JICA海外協力隊の世界日記

チュニジア女性は逞しい!?

集団から個の時代へ

昨年の犠牲祭*の時に滞在した農家さんから、村のお祭りのお誘いをいただいたので、またお邪魔しました。お祭りでの子供達の演技も可愛らしかったし、夜は、昨年見た美しい星空を再度堪能できました。おばあちゃんもお元気でした。私がプレゼントした痛み止めの湿布を使ってくれていました。

*犠牲祭:イスラム教最大のお祭りで、唯一神であるアッラーの神に羊を捧げて一家の健康と安全を願います。家族で集まって、羊まるまる1頭をさばいて食します。イスラム暦の12月10日から3、4日間行われます。

昨年、スース県内の各農家さん達を訪問した時、なんだか大家族だなあ、と思いました。兄弟姉妹が3、4人いて、おばあちゃんも一緒に住んでいて、隣には叔父さん一家が住んでいて・・・。農家さんは地域毎でグループを作って活動しているのですが、そのメンバーはみんな名字が同じ。住所には番地がなく、みんなが同じ住所。「従兄弟、従姉妹」と言っていたので、どうしてかな、と思ったら、村全体が親戚の集まりだそうです。兄弟姉妹、おばあちゃんもみんな名前で呼び合ってとても仲がいい。

そんな様子を見て、私の子供の頃の生活を思い出し、とても懐かしい気がしました。

今は一人暮らしをしている私ですが、地方都市の郊外の大家族で育ちました。両親と私と妹に加え、母方の祖父母、叔母である母の妹達のうち3人が一緒に住んでいて全9人。人に説明する時は「サザエさん一家みたいな家族」と言っていました。また、夏休みに叔母達の家に滞在した時は、従兄弟や従姉妹達と毎日遊んでいました。今でも私の叔母達は隣り合って住んでおり、いつも一緒に行動していて、まるでチュニジアの姉妹のようです。叔母達が一斉に集まった時など、各人が思い思いのことを人の話に被せて話すので、私は口を挟む隙もなく、専ら聞き役です。

現在の日本では、個の時代が進んでいる、と感じます。一家族当たりの人数が減っている、ということもありますし、人との関わり方や物事の進め方に関しても個人個人になってきていると感じます。

それは、JICA事務所とのやりとりで、気がつきました。

以前の勤務先では、メーリングリストやその他のツールを使ってみんなでディスカッションしたり、仕事の進捗の確認をしたりしながら業務を進めていました。部署を跨いでプロジェクト的に行う業務が多かったこともあります。何か指摘が入る時など、関係者全員に一斉に知られてしまうので、気を遣いながらメールを送信していた気がします。

チュニジアに来ても、その感覚のまま、事務所からの確認連絡などの際に全員宛で返信しそうになったのですが、ここで他の隊員達は差出人のみに返信をしている、ということに気がつきました。この返信の仕方の方がメールの数は減るので、メールの見落としを防ぎやすい、と思いました。以前の勤務先では、毎日百通以上のメールが来ていたので、回答を要するメールを見落としてしまうこともあったからです。

現在、隊員が他の隊員に何かを呼びかける時には、グループチャットで声をかけてそれに対して個々で差出人に返事をします。その後、参加メンバーで別のグループを作って周知などを行っています。これもすっきりして悪くはない、と感じます。同時に、みんなが意見交換する場としても活用されるともっといいかも、と思ったりもしました。企画への参加者はどのくらいいるの?みんなはどう考えているの?ということに、私は興味があったからです。

色々考えた結果、コミュニケーションの方法の違いに関しては年齢も関係しているのでは、と思うに至りました。若い世代は意見交換する場として、こういったツールを使わないようだ、と。

日頃私はジェネレーションギャップを感じないのですが、集団の時代から個の時代に変わったのだなあ、と感じました。

いずれはチュニジアでも日本と同じ方向に進むだろうと思います。アフリカ全体でも出生数は落ちてきていますし、チュニジアでも都市部を中心に、夫婦当たりの子供の数が少なくなってきているように感じます。

個の時代はプライベート重視、と言えると思います。人と程よい距離感を保ちます。他人を尊重する、ということもあるでしょうし、自分が本当にやりたいことに集中するために多くの情報の中から自分にとって必要な情報を選ぶ、ということもあるでしょう。日本のように自分の仕事で忙しかったら、人のことにあまり構ってはいられません。

チュニジアでは、みなさんおせっかい気味です。配属先の同僚達も血液検査の結果や病院の診断書を覗き込んで、色々とコメントしてきました。日本人の感覚としてはちょっとびっくり、ですが、異国で暮らす私を心配してくれているからこそ、とも思います。また、チュニジアでは、道で何か困っている人がいると、手助けをする光景もよく見ます。心に余裕があるのだと思います。

一方、仕事の進め方、という点で見ると、私の配属先では各人が個々に業務を進めています。 各人に業務の責任範疇が定められていて、配属先長の指示に従い、個々で業務を遂行する欧米型です。色々な人の合意を得る段取りが少ないので、効率はいいように思います。一方、農家さんはみんなで協力して作業を進めています。

集団と個、どちらもいいところがある気がします。それぞれの良い特徴を踏まえつつ、周りに合わせながら集団と個をうまく組み合わせて活動に活かしたい、と思います。

*写真:お祭りで賞状をいただきました。内容は実はよくわかりません。チュニジアの人は、賞状が大好きです。

SHARE

最新記事一覧

JICA海外協力隊サイト関連コンテンツ

  • 協力隊が挑む世界の課題

    隊員の現地での活動をご紹介します

  • JICA 海外協力隊の人とシゴト

    現地の活動・帰国後のキャリアをご紹介します

  • 世界へはばたけ!マンガで知る青年海外協力隊

    マンガで隊員の活動をご紹介します

TOPへ