JICA海外協力隊の世界日記

a journey to the better future

#8 Church Teachers' College アセスメントセンターその一

2020.1.27/2020.2.6/2020.2.10

①2020.1.27
任地マンデビルにある障害を持つ子どものためのアセスメントセンターに行った時の話です。
配属先の活動の間に、3回行かせてもらいました。

きっかけはさかのぼること12月。Family expo & special needs resource fair (通称Disability expo)という地域の障害者団体が集まるイベントにて。私の配属先も出展しており、障害児の家族から相談を受け、スクリーニングをしたり、パンフレットを販売したりしていました。たくさんのブースがあり、エイズの検査や血圧測定、マリファナに対する啓発や理学療法士、言語聴覚士、CBRなどの相談、スクリーニングなどが可能で、地域の障害者に関する団体のことを知り相談ができるおもしろいイベントでした。私も一つずつブースをまわり、「私はCBRJで働いているの。ここは何してるところ?」と聞いてまわりました。職業訓練、図書館、役所の防災課、アメリカからボランティアできているPTSTなどと話すことができました。
その中にNorthern Caribbean University(通称NCU) という、任地では一番大きな大学のブースがあり、そこの心理学部の教授とも話しました。その女性は学会で日本に行ったことがある、と気さくに話してくれました。この人に「マンデビルの障害児のことをもっとよく知りたいんだ。地域でほかに関わっているところを知らない?」と聞くと連れて行ってくれたのが、Church Teachers’ Collegeのブースでした。彼女自身も成人も子どもも対象としているとのことでした。

そこで対応してくれたのが、Church Teachers’ Collegeのアセスメントセンターの受付業務をやっている女性。ブースでは概要を説明してくれ、年明けに電話連絡をしたときに日程調整や訪問がうまくいくようにスタッフのコーディネートをしてくれました。英語での電話が苦手な私はドキドキだったので、丁寧に対応してくれてとてもありがたかったです。

そして1回目の訪問の1月27日。
受付の女性が「見学の前にあなたが何をやっているのか、ここで何をしているのか、情報交換する機会にしたらいいよ」と言ってくれたので、簡単なプレゼンテーションを作って訪問しました。
紹介されたのはセンター長の心理士の先生。最初、二人で私の持ってきたスライドを見て、話すことになりました。見ている間に、プロジェクターの使える部屋があるよ、と言ってもらい、流れでおそらくその日センターにいたスタッフを全員集めて、話を聞いてもらえることになりました。


自己紹介、CBRJについて、作業療法について(定義、障害児領域で対象とする分野、脳性まひや自閉症の評価・アプローチの視点・簡単な事例紹介)、配属先でやっていること、ここにきて知りたかったこと、質問事項などをプレゼンテーションで伝えました。おそらくその日は2時過ぎでスタッフは一連の仕事を終えてお疲れだったと思うのですが、メモを取りながら熱心に聞いてくれていました。作業療法のことは知っているような、知らないような印象。作業療法は文化にとても影響されるから(例えば私たちは食事の時お箸を使うけど、ジャマイカではナイフとフォーク、私もその使い方を学ばないといけないと言うとちょっとうけました(笑))、もっとジャマイカのことを知りたいんだと伝えました。スタッフからは発達段階のチェックをしてそれに合わせて介入をしているのか、ASDの子にcommunicationで介入することがあるのかなどと質問をもらい、もちろんYesと答えました。このようなやりとりを通して専門領域が重なるところがあるということをわかってもらえたのではないかと思いました。配属先で同僚と話しているときよりも、語学が不十分でも伝わりやすいなと思いました。

また日本では脳性麻痺の子も普通学校に行けるんだよと伝えるとすごく驚いていました。私の配属先が重度な障害の子どもが多く、スタッフの人員も足りていない状況の中で常々重度な障害を持つ子どもたちへの支援はまだまだ不十分なのではないかと感じていたので、日本とは状況が大きく違うということも伝えました。

得た情報は以下の通り。
参加してくれた人:センターマネージャーの教育心理士、診断士(心理士)、受付業務の女性、ボランティア、特別支援教師、看護師
1.アセスメントセンター 2019年2月より開所。3月よりアセスメントを開始。

2.生徒数 これまでの利用者数 14人

3.生徒の障害の診断名と重症度 
知的障害、ダウン症、自閉症、ADHDなど。学習障害と行動障害、勉強が遅れている子を中心に対応している。排泄が自立している子が対象。

4.生徒の年齢 6歳~16歳
4,5,6年生でPEP(中学校の進学先を決める入試)に向けて勉強する。この時期が最も重要とされており、そこにフォーカスを当てる。

5.時間帯、頻度、方法 
8:30~3:00の間で週に3回、午前か午後に1時間のセッション。個別もしくは小グループ。

6.介入につながるきっかけ、ルート、介入が終了した生徒はいるか、卒業の目安
教育省が勉強に支障がある子のリストを持っている。もしくは個人的に親が連れてくる。
これまでマンチェスター県とセントエリザベス県の500人のアセスメントを終了しており、優先度の高いものから介入している。待機数がかなり多く、人員も限られているため基本は3週間のプログラムでいったん終わり。その後学校訪問をすることでフォローアップする。必要性がある生徒のみ介入を継続する。

7.臨床心理士(Clinical psychologist )と教育心理士(Educational Psychologist)の違い
臨床心理士は一般的な心理について、教育心理士は教育に特化している。主に行動と認知機能を扱う。

8.教育診断士(Educational diagnostician )とは何か
一般の教員の資格を持っている人が多い。このセンターの教育診断士は心理士と特別支援教員の資格を持つ人が行っている。アセスメントを行い、計画を立て、介入を行う。

9.ジャマイカでは介入プログラムは主に心理士によって提供されるのか。
特別支援教員が実施。

10.理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の必要性は感じるか
感じる。特に言語聴覚士が必要とされている。

11.このプログラムを行う点で困難なこと
支援を必要としている生徒の数が多いが専門家と人員不足のため支援の提供に制限があること

12.ジャマイカ全体で共通して使用されている評価バッテリー(標準化されており、一般に普及している知能検査や発達検査)はあるか。
一般的なもの…PEP(中学入試の共通テスト)
専門的なもの… WASI Wechsler Abbreviated Scale of Intelligence Ⅱ 
   WRAT wide range achievement test academic skills reading, math, spelling, comprehension
  PEABODY picture vocabulary test vocabulary, receptive vocabulary
それぞれのアセスメントセンターで個別に評価バッテリーを選定して使っているとのこと。ジャマイカ中で共通はしていない。

11.地域の学校との連携はあるか ある

12. ジャマイカとマンデビルではインクルーシブ教育はどのように進められているか。
アセスメントセンターの生徒は一般学校に戻るため、インクルーシブ教育が進められている。

いろいろな障害の重症度の子どもたちのいる中で、最重度を除外してしぼっていること、しかしその中の子どもたちが学校で勉強についていけるように支援を行っていることがわかりました。重度な子どもに対しては私の配属先などが受け入れ、地域で連携しているのだと考えているようでした。まだまだ障害児に対する支援は始まったばかりで人員的にも今はそれで精いっぱいなのだということも伝わってきました。

写真2枚目:Family expo & special needs resource fairの様子

写真3枚目:アセスメントセンターの一室

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