JICA海外協力隊の世界日記

インドネシア日記~ソロ活動中~

#26 ストレングス

こんにちは!

今回は、私が派遣先で行った「ストレングス」についてのワークを紹介します。「ストレングス」とは福祉の現場でよく使われる言葉で、人それぞれが持っている強みや長所を指します。

皆さんの強みや長所は何でしょう?

こう聞かれて、すぐに回答できる人は少ないのではないでしょうか。

強みや長所といわれると、「サッカーがうまい」「英語を話せる」「パソコンスキルがある」など、一言で表せるようなわかりやすいものが浮かびやすいかもしれません。

しかし、じっくりと考えてみても、自分には何の強みもない…と自信を失う人は数多くいるかと思います。

人は他人と比較し、「できる」ことよりも「できない」ことに注目してしまい、気を落としてしまう傾向があります。特にSNSなどにより、他人の生活を見たり聞いたりすることが容易になっている現代では、無意識のうちに、自分との比較をしてしまいがちです。仕事やスポーツで優秀な成績を残しているようなすごい人達を見ては、「自分なんて…」と落ち込む人が増えています。

自分には何の強みもない。果たしてそうでしょうか。

朝起きて、歯を磨き、ご飯を食べ、仕事に行く。仕事から帰ると料理をして洗い物をし、洗濯をします。何気ない毎日の行動は、簡単なことのように見えて、実はすごいことなのです。例えば、高熱を出したときには、仕事や家事など持ってのほか、食事すらままなりませんよね。そんなときに、生命を維持するだけでも、実はたくさんのエネルギーが必要であることに気づかされることがあります。普段、当たり前のように行っている仕事や家事、その他数え切れない雑務をこなせること自体、素晴らしい能力なのです。できていないことを探せばきりがありませんが、日常を冷静に振り返ってみると、皆さんにはすでにたくさんの能力があることに気づくことでしょう。

どのような状態にあったとしても人には必ず「ストレングス」があります。ありのままの自分にも強みがあるのだと気付き、その能力を維持・向上させることで、前向きに生活できるようになると私は考えています。

特に身体障害、精神障害、知的障害、発達障害といった障害を抱えている人は、障害をもっていない人に比べて、自己効力感(自分ならできると思える力)や自己肯定感(どんな自分でも認めて愛してあげる力)が低下しがちであると言われています。障害が原因で発生する生活上の困難や、偏見、差別に直面するケースが多いことが原因のひとつであると考えられています。「自分は健常者と比べてできないことが多い」と負の側面ばかりに着目するのではなく、「自分にできること」や「得意なこと」を探し、伸ばしていくことは、自己効力感や自己肯定感の向上にも役立ちます。自分のあるがままの姿を肯定することで、精神的安定にもつながっていきます。

私の配属先には、精神障害者、知的障害者、高齢者、孤児、性的虐待被害者といったありとあらゆる社会的弱者が存在しており、皆それぞれにストレングスがあります。私から見て素晴らしい能力を持っている利用者であっても、本人はその能力に気づいていないと感じるケースが多く、今回のワークを企画するに至りました。

そのゲームの名は「ストレングス・タワー」です。

最近チームビルディング研修などで使われている「ペーパータワー」ゲームを使って、自分の強みをたくさん見つけていこうとするゲームです。

「ペーパータワー」とは20~30枚の紙を使用してタワーを作成し、その高さを複数のチームで競い合うゲームです。5人ほどのチームで協力しあいながら、道具を使うことなく紙だけでタワーを作っていきます。

できるだけたくさんの自分の強みを紙に書いてもらい、それを使ってタワーを作ってもらうこととしました。本来の「ペーパータワー」では紙の枚数に制限があるのですが、今回は枚数制限を設けず、より多く自分の強みを見つけられたチームが、タワーを作る材料を増やせるよう工夫しました。

参加した30名ほどの利用者を5チームに分けます。仲の良い人たちが固まらないよう、そして障害種別も様々になるようチームを作っていきました。肢体不自由な利用者は紙に書くことが難しいので、他の利用者にサポートしてもらいます。知的障害があり、ゲームの理解が難しい利用者はタワーの構築をメインで担当していきます。チーム全体が互いの能力を補完しあって、他のチームよりも高いタワーを作ろうと、自分の強みを必死に探し、紙に書いていきます。

自分の強みが見つけられない利用者には、私から質問をして、利用者自身が強みを発見してもらえるよう努めました。ある一人の利用者とのやり取りを簡単に紹介します。

私が「何か好きなことはある?」と尋ねたところ、利用者Aは「何もないけど、食べることが大好きでたくさん食べることができる」と答えました。食べ物をたくさん食べることができるということは、たくさんエネルギーを蓄えていて、力があるということだと私が説明したところ、利用者Aは「たくさん食べることができる」と自分の強みを認識し、紙に書いてくれました。

最終的に5チームが異なった形のタワーを完成させてくれました。ゲームをしながら、利用者全員が自分の強みや良いところを見つけることができました。

最後に、それぞれの自分の強みをみんなの前で発表してもらいます。ゲームを始める前よりも、皆どこか誇らしげでした。

人は皆、弱点や短所を持っています。しかし、それ以上にきっと多くの強みや長所があると思います。このワークを通じて、利用者のみなさんが少しでも自分という存在の素晴らしさに気づき、前向きに毎日を過ごしてもらえることを願っています。

以上が私が行った「ストレングス」ワークについての紹介でした。

それではsampai jumpa lagi!(読み方は ”サンパイ ジュンパラギ”  意味は またお会いしましょう" )

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