2024/05/10 Fri
活動
活動について
自己紹介の次に活動先について紹介したいと思います。
私の活動先は障害児を対象にしたNGOです。1970年代にジャマイカのある一人の医師のアイデアから始まりました。地方では障害児へのケアや早期介入などのサービスが届いておらず、障害児の親をCBR(コミュニティーベースドリハビリテーション)ワーカーとしてトレーニングし、親から親へ知識を伝達することで障害児の環境をよくしていこうという目的で設立されたそうです。
今はリタイアしていますが、私の元同僚で30年ほど前にマンデビルに住む障害児の親が集められてトレーニングを受け、長年CBRワーカーとして障害児の家々をホームビジットとしてまわっていた人がいます。その元同僚も息子が幼いときに障害を負い、病院で説明を受けた時はbrain(脳)の障害と言われてもどういうことかわからなかったそうです。その後私の配属先のトレーニングを受けて初めて子どもの障害のことを理解し、子どもにどういうふうに関わったら良いかということがわかったとのことです。そして、その後CBRワーカーは少しでも他の子どもや親へのhelpができて、感謝もされ、この同僚が最もしたかったことで働けて嬉しかったと話してくれました。現在も時々まちであいますが、70代になった今でも元気な、愛のある、敬虔な素敵な女性です。
CBRワーカーが働いていた頃は、海外の援助団体によって、その活動資金が支援されていたようです。その後、2010年頃、支援団体から政府に支援機能が移管され、それ以前に行なっていた親へのトレーニングやCBRワーカーの活動、親で作っていたグループ活動などが縮小されてしまいます。私が派遣された2019年以前も5年ほど財政難で活動先は閉まっていたと聞いています。
2019年の4月に私が派遣された頃、職員は3名、子どもは3名、その年の9月に職員と子どもが増え、子どもは30人近くになり、その後コロナ禍の2年間の閉鎖を経て職員5名、子どもは20名程度で今に至ります。現在の職員はティーチャーズエイドと呼ばれており障害児の親ではない人が多いです。
最近他の小学校や特別支援学校を訪ねる機会がありましたが、私の活動先にいる子どもたちは、他の学校の子どもたちより日常生活活動(いわゆる排泄や食事なども含めて)や、行動面でより大人の手を必要とする子どもが多いです。
子どもたちの障害の種類は脳性麻痺、自閉症、ダウン症など、年齢は2歳から17歳までの子がいます。
活動先はschoolと呼ばれており、子どもたちが毎日通う施設になっています。子どもには日々の食事、排泄といったケアと、ワークブックなどを用いた教育的なことが提供されています。
そんな中、作業療法士として配属され、期待されている活動内容としては、子どもたちに作業療法が提供されること、子どもたちの個別の介入計画を立てること、同僚や親への知識の伝達がなされることなどです。ジャマイカには実働の作業療法士は10人にも満たず、首都キングストンでしかアクセスできずプライベートクリニックであるためお金もかかります。
作業療法は、日本でも一般的に広く認知されている職業ではないと思います。その場所、国、施設によって働き方は異なると思います。簡単にいうと、日常のその人がしたいと思っていることやしなければならないこと、周りからすることを期待されていることで意味や価値のあること(作業occupation)に従事することで健康や幸福であることを支援する仕事です。日々のセルフケア、学校に行くこと、働くことなどさまざまな次元のさまざまな作業をみんなが持っており、それをすることで生きがいにつながったり、その人の存在が認められ、所属することの意義にも関わると考えます。
作業の様子から、一人一人の子どもの力や環境との相互作用も踏まえて発達や成長を見守りつつ、その周りの同僚や親の教育や子育ての作業も支援する。日本でも親や学校の先生の話を聞いたり、子どもの観察をしたりして、学校生活で起こるコンフリクトに対し、一緒に考え依頼者の作業がより叶うように働いてきました。しかし日本の経験が必ずしもジャマイカで通用するとは限りません。ジャマイカで私が子どもにとってこれがいい!と思って行動してもそれがいいようにとられない場合もあるのです。特に躾の仕方も、子どもが置かれている社会状況も、家での生活スタイルも私がこれまで経験してきたものとは異なります。
そんな中で、病院の医師のように子どもは今この症状だから、こういった作業療法介入がいいと断定できないところもあって、同僚の様子を見たり、他の施設を訪ねたりして参考にしつつ、子どもの人権が守られ、一人一人の持つ力や成長の機会が担保されるような環境が整えられるよう、正解はないのですが時には大変な思いもしつつ、日々あれこれ試しています。日々の関わりはコイン落としゲームのようで、見た目にはパッとしないですが、同僚との日々のやり取りを重ね、子どもの成長を一緒に見届けることでお互いの理解や交流が生まれることが大切なのかなと思っています。ジャマイカの社会自体も、障害児を取り巻く状況も、日本と比べると不安定で、期待したことが必ず起こるとは限らない現状があります。それらを身近に経験しつつ、そんな中一緒に働けること自体や、子どもたちの何かしらのきっかけになれる毎日を小さな幸せに感じています。
今回は説明ばかりで具体的でないので、日々の日記としてまた綴っていきたいと思います。
写真1枚目:教室の様子
写真2枚目:配属先のプレイグラウンド。外遊びひとつにしても、作業療法の経験から体づくりは子どもの成長に大切と思っていますが、外遊びに対する価値も異なります。
写真3枚目:これもプレイグラウンドの一部ですが、裏側のフェンスが壊れており、近所のファーマーが飼っている牛が時々侵入してきて追い払っているところです(笑)
SHARE