JICA海外協力隊の世界日記

人類みなアミーゴダイアリー in BRASIL

TEAMSWYK 置かれた場所で咲きました!!! さわやかNo.33

【心をひとつに】
試合当日の朝。
『はいよー!ここに一列に並んで!手紙配るで〜』

出発間際の部屋の前。私は子どもたち一人一人に赤い封筒を手渡しました。

一体,これが何かと言うと,選手から選手へ感謝の気持ちを述べたもの
前の週に行った合宿の夜に子どもたちを集め,『今まで一緒に頑張ってきたチームの一人一人に何か一言伝えよう』。そうだけ言って,紙と封筒を渡しました。

この一年間の仲間に対するそれぞれの想い。

受け取った子どもたちは,バスに乗り込むなり,全員が自分のために書いてくれた一言をじっと読み込む。
読みながら照れ笑いを浮かべている子もいれば,照れを隠しきれずに「えーーー!そんなこと思ってたん!?えーー!そんなん知らんかったしなぁ笑!えーーー!」と,朝5時半のバスの中で,大きなリアクションを取り満面の笑みを浮かべる子も。

私も経験がありますが,とにかく“自分のこんな所を見ててくれてたんだ”と知った時,とても恥ずかしい気持ちになる反面,それ以上にとても嬉しい気持ちになります

とりあえず,試合に向けて,気持ちを高めるためのスイッチを1つ押すことができたかな〜?と,1人シートに座り,その様子を見ながら会場まで向かいました。

【いよいよ開幕】
ブラジルの大会は,とにかく朝が早い。
この日の開会式は7時半から。
ブラジル全国から集まったチームは14チーム。と,言ってもほとんどがサンパウロ州・パラナ州近郊のチームのため,全国というのは少し言葉が違う気がするのは否めませんが。(元々は80を越えるチームが参加していたと聞いたので,その減り具合に驚きです。)

私たちの第1試合目は,開会式終了30分後の8時にプレイボール。
初戦の相手はプレジデンチ・プルデンチ。
これまでの大会から割り出した星の数は,私たちのチームが全体の9位に対して,相手は4位のチーム。トーナメントリーグのシード権を持っているチームで力では相手が上。

難しい試合になるだろうと思ったのですが…

チームはしっかりと成長していました。

試合終盤まで互角。
お互いにしっかりと得点を重ねるシーソーゲーム。
そんな中,ここまで全試合で,四番を任した選手が4回にホームランを打ちました
これまでの試合ではなかなか会心の当たりが出ずに悩んでいた彼ですが,個人練習は誰よりも頑張っていました。
周りからは,「なぜ彼が四番?」と言われたこともありました。
でも,私は『みんなは知らんかもしれへんけど,普段の頑張りやチームを引っ張る姿,発する言葉の内容から“いつか結果を出してくれるはず”』と思い続けていました。
そんな彼が最後の大会で見せてくれたホームラン。ベースを回る顔がとにかく嬉しそうで,三塁コーチャーズボックスで思わずどでかいガッツポーズをしてしまいました。(私が。笑)

そんな試合は最終回,表の攻撃だった私たちの最後のイニング。一点差で2アウト満塁の一打逆転の大チャンス。回ってきたバッターは,前の打席でスリーランホームランを打っている四番バッター。
カウントツースリーからのヒッティング。
右中間に飛んだ大飛球でしたが,相手センターのダイビングキャッチのファインプレーで一歩及ばず。
10-11の惜敗でした。


悔し涙を流す子もいれば,やりきってスッキリした顔の子も。
私はこれまでで一番のゲームができ,満足でした。勝たせてあげられなかったのが,悔やまれる所ではありますが,満足です。

この後,翌日を含め合計で3試合させてもらいました。
トータル4試合で結果は1勝3敗。
負け越しはしましたが,どの試合も最後の最後まで諦めない野球をしてくれたので,非常に嬉しい内容でした。

【全てが報われた“あの言葉”】
そして,全試合が終わり大会の閉会式後,ブラジル野球連盟の本部役員の方が,こちらに話しかけにきてくださいました。

開口一番,「金曜日の夜は,一番前の席に座ったから,インダイアツーバが優勝か?と思ってたけど,残念だったね。でも,自信持ちなさいね。この一年間,どこのチームが一番成長したかと言われると間違いなくインダイアツーバだよ。おれだけじゃない。役員全員がそう言ってチームの成長に驚いていたよ。」と。

その瞬間,肩の力がストーンと落ちました。

嬉しかった。
そう言ってもらえたことが,とても嬉しかったです。


勝ち負けが全てではない。
もちろん勝つことによって,これまでの頑張りを表現することが誰もが納得できて,理解が手っ取り早い

でも,このような言葉をぽろっと言ってもらうだけでも,それ同等の価値がある。何ならそれ以上の価値があるのではないかなと思います。

スポーツには勝ち負けがあって,どうしても勝ちが輝いて見える。
だから,これまでに「先生!勝ちましょう!次の大会は優勝ね。」と発破をかけてくれる保護者のお父さんと,「いやね。確かにそれも大事で,それを目指しますが…。」と,お互い納得するまで3時間程ぶっ通しで,意見をぶつけ合ったこともありました。

でも,今回の大会の子どもたちの活躍は,誰がどうみても“勝利”よりも価値のある成果だったと思います。
一年間,この大会に向け,一生懸命頑張ってきた子どもたちもきっと,それを身に沁みて感じたことでしょう。

役員の方にそんな嬉しい言葉をいただいたことを保護者の皆さんに伝えると,
「おめでとう先生」と言ってくれました。

ここに詰まったたくさんの意味に思わず泣いてしまいそうになりました。


『支え合う・わかり合う・やりきる・感動する』とは,このチームのチーム目標。
このブログのタイトルに毎度毎度『さわやか』とついていて,「なんやろこれは?」と思っていた方もいらっしゃったと思いますが,上の4つの言葉の頭文字を取ったもの。

勝ち負けのある野球においても,勝ち負けのない教室でも,仲間が隣にいる環境では,この4つの言葉が軸となり,最後の『感動する』が達成された時,そのチームの真価が表れます。

まさに,このブラジルで出会ったTEAMSWYKは,最後の最後まで自分たちの持てる力を出し切り,やりきった。そしてその気持ち・姿が自分たちを感動させ,また多くの人に感動してもらえるチームとなりました。

9人から始まったチーム。時には言葉が伝わらずに,伝えることを諦めかけた事もありました。チーム内が分裂して,どうにもならないかもと思う日もありました。ブラジルの文化に圧されて,『やりたいけど文化の違いなんやな』と認めたくないけど,認めざるを得ない現実との間に悩んだこともありました。
しかし,それに負けたくなかったのも事実。
あの手この手を繰り出しながらやってるうちに,気付いたら最後の大会の日になっていたという感覚です。

ただ,これも全ては子どもたちのおかげです。
ぽっと現れた日本人が監督になって,つたないポルトガル語で指導をする。
にも関わらず,全力で応えてくれる選手たち。
この子達の能力は凄まじいものだと感じずにはいられません。

一年間かけて目指したチーム像に近づけたのは,これまで共にやってきた選手,また保護者の皆さんのおかげです。

この一年の指導者としての期間を振り返り,ブラジルのゆるーりとしたリズムのおかげで,私自身,指導の中の断捨離が上手くなったと思います。
また,『ビジョンを示す』『その人なりの進み方』をアドバイスした後は『求めすぎない』『信じて待つ』ことで,成長を見せてくれるんだということがわかりました。(そこに,綺麗な説明や上手い言葉を並べる必要がないということも。)
もちろん子どもの性格も十人十色。全員が全員そうであるかは分かりませんが,この方針はきっと間違ってないんじゃないかと感じます。

本当に子どもからたくさんのことを学ばせてもらった一年でした。

将来,このチームの子どもたちのうち何人が野球に携わる人生を歩むかは分かりません。どんな形で携わることになっても,また違う競技に進んだとしても,どんな人生を歩むことになっても,引き出しにしまってあったピンクの紙のメッセージを見つけ,このチームを思い出し,日本人の先生と共に駆け抜けた,2018年の一年間を忘れずにいてくれることを願います。

2018年11月11日 TEAMSWYK 置かれた場所で咲きました!!!

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