JICA海外協力隊の世界日記

黒海中継 by チーム・ギレスン

ギレスンのサクランボのルーツについて

チーム・ギレスンSV 丹羽です。

サクランボは、黒海沿岸・ギレスンが原産地だと伝わっています。日本で主体の甘果おうとうはイラン北部原産、酸果おうとうは黒海地方原産だと言われます。欧州から中国・天山南路を経て日本列島に入り、山形県寒河江市では、明治9年から栽培が始まりました。米国へは17世紀に伝わり、18世紀からオレゴン州で栽培されています。(出典:寒河江市HPのさくらんぼ大百科辞典)

サクランボをローマ帝国に伝えたのは、ルキウス・リキニウス・ルクッルス将軍(前118~前56年、以後ルクルスと記載)で、紀元前65年だと言われています。彼は、前74年に派遣され、前72年にカピラの戦いでポントス王国のミトリダデス六世を破りました。勝利はしたものの、兵士との不和等により、その後の指揮権はグナエウス・ポンペイウスに代わっています。

ポントス王国は、黒海東部エリア(現在の東部黒海地域六県とサムスン県等の在るエリア)を領土とし、紀元前281年から前64年まで続き、その後はローマ属州として紀元64年迄続きました。

さて、世界にサクランボをもたらすにあたり、ルクルスは欠かせなかった訳ですが、彼は美食家としても知られ、数々の逸話も残っています。現在も豪華な食を「ルクルス式」と呼ぶこともあるそうです。彼の食への関心が、アジア(小アジア)から欧州に食用サクランボとアンズをもたらしたと思われます。

現在、イタリアでは、ヴェネト州のマロスティカ産のサクランボがIGP(地理的原産地呼称)として認定されています。トルコでは、初夏から多くのサクランボが出回り、大変お値打ちに入手出来ます。現在は法規制により日本に輸入できませんが、近い将来規制解除になるかもしれません。ちなみに世界の生産国の一位はトルコで25万T、二位は米国、三位はイラン、日本は20位で2万T強の生産量です。県別には山形県が圧倒的です。トルコ語のサクランボを意味するキラーズはギレスンが語源だと言われています。又、サクランボの属するサクラ亜属の学名はCerasusであり、Karasos=現在のGiresunが語源だとも言われます。残念ながら今は、ギレスン県での商業的な生産は、ほぼありません。トルコ国内の品種は主にナポレオンであり、日本の佐藤錦(=ナポレオンと黄玉を交配と推定)等に比べ色、硬さ等に大きな違いがあります。真っ赤な品種が主体ですが、時に黄色も見かけます。私は流通形態の違いにも起因していると思います。ギレスンと寒河江市は、緯度(北緯38度)もほぼ同じで、1988年から姉妹都市となっています。

現在、ギレスンの圧倒的な農産物にて主要輸出商品は、フンドックつまりヘーゼルナッツです。ギレスン県の農地の64%がフンドック畑で、8万5千人の農家のうち、8万人がフンドック農家だと言われています。

特にファーストグレードの高品質な商品はギレスン産が主体の様子です。ちなみに、イタリアでもローマの位置するラッツオ州のヘーゼルナッツはDOP(地理的原産地呼称)に指定されており、製菓材料だけでは無く、肉料理の付け合わせにも利用されます。

今回の結びに、私の好きな言葉の一つを記述します。フランスの著名な食通のブリア・サブァランから。

The discovery of a new dish does more for the happiness of

mankind than the discovery of a star.

もしも機会があれば、次回はギレスン島について記載したいと思います。

丹羽世之樹

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