JICA海外協力隊の世界日記

人類みなアミーゴダイアリー in BRASIL

地球の真裏に届いたエミリーの夢 ~夢の続き ②~ さわやかNo,90

前号のNo,89で半年ぶりに南米・ブラジルに戻るという報告をさせていただきました!


では,なぜ今回再び南米の地に行くこととなったのか。
そうなるまでに何が起こったのか。

No,90からの記事で詳しく記していこうと思います


【南米行きのきっかけはブラジルの野球少女・エミリーの夢】


ブラジルでの活動が終了したのが,7月。
その約3ヶ月前,監督をさせてもらったチームの子どもたちと日本遠征を行いました。

現地の方々のサポートや,日本での多くのサポートのもと,ブラジルの9人の野球少年少女は,枚方市の小中学生との交流試合を行ったり,履正社スポーツ専門学校の女子チームと一緒に合同練習を行ったり,はたまた,春の選抜が開催されていた時期だったので,バックネット裏の最前列・ドリームシートで横浜高校の試合を見たり,京都観光を行ったり。
本当に本当に日本での充実した10日間を過ごすことができました。

この話の主人公であるエミリーは,私が監督を務めたチームのメンバーです。
男の子に混ざり,唯一の女子選手としてプレーしていました。しんどい,痛いは一切言わず,キャッチャーとして,面倒見の良いお姉さんとしてチームを引っ張ってくれました。

そんな彼女の将来の夢は「日本の女子プロ野球選手」
日本でプレーすることが彼女の将来の夢なのです。その話は,私と出会った当時からずーーっと彼女は言っていました。

「先生!どうやったら日本で野球ができるようになるの?」

チームが代替わりのため,11月の最後の練習を終えてからも,私が日本に帰国するまでの間,「時間がある時,日本語を教えてください」と週に2時間,グラウンドの食堂スペースで日本語の授業を続けました。風の強い日もスコールの降る日も,坂道の多い道を自転車でグラウンドにやってきては,食い気味で私の授業を受けてくれていました。
それは,私が日本に帰国してからもそう。ビデオ通話で週に2度,基本的な日本語の授業を現在も続けています。


【動き出した日本女子プロ野球選手との繋がり】


2019年3月に行った日本遠征中の終盤,私は1人の女子プロ野球選手の方から,Facebookでメッセージをいただきました。
なんとその選手は日本滞在中に私がアップしていたFacebookの記事を見られて,連絡をくださいました。

「はじめまして 。女子プロ野球で選手兼コーチをしている小西と申します。去年,叶わなかった目標の一つがブラジルでの野球教室開催でした。現在,プレーしながらも日本で幼い子どもにグローブをプレゼントし,野球普及活動をしています。今後とも,情報交換はじめ,ブラジルの動きや現状を知りたいのでよろしくお願いします」といった内容でした。

まさかの女子プロ野球界でレジェンドと呼ばれる方からのメッセージ
2019年は女子プロ野球設立10周年なのですが,小西選手はその設立当時から女子プロ野球発展に選手としても,普及人としてもご尽力されてきました。数々のタイトルを獲得され,日本代表選手としてもワールドカップで幾度と活躍されました。

メッセージをいただいた頃はちょうど,私自身もエミリーの将来に向けて,日本でプレーする方法を考え,調べていたところでした。

「すごいプロジェクトですね!是非,いつかブラジルにもいらしてください。ブラジルも野球人口を増やすために,様々な策を講じているところです。また、私も今ものすごく女子野球に興味があります。というのも,私の指導するチームにエミリーという選手がいます。彼女は将来,日本のプロ野球でプレーすることを目指しています。私自身彼女の夢をサポートするため,調べていたところです。今後,色々と情報を教えてください。」と返事をしました。

小西さんは,もともとJICAの日系研修でブラジルからやってきた野球指導者の研修会に講師として参加された経験があり,ブラジル,ペルーやパラグアイの方たち数名に対し,日本の野球について講義と練習方法等を紹介される機会があったそうです。そのおかげで私と共通の知人とも面識を持っていらっしゃいました。
そこから,南米への野球普及活動を!といった繋がりがあったそうです。


初めてのメッセージのやりとりから,ちょこちょことFacebook上でやりとりがあり,「やるなら本当にやっちゃいましょうか?」という流れに。
小西選手自身もプレーされていたし,リーグでの責任もあったので,簡単にはいかないだろうけどやってみようという話になりました。
そこで初めてのプロジェクトとしてエミリーちゃんの目標を叶えにいこうというプロジェクトを形にしていきましょうか」という話へ発展したのです。

【憧れの小西選手と】

まだこのプロジェクトに関して何も決まっていない状態ではあったのですが,日本の女子プロ野球選手から,連絡をもらったことをエミリーに伝えました。

すると返事がボイスメッセージで私に届きました。聞くとものすごく興奮してる様子で,
「えーーーーー!!先生!本当ですか!えーーー!信じられない!嬉しい。信じられない。何か私にできることはないかな?あ,手紙書く!手紙を書くから先生が日本に帰ったらそれを小西選手に渡してください!」と。

そら,憧れとする日本のプロ野球選手と繋がってメッセージをいただいたとなると,そうなるのもわかります。良い反応にこちらもものすごく嬉しくなりました。


この私とエミリーのメッセージのやりとりは私が日本に帰国する約2週間ほど前のできごと。
翌日の練習で「手紙の文章考えてきたから,チェックしてください!」と彼女は書いた手紙を渡してきました。

見ると,大体はポルトガル語なのですが,所々日本語で書いていました。これまでの私との授業の中で覚えた言葉を,教科書を見て自分なりに書いていました
誤字脱字もありましたが,日本の文字にこれまで触れたことのない13歳のブラジルの女の子からしたら上出来です。
訂正なんてもってのほか。その手紙を清書させました。
その様子も小西選手に届けばいいなと,彼女が手紙を清書しているところを動画で撮り,彼女の普段の練習の様子とともに,一つのビデオを撮りました。(それがこちら:https://www.youtube.com/watch?v=wAW7DFh8Agw&t=3s

動画の中でもありますが,彼女は昨日のメッセージの後からFacebookやWeb上で小西選手のことを調べまくったらしく,私よりも小西選手について情報を得ていました。聞くと,「昨日は嬉しすぎてたくさん調べちゃった!」と。
想像するだけでも微笑ましい。
彼女の想いを受け取り,私はその手紙とともに日本に帰国しました。

そして7月の末,お忙しいなか小西選手に時間をとっていただき,会うことができました。
京都のカフェ。はじめましてのご挨拶の後,ついにエミリーの手紙を渡しました。
とても感動してくださり,無事にブラジルから持ち帰った13歳の少女からの任務を遂行することができました。

【プロ野球選手の想いとマッチしたエミリーの夢】

もちろん,小西選手が元々“南米へ野球の普及を”と思っていらっしゃったということもありますが,こうして私が一緒の思いで今回の活動につなげることができたのは,教え子・エミリーの想いがあったからこそ。
彼女が私と過ごした時間の中で,夢を語り,その夢に対して本気を見せてくれたからこそ。
“夢を口にしたら,夢が向こうから近づいてくる”
こんな言葉がありますが,まさにそれが形になりました。

『あんたの夢叶えたろか!』
1人の女子選手の想いが私をはじめ,多くの人の心を打った事実。
もうすぐ小西選手と会いに行くよ!

喜ぶ顔を見るのが今からとても楽しみです。

☆小西さんへ届きますように @ブラジル・インダイアツーバ

☆エミリーの想いが詰まった手紙を受け取り感激してくださった小西選手@日本・京都

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