JICA海外協力隊の世界日記

インドネシア日記~ソロ活動中~

#18 インドネシア生活1年の振り返り(活動編)

こんにちは!

前回に引き続き、任期前半の1年間を振り返ります。今回は活動編です。生活編については、以下の記事をご覧ください。

#17 インドネシア生活1年の振り返り(生活編)https://world-diary.jica.go.jp/fushimikentaro/person/171.php

私は現在、インドネシアのソロという都市にある、さまざまな立場の社会的弱者が入所する施設「Sentra Terpadu Prof. Dr.Soeharso Surakarta」でソーシャルワーカーとして活動しています。

この施設は従来、身体障害者のみを対象としていましたが、2022年2月以降はこれに加え、精神障害者、知的障害者、高齢者、孤児、性的虐待被害者など幅広く受け入れることになりました。ボランティアの要請内容も、組織体制の変化に伴って多様化してきた経緯があります。

現在、約150名の職員と約100名の利用者がいます。赴任して3ヶ月間はどこの部署で何をしているのかを把握するため、施設内をくまなく回り情報収集をしました。できる限り多くの行事に参加し、私の顔を覚えてもらえるように努めました。

少しずつ配属先について把握できるようになると、次は協力隊員としての活動を行っていきます。「配属先が私に求めていること」、「ボランティアである私ができること」をすり合わせ、活動内容を考えていきます。ソーシャルワーカーは「生活に問題を抱えている方の課題を整理し、現状を一歩ずつ前進させる」ことが求められています。利用者とコミュニケーションを重ね、信頼関係を構築していく中で、利用者の困りごとを聞き出すと同時に、「好きなこと」「得意なこと」を見つけていきます。「好きなこと」「得意なこと」をより伸ばすことで、今抱えている課題を前進させるチャンスにつながります。

ここで、この1年で一番印象に残っている利用者Aさんの話をさせてください。

Aさんは身体障害と知的障害を持つ方です。小学校を途中で退学しています。他の利用者と交流することが難しく、集団で行われるグループ活動には全く参加できませんでした。人との会話を嫌い、日中は自室に引きこもった状態でした。私が話かけても、こちらの目を見ることはなく、無気力な表情のまま黙っていることが多い人でした。どのように接すればよいのかわからず、ただ毎日顔を合わせるだけの日々が続きました。

私は迷った挙げ句、地道な作戦を取ることにしました。Aさんに顔を見せることから始め、「おはようございます」「ご飯は食べましたか」などといった言葉を粘り強くかけ続けました。無口であったAさんが、少しずつではありますが問いかけに応えてくれるようになりました。

こうしてある程度の関係性を築いたあとでも、Aさんはグループ活動への参加には乗り気ではないようでした。私が理由を尋ねても、ただ首を横に振るだけでした。

グループ活動への参加ばかりにこだわっていても、進展はありません。私は次第に、Aさん個人で行うことができる課題を探すことが望ましいのではないか、と考えるようになりました。

ある日、私がAさんに「好きなこと」を尋ねると、絵を描くことが好きであると教えてくれました。その様子にいつもとは違うものを感じた私は、どのような絵を描くのが好きなのか、絵を描くときのポイントは何かといったことを掘り下げて質問していきました。「好きなこと」の中に、Aさんの個性を伸ばし、現状を一歩前進させられるものがあると信じていたからです。

私はAさんに、私の自画像を描いてほしいとリクエストをしました。数日後、Aさんは素晴らしい絵を完成させてくれました。上の画像がその作品です。この経験を通して、Aさんは絵を描くことに更なる自信を持ったように見えました。

私の自画像を描いたあと、Aさんは毎日絵を描くようになりました。絵のインストラクターに依頼し、週に一回のペースで指導を受けるようにもなりました。

それからしばらくして、Aさんは私の顔の鉛筆画を作成し、私にプレゼントしてくれた上に、絵の感想を求めてきました。それが上の画像です。私との関わり合いにおいて、Aさんの振る舞いが少しずつ社交的、積極的になっていったのです。Aさんのポジティブな変化は、支援者として本当に嬉しい出来事でした。

協力隊員として活動する中で、自分の思うようにいかないことが多く、精神的にしんどくなることがたくさんあります。たった一人のボランティアが異国で何ができるのかと存在意義がわからなくなることもあります。しかし、自分にできることを探し続け、実践していくことで、利用者の可能性を広げられたことは私にとって大きな自信となりました。これからも利用者の「できないこと」ではなく「できること」に目を向けて、「好きなこと」「得意なこと」を伸ばせるよう働きかけていこうと考えています。

私のインドネシア生活は折り返しを迎えました。辛いこと、悲しいこと、楽しいこと、嬉しいこと全てを経験しながら、残りの任期を全うしていきます。

任期前半の振り返り(活動編)は、以上です。ここまで読んでいただき、ありがとうございました!

それではsampai jumpa lagi!(読み方は ”サンパイ ジュンパラギ”  意味は” またお会いしましょう" )

SHARE

最新記事一覧

JICA海外協力隊サイト関連コンテンツ

  • 協力隊が挑む世界の課題

    隊員の現地での活動をご紹介します

  • JICA 海外協力隊の人とシゴト

    現地の活動・帰国後のキャリアをご紹介します

  • 世界へはばたけ!マンガで知る青年海外協力隊

    マンガで隊員の活動をご紹介します

TOPへ