JICA海外協力隊の世界日記

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#10 Church Teachers' College アセスメントセンターその三

2020.1.27/2020.2.6/2020.2.10

2020.2.10
任地マンデビルにある障害を持つ子どものためのアセスメントセンターに行った時の話です。
配属先の活動の間に、3回行かせてもらいました。

学校訪問のときに対応していた子が、セッションを受けるということでこの日にスタッフのセッションの様子を見学させてもらうことにしました。

1.ソーシャルワーカーのセッション
大きなビーズクッションが点在させてある部屋にて。前述の生徒ともう一人の女の子が対象でした。本来は一対一でやることが多いそうですが、この日はたまたま2人。また前述の生徒はすぐに部屋からどこかに行ってしまい他のスタッフに連れ戻され集中できないようでした。ソーシャルワーカーは女の子とのセッションを始めます。今回は初期のインテーク面接(初回に行うセッションの紹介をし、対象者のニーズを聞き取る面接)のよう。8歳だというその女の子は礼儀正しく、ときにビーズクッションに飛びついて遊ぼうとするような子供らしい一面もありながら、受け答えが素直な子だなという印象を受けました。ビーズクッションはときに寄りかかるなど楽な姿勢で座ってよいので、リラックスできてよいなぁと思いました。その場でのやりとりには問題はないものの、彼女も両親が不在で家庭が複雑なようで、心理面で問題を抱えているようでした。以前は勉強がついていけていない子のためのセッションにも通っていたようですが、現在は問題の要素として家庭が大きいので家庭とのやりとりやこちらのソーシャルワーカーによる認知行動療法が主体のセッションに参加することになったと聞きました。(私の理解が間違いなければ)ソーシャルワーカーが認知行動療法をするのは不思議でしたが、今センターでは心理士が雇われていない(センターマネージャーと診断士は心理士であるが、その他はいない)ので、関わり方の手段として用いているのだろうなと解釈しました。一見子どもらしい、傷つき体験をしてきたであろう女の子が一番好きな時間は「教会で神様と話している時間」と話していたのが、文化的な違いも感じ印象的でした。

2.特別支援教員のクラス
こちらは3~5人の生徒が一度にいて、それぞれ個別に読み書き計算などのプリントやものを使った課題をしているところでした。
一人の子は2段落程度の文章題を解いていて、問題に書かれている言葉の意味を先生に抜き出してもらって指定された言葉を抜き出していくということをしていました。(“Vegetable”なら文章の中から“peas”や“carrot”を抜き出すというもの)そばで見ていたのですが、あまり進んでおらず、「これなんて読むの?」と聞かれて「キャロットだよ」と伝えると理解してそのままその単語を書き写すというようにスペルを読むのが難しいが聞いて理解はできている様子でした。ほかにもアルファベットが書かれたお手玉を並べる課題をしているが、アルファベットの順番を理解できていない様子の子、また数字のなぞり書きのプリントをしているが1はできても2はどうしても鏡文字になってしまう、かつ絵に描かれたリンゴの数を数えるのも難しい子などがいました。参加していたのは5年生、6年生の子たちで、渡された課題は躓いていましたが、少なくても座って取り組もうという姿勢はありました。
特別支援教員に聞いたところ前述の文章題をしている子に対しては、みんなと教室で同じことはできなくても、先生の指示がおおまかにわかるようにというところを目標としていると教えてくれました。また彼女はスペルを読むことはできなくても聞けば理解できるから他の方法は検討しているのかという問いには、ロッカーの中からカードを読み上げしてくれるスペルが読めない子のための代替機を出してきてくれて、こういうものもあるということも教えてくれました。

3.診断士のクラス
High schoolの生徒に対する個別のインテーク面接でした。詳しくはわからなかったのですが、弟に暴力をふるってしまうという男子生徒。評価は終わっていて、その子の興味の持てる教科の勉強をこれからしていくという話をしていました。

4.看護師の部屋
待ち時間の間に待機させてもらったときに話を聞くことができました。直接セッションで介入することは少ないようですが、最初のアセスメントの際に周産期の様子、家族歴、体調などを聞きとるとのことでした。また発達段階などについて家族に講義することもあるそうです。

5.作業療法のセッション
センターマネージャーに一人の男子生徒のセッションを頼まれてしまいました。なにか脳障害がある可能性があり、以前できていたことができなくなっているとのこと。必ずセンターのスタッフについてもらうということで引き受けてみることにしました。その子についてどのようなことで困っていて、どのようなことを目標に、何をして関わっていたか、できることを具体的に聞いて道具も何があるのかわからなかったので、事前にこんなものはあるかと確認して見せてもらい行いました。全体的に発動性が乏しい印象の男子生徒。なるべく本人の主体性や感情を引き出せるように、粘土やブロックの摸倣、カードの名前当て、自分でもブロックや粘土で何かを自由に作ってもらい名前を付けてもらう、簡単な競争をする、感想を選択制で答えてもらうなど試行錯誤しながら、行ってもらいました。介入中は少し感情や考えの表出に繋がったかな、という場面がありました。途中からスタッフはいなくなってしまい、困っていたところソーシャルワーカーが来てくれて、セッションを見ながら少し声掛けなどもしてくれました。ソーシャルワーカーに私の見立てと介入の意図のフィードバックをして、その後センターマネージャー、担当の特別支援教員にも結果を伝えました。センターマネージャーはもっと遊具を使うなどダイナミックに体を動かすことでよりいろんな表出を引き出せるかもしれないというと少し驚いていて、アプローチの仕方の違いがお互いにわかったかもれないと思いました。あなたの介入で効果があったのだねと言ってくれたのですが、そうではなくて、1回きりのセッションで何かを解決できるわけではないと思うので、その介入の意図を理解して継続して関わることが大事なのではないか、途中でスタッフはどこかに行ってしまってそれができずに困ったということも伝え納得してくれたようでした。特別支援教員は介入の内容についてはそこまで関心がないようでしたが、記録に書いてほしいと言われたので、セッションの記録を書くことにしました。

感想としては純粋に勉強が遅れているだけでなく、家庭の複雑さから学習に影響をきたしている子も通って来ているということ、センターに通う子どもは身の周り動作が自立し座って取り組むことはできる子ではあるが、年齢に比して学校の勉強という点では難しさの大きい子が来ているということ、またどこが難しいかの標準化された発達や知能のアセスメントはされているが、その難しさの特徴を分析する評価やどのように難しさに取り組むか、など一人一人に合わせた支援をどう行っていくかについてはまだこれからなのかもしれないと思いました。学校訪問は個別の生徒に対して比較的手厚い支援がなされているが、どこまでそれを担任の先生や家庭と連携して功をなしているのかは一度の見学ではわかりませんでした。このような役割をするセンターも地域の中では一つだけ。特別支援教員の養成も始まったばかり、ここのセンターも去年開所したばかり、その中で試行錯誤しながら始まっているのだろうなと思いました。配属先のスタッフとやりとりするときに比べるとこのアセスメントセンターのスタッフとはこちらの伝えたいことがスムーズに伝わってその違いを知れたことも収穫だったと思います。基礎的な共通認識を持つことも大切。またここにも作業療法士が関われることはたくさんあるのではと感じました。

写真2枚目:アセスメントセンターにあった指導書

写真3枚目:アセスメントセンターの裏の校庭。Church Teachers' Collegeは敷地が広く、付属の幼稚園も持っているようで、体育のようなことをしていました。

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