JICA海外協力隊の世界日記

古田賢二のネパール大好き日記

食の安全・安心を届けたい

私の職場と要請内容

私の職場は、農業開発省に3つある局の1つ食品技術品質管理局で、英語の頭文字を取って通称DFTQC(Department of Food Technology and Quality Control)と呼ばれています。DFTQCは、カトマンズの本所の他に5つの地域(ネパール国土は東から、東部地域、中部地域、西部地域、中西部地域、極西部地域の5地域に分けられています。)に地域事務所があり、さらに国境の所轄地など主要な20の郡に食品検査ユニットが設置されています。職員の総勢は約240人で、大学で食品学を学んだ技術者がほとんどで、修士号や博士号の取得者も多数います。

DFTQCの任務は、健全で安全、品質、栄養価の高い食品を確保することです。具体的には、食品と飼料の安全や品質に係る規格検査、食品工場やレストランの衛生監視、食品加工保存の研究開発、栄養のバランスがとれた離乳食や栄養改善の普及等を行っています。また、FAO/WHOやWTOなど国際機関の照会所として、外国機関の訪問受入や職員の国際会議への出席など、多彩な業務を行っています。

私の要請内容は、食品検査の高度化支援を通じて、ネパールの食の安全・安心の推進に寄与することです。また、食品工場やレストランの衛生監視、食品の加工保存技術の普及など、食品全般について技術支援が求められています。

ネパールの食の安全を取り巻く問題

ネパールの食の安全を巡って、物理的な環境や制度的な環境などが日本とは異なっています。

・安全な飲料水の供給、ごみや動物の糞便の衛生的な処理、衛生的な食品の取り扱いなどなどが不十分であるため、食品や飲料水を原因とする感染症が頻発しています。

・野菜や果実の残留農薬基準、食品添加物の使用基準など食品の安全確保に必要な基本的な法律や規則が十分に整っていません。

・食肉を媒介とした感染症を防ぐために必要なと畜検査制度、衛生的な食肉を提供するために必要なと畜場の整備が不十分です。

 一方で、日本と共通するような問題点も見受けられます。

・牛乳や小麦粉への偽物混入、レストランや食品工場での不衛生な食品取扱いの露見、野菜や果実の残留農薬問題など、消費者の食の安全への不安が増大する一方で行政対応の強化を求める声が高まってきています。

・マスコミはもとより国の機関からも、消費者に分かりやすく的確な食品の安全情報が十分に発信されていないため、科学的に不正確な情報が流布し国民の健全な食生活に影響を及ぼすことが懸念されます。

食の安全・安心を届けたい

私は、1970年代から40年間近く、保健所、野菜や魚の卸売市場、食肉検査所、食品衛生研究所、本庁など様々な職場で食品衛生行政に携わってきました。日本の食品衛生の歴史は、食品添加物、残留農薬、動物用医薬品、輸入食品、大規模食中毒、毒物混入事件、放射能汚染、食品偽装など事件や事故がひっきりなしに勃発して、食品の安全を確保するため、いつも待ったなしの対応を迫られてきました。様々な問題を経て、日本では法律や基準の整備、検査技術の進歩、衛生設備の開発、安全に関する知識の普及等が進みました。そして、まだまだ十分ではありませんが、食の安全・安心の実現、言い換えると消費者が自らの自覚と意志で健全な食生活を送ることのできる社会、に少し近づいてきているように思えます。ネパールの状況は、少し前の日本と共通することがあるように思えます。

私は、食品が原因で多くの人の健康が損なわれるような事件や事故が起こらないように、また、もし起きてしまった時でも被害を最小限に食い止められるように、事前にできる準備を整えていきたいと考えています。ネパール人はもとよりネパールに住む日本人も含めたみんなに、食の安全・安心を届けることを目標に活動をしていきます。

SHARE

最新記事一覧

JICA海外協力隊サイト関連コンテンツ

  • 協力隊が挑む世界の課題

    隊員の現地での活動をご紹介します

  • JICA 海外協力隊の人とシゴト

    現地の活動・帰国後のキャリアをご紹介します

  • 世界へはばたけ!マンガで知る青年海外協力隊

    マンガで隊員の活動をご紹介します

TOPへ