JICA海外協力隊の世界日記

チュニジア女性は逞しい!?

汽車?電車?

東海道新幹線と共に育った私は、日本の新幹線が大好き。田んぼとうなぎの養殖場の真ん中をゴー、っと新幹線が走って行くのは格好がいい。高台にある中学校の窓からドクターイエロー(保守点検用新幹線)が見えると、授業そっちのけでみんな見入っていましたし、「JR浜松工場」でドックに入っている新幹線を、家に向かう路線バスから見るのも楽しいです。

そしてなんと言っても安全で時間に正確。時速200km以上出す、16両もある新幹線が数分おきに駅に着き、チャイムと共に静かに発車し、あっという間に加速して行くのは驚きです。当たり前ですが、決してぶつからないし、脱線もしない。地震があってもピタ、っと止まる。「新幹線が日本で一番自慢できるものではないか?」とさえ思っています。

そんな私が、チュニジアに来てとても驚いたのは、鉄道網。私はチュニジア第3の都市、スースの駅近くに住んでいますが、毎日「ぽっぽー」と可愛い音、いや、轟音の汽笛が辺りに響き渡ります。毎日7:25スース発の列車があるのですが、発車前後は汽笛でかき消されて会話ができません。夜中に発着する列車もあり、その汽笛の音も当然聞こえてきます。

コロナ対策として許可されていなかった公共機関の利用が解禁となり、私は早速、意気揚々と駅に列車を見に行きました。
・・・そして、

「あれ、これ汽車じゃないの?」
どおりで汽笛なはずです。明治村にこんなの走っていたよね・・・。

さて、夏になり、自分自身がいよいよその「汽車」らしい列車を利用する時がやってきました。バカンスシーズンなので欧米人も含み、大勢の人達が列車を待っています。やっと来ました。お、段差が凄い。バリアフリー、という言葉はこちらにはないのか。おばあちゃんもみんなに助けられながら乗り込んでいきます。荷物の積み込みも助け合い。


その帰り、午後に1本しかない列車を逃すまいと、30分位早く駅に着きました。午後2時くらいの列車だったと思います。でも、発車時刻を過ぎても列車は来ません。駅員さんはカードゲームをして遊び、みんな辛抱強く待っています。おばあちゃん、お母さん、子供達の家族一行も大きな荷物を持って列車を待っていました。そのお母さんが私に教えてくれました。「次の列車は17時半過ぎにならないと来ないよ。まだチュニスを出発していないから。」さっき駅員さんが5時半がどうのこうの、と言っていたっけ。まさか、本当に17時半だったのか。出発駅を発車すらしてないとは・・・。

うだるような暑い日差しの中、半日駅で待ちました。結局列車が来たのは午後6時頃だったように思います。なんとか日没前には帰れそうなものの、当然車内は混み合っていて、同じ駅から乗った人はみんな立っています。疲れ切った私をみて、若い男性が親切に席を譲ってくれました。感謝。
感心したのは、そんな中でもみんな不平も言わず、辛抱強く列車を待っていることでした。前述の親子連れも然り、こちらの人は忍耐強いなあ、と思いました。もっとも、やはり我慢できない時もあるようですが。それはそうですよね。


日本では朝のラッシュ時すら、1分の遅れも許すまいと列車が次々とやってきます。日本人としては、普通に遅れる列車にはびっくりしてしまいます。遅延届や、謝罪も当然なし。ここでは案内もなしに列車がなくなることも珍しくはありません。

チュニジアで主要都市を結ぶ列車はこんな感じなのですが、一方では近隣都市を結ぶのは割と綺麗な「電車」です。本数も多いし、まあまあ時刻通りの運行です。なぜだろう、首都チュニスとその近郊、スースとモナスティールやマハディアなどなど。どうしてだろう?ずっと疑問でした。

もしかして、この基幹線の列車は電車でも汽車でもなくて、ディーゼル機関車かな?
インターネットで「ディーゼル機関車」を検索してみました。

「旧式の電気式ディーゼル機関車のメリットは、構造が単純なので、砂漠が続くような土地でも故障せず、メンテナンス技術の低い発展途上国でも修理ができるという点である。 」(東洋経済Online 2021/02/19 6:00)。

なるほど、そういうことか。合点が行きました。そういえば、先日乗った列車は、チュニジア南部の砂漠地帯の入り口の街、ガベスまで行っていたな。

家の中にも砂が吹き込んでくるチュニジア。チュニジアでは、新幹線や電車で長距離を走っていたらすぐに故障してしまいそうです。また、日本でも貨物列車や除雪用として現役で活躍しているディーゼル機関車があることも知りました。

もし人々の間に考え方や行動に何か違いがあるとすれば、必ずその理由がある、と私は考えています。また、その地域の文化や歴史などは、地政学的なものに影響されている、とも。なるほど、チュニジアの列車しかり、その土地土地の事情や、利用目的に合った交通機関があるのだ、と改めて思いました。

それにしても、チュニジアのお母さんは小さな子供達を連れ大荷物での電車の旅、やっぱり逞しい。

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