JICA海外協力隊の世界日記

特派員はやじいのバヌアツ通信

オニテナガエビ二世誕生

8月11日に撮った上の写真は水産局の淡水タンク内で飼育されている親エビ(Blood stock)です。左が大型の雄で右が雄より少し小型の雌です。どちらも頭胸部の生殖器官(雄は精巣、雌は卵巣)がオレンジ色に染まり成熟が近づいていることが覗われます。親エビの成熟が近づくと雌雄互いが交尾に興味を示し、夜、雌が脱皮した後に交尾が行われます。一雌に対して何回かの交尾がなされる(人間と異なり一妻多夫性)と、雌は腹脚肢部分に卵を産み付け抱卵します。この卵がしばらく経っても腹脚肢部分から脱却しなければ、いわゆる受精が成功したことになります。8月初旬から中旬にかけて淡水タンク内に受精卵を抱いた雌が多く見られたので、私がここへ来た本来の目的である「種苗生産」の実験に取り掛かることにしました。

オニテナガエビは稚エビから親エビに至るまでは淡水生活をしますが、産まれてきたゾエア幼生は甘い塩水(汽水)がなければ生き残れません。何故ならゾエア幼生はプランクトン生活をし、汽水中の小動物を食べながら成長するからです。従って抱いている卵の放卵を促すには抱卵雌を汽水中で飼育しなければなりません。9月2日に撮った写真2は汽水(塩分濃度は5 ppt)水槽中に放養された抱卵雌です。腹脚肢部分に成熟した卵を抱いている(抱卵)大きなお腹が見え、卵が孵るいわゆる産卵が近いことが覗えます。

写真2の雌の卵が9月6日に孵りました。いわゆる二世が誕生した日です。オニテナガエビはクルマエビのような海産エビと異なり、卵を抱いている期間が長く、ノープリウス幼生を飛び越えてゾエア幼生になって初めて汽水中に放卵します。いわゆる少卵ですが保護期間が長いため(過保護)、幼生の生き残りが良いのです。上の写真は直近の9月21日に撮ったエビ幼生の写真です。もうすでに上顎上に3-4枚の歯の形成、遊泳用の足の発達、腹部脚肢も見られます。オニテナガエビの幼生は11段階の変態を経て稚エビに達し、写真3の幼生は後2~3日もしたら稚エビに達すると思われ、今から稚エビの誕生が楽しみです。そろそろ稚エビへの旅立ちにあわせて、淡水への順応のため塩分濃度を低下させる必要がありと考えるこの頃です。

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