JICA海外協力隊の世界日記

古田賢二のネパール大好き日記

東部ネパール地域のフィールド調査

[ネパール事務所註 本稿は4月25日の地震発生前に投稿されたものです]

2月の中旬に、カビ毒調査のため東部ネパール地域に行ってきました。トウモロコシ生産農家を一軒一軒訪問して、栽培方法、収穫時期、乾燥方法、貯蔵方法等を聞き取り身元の分かった検体を集めることが目的です。フィールド調査を行うには、地元の農家と顔見知りの人に仲介してもらう必要があります。私のカウンターパートのライさんはチャインプール出身で、ダーランにあるカレッジを卒業し、ビラトナガールにも親戚がいるなど東ネパール地域に精通しているため、ここを最初の調査地に選びました。

調査の順路は、先ずカトマンズから飛行機で東ネパールの玄関口であるビラトナガールに飛び、ここからジープで北上しチャインプールに向かいました。チャインプールからトゥムリンタール、カドバリ、ダーランの順に農家を訪問しながら南下し、イタハリから東西ハイウエーをインド国境のカカルビッタの近くまで走り、再度北上してイラームに行き、ビラトナガールに戻る6泊7日の強行スケジュールでした。私と同行するのは、もちろんライさんです。

先ず、チャインプールのライさんの実家と近くの親戚の所から調査を始めました。訪問した時期は乾季の末期で、2か月後の4月頃からトウモロコシの作付けが始まります。サンプルのトウモロコシは昨年の7月から9月頃に収穫されたものです。トウモロコシは外皮を付けたまま屋外で乾燥させた後、量が少ない所では家の軒下に洗濯もののように吊るし、量が多い所では日当りのいい屋外に放射状の櫓を組んで保管されていました。トウモロコシの種類は、白い色のデントコーンと黄色のポップコーンの2種類あるようでしたが、交雑して白と黄色が混ざっているものがほとんどでした。トウモロコシを調べて見ると、程度の差はあるもののいずれにもカビが生えていました。調査をした農家の話では、カビの生えたトウモロコシは食用とはせずに家畜のエサとして利用するとのことでしたが、実際の所はよく分かりません。携行したリーフレットを用いて、カビの生えた食品には強い発がん性のあるカビ毒が存在する可能性があること。ヒトの肝臓などに健康障害を起こすだけではなく、家畜の健康にも重大な障害を与えること。さらに、家畜の乳や肉を食べたヒトの健康にも障害を与えることなどを説明しました。

トウモロコシは、灌漑用水の乏しい傾斜地でも栽培できることから、山間部の多いネパールの農家にあってはとても重要な作物です。一方、収穫後からトウモロコシは外皮を付けたまま屋外に置かれていることが多いために降雨時には水濡れするなど、保管方法がカビの要因になっていると推察されます。トウモロコシを十分に乾燥させた後、実を軸から外して乾燥した屋内に貯蔵すれば、カビの発生を防止できると考えます。しかし、永年暮らしの中で築きあげてきた生活習慣を変えさせることは容易ではありません。カビやカビ毒が有害であることについて、十分な普及啓発が必要であることを痛感しました。

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