定となっています。健康調査は10年ぶりの実施のため、過去データとの比較なども含めカウンターパートと協力して進めているところです。

②これまでの経験(現在の職業になった理由、協力隊参加の動機等)

 障害のある人の人権がひどく侵害されている状況を知り、(20代なかばまでまるで関心のなかった)福祉の仕事をしよう、と一般企業を退職しました。その時期に電車内で協力隊募集の中吊り広告を見て、説明会に参加しました。しかし資格や経験がないと応募できずそれまでの仕事内容を活かせる職種要請もなかったため、福祉系大学に入り直し就職。社会福祉士、介護福祉士、介護支援専門員などの資格をとり途中からは個人事業者として企業からの請負や大学・専門学校・各種研修の講師をしていました。20年近く請け負っていた訪問相談事業が企業の予算縮小で終了となったため公益法人に年度毎雇用で就職したのですが、「自分は若い時協力隊に行きたかったんだ」ということをふと思い出して在職中に応募し、合格したので1年で退職しました。

 国内での派遣前訓練が始まってから気がついたことですが、協力隊事業は活動や交流をしてその成果や困難な状況を広く知らせたり還元するものですよね。青年期を過ぎてから「携帯不要、SNSはしない、仕事は誠実に取り組むが『やってる感』は決して出さずなんなら『やってない感』を出すべくひっそり生きることにした」雑巾人間の自分にはまったく合致しない活動であったわけです(気づくのが遅い!)。配属先の皆さんや先輩隊員の温かいサポートに感謝しつつ、無理に自分を変えることはせずアマンバイ、じゃなかったアンバイをみながら活動しています(注:アマンバイはパラグアイの一日系移住地の名称)。

③活動の中で印象深かったこと

 日系社会隊員ですので、パラグアイの日系社会にはやはり驚かされます。中南米の中でも移住の歴史が新しいこともあり(2年後に移住開始90年)、戦後復興期頃の日本の家族の価値感やしつけがそのまま残っており大家族世帯も多く、「日本より日本らしい」とはよく言われることです。私の活動言語は日本語であり、全員が流ちょうな日本語を話す配属先の同僚や日系1・2世の高齢者の皆さんと、日々まったくストレスなく会話をしています。JICA事務所が隊員向けに用意してくださった貴重なグアラニー語(現地語)研修を1日受けて「豚に(猫にor馬の耳に)〇〇」と逃げ出してしまったくらいです。

 一方、若い隊員の方々の言語習得の努力や任地での懐に入り込むバイタリティ、国際協力活動への情熱には敬服しています。私はコロナ禍直前に一度派遣されてすぐ帰国となった再派遣隊員ですが、最近初めて「後輩」と呼べる隊員ができたばかりで(まだお会いできていませんが)、常に私以外の全隊員が眩しい存在でした。任期が短いのですが、これからは一先輩隊員として何か次世代の隊員に残せるもの(余った硬貨とかマテ茶の茶葉などではなく)を築きたいものです。

④今後の目標

 パラグアイのこと・その日系社会のことを、隊員募集合格当時(5年前)の私も、私の親族知人もほとんど知りませんでした。それを知らせることは当然の目標となります。また4年前より、「災害に遭わないまちづくりと限界集落を解消するスマートタウンの構築政策」についての研究を帰国後したいと思っていたので、適当な大学院を検討しようと考えています。

 日本こそが世界に抜きんでて伝えられること(伝えるべき立場にいること)は、①少子高齢社会、②自然災害、③核兵器被害を含めた原子力、とそれぞれどのように向き合うか、だと認識しています。現段階ではそのどれについても国際的に移転できるような技術や見識を国として持てていないのですが、日本の若者世代に負の遺産を押し付けないよう老人力を活用しなければならないとは考えています。隊員活動経験の還元については・・・口癖になっているJICAへの提言がつい飛び出てしまいそうなので個人的にひっそりとできればと思います(笑)。 

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 Tさんありがとうございました。現在に至るまで福祉分野で様々なご経験があること、そして長年の想いをもって今回協力隊に参加されていることを知りました。本文にもありましたが、日本と世界を比較し帰国後の進路を考えておられるとのこと大変興味深いです。それぞれ土地が違えば歴史が違います。日本から一歩見た出た先で日本をふり返り自分に何ができるのか私自身も考えてみたいと思いました。

 また、先日Tさんの活動の一つである日系社会のデイサービスに参加させてもらいました。体調チェックから始まり、体操や体と頭を使うレクリエーション、みんなで囲むお昼ご飯等々パラグアイにいるはずなのに日本のデイサービスに参加している気持ちになる一方で、参加者同士が挨拶時にハグをしているのを見るとパラグアイの文化を感じました。日本とパラグアイの両方の良き文化風習が混ざっているのを見てとても微笑ましく思いました。私もパラグアイに来てから日系社会に興味を持ち、パラグアイ国内のいくつかの居住区を訪れました。その中で日系社会の高齢化も進んでいるとよく聞きます。高齢者がなるべく病気にならず元気に過ごせるよう、今後の活動も応援しています。

それではまた次回、Chao!

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