JICA海外協力隊の世界日記

Abaibai! ケニアぽれぽ~れ日記

忘れずにいたいこと。



ジャンボー!!(公用語のスワヒリ語で「こんにちは!」)

ケニアで活動中の伊治です。



1年半ケニアで過ごしていると、どうしようもなく、この世界は不平等だ、理不尽だと思うことがあります。

今まで日本で何不自由なく生きてきた私は、ケニアに赴任してから、生まれた国や家庭が違うだけで生きる環境がこんなにも違ってしまう現実を日々目の当たりにしています。

協力隊に参加した理由のひとつが「私には何ができるかを探すため」だった私にとって、“何ができるか”どころか、ただ目の前の現実を受け入れることしかできない、むしろ向き合い、受け入れるのさえ時間がかかり立ち尽くしてしまう、そんなときもあります。

今回の日記では、そう感じた出来事をシェアしたいと思います。




隊員活動で関わりのある農家さんが茶畑を持っており、その畑を訪れたときのことです。
任地のケリチョは茶葉の生産で有名です。彼女は日雇いの女性3人を雇っており、彼女らはその農家さんの茶畑で早朝からお昼までひたすら茶を摘みます。お昼すぎには紅茶工場のトラックが茶葉を回収しに来るため、それまでに仕事を終わらせなければなりません。

仕事は、早朝からの茶摘みから始まり、buying centerと呼ばれる茶葉回収場所まで重い茶葉袋を背負って運び、重さを測ってトラックに詰め終わるところまで。日給は約150200ksh≒150200円)。

しかし毎日この日給を受け取れるわけではありません。茶葉が芽を出すまでには、摘んでから2週間空けるため、茶摘みは月23回ペース。他の茶摘みを掛け持ちしても、頻繁に仕事があるわけではありません。

その他、森で薪になる枝木を集めて販売する人もいますが、一度に運べる量も限られており、一回の収入は約200ksh




私達は茶摘みで生計を立てる家庭にお邪魔しました。

月収は約500ksh(≒500円)。主な収入源は母親の稼ぎだけ。母親一人でprimary school(日本では小学校〜中学校)に通う子ども3人を養っています。父親は子どもたちが幼い時に病気で亡くなりました。

家の敷地に小さなキッチンガーデンがあるため、飢えることはなくとも、砂糖や塩などの調味料、牛乳(家畜を飼う余裕もない)、米はほとんど買えない状況です。

ケニアでは、油で野菜や肉を炒め、塩で味付けする料理が主流ですが、この家庭では野菜を茹でて、ウガリ(ケニアの主食)と食べます。

またケニア人にとって、砂糖と牛乳を入れたチャイ(日本ではミルクティー)は日常的に飲まれており、来客をもてなす飲み物でもあります。でもこの家庭では砂糖や牛乳を手に入れる余裕がない。そのため普段飲んでいるのはストロングティー(日本ではストレートティー)です。

住宅にもお邪魔しましたが、リビングにはほぼ物がなく必要最低限の家具だけ。離れにあるキッチンも建物の枠組みに布がかけてあるだけの簡易的なものでした。

IMG20231204103347.jpg
台所の様子。大きめの石で手づくりしたかまどで調理をしている。




私はその状況を受け止めるのに相当時間がかかりました。

そして一家を訪問した帰り道、同行してくれた農家さんに「私には何ができるだろうか?」と聞いてみました。彼女曰く、この家族の経済状況はケニア人から見ても深刻なものだそう。「クリスマスプレゼントで、油や砂糖を買うのはどうだろう。きっと食卓の足しになるはず」と助言をもらいました。

彼女をはじめ、親戚、近所の人がお金を少しずつ出し合い、この家族の住居、家具、貯水タンク、子どもたちの授業料などを寄付したそうです。また近所の人は食事時には一家を呼び寄せて、一緒に食事をしているそう。そうして周囲の人達でこの一家を支えているとのことでした。

そしてもうひとつ心が痛む出来事がありました。
それは出してくれたチャイに牛乳と砂糖がたっぷり入っていたこと。来客があったから、とお金を工面して、私たちのために牛乳と砂糖を買いに行ってくれたのだと想像します。申し訳ない気持ちもありつつ、有り難く最後まで頂きました。

そんな中ひとつだけ希望を感じる出来事もありました。それは厳しい現実に向き合いながらも、勉学に励み、夢を持つ子どもたちの姿でした。子どもの一人は、「将来は心理学者になりたい。深刻な病気を抱えた人の力になりたいから」と、語ってくれました。私がもし同じ境遇にいたとしたら、この気持ちを抱けるか分かりません。




現実を知ると心が痛み、受け止めるだけで精一杯なときがあります。なぜこんなにも不平等なのだろうと。

「ケニアには仕事がない」「日本に連れて行って。仕事がほしいから」というフレーズはケニアに来て数え切れないほど聞きました。仕事がないからお金がない。彼らの努力だけではどうにもならない現実があります。

私にできることを見つけるのは難しく、出来たとしても微力です。でも、この現実を“知ったことにまずは意味があると思いたいです。日本に帰国して豊かな生活を送るようになっても、ケニアで見たこと、聞いたこと、知ったことを覚えていたい。この一家のことを忘れずにいたいと思います。

そしてゆっくりでもいいから、「私には何ができるのだろうか」の答えを見つけていきたいです。




私の私見も入っていますが、この出来事から感じたことを書きました。

皆さんはこの投稿からどんなことを感じますか?



今回の投稿はここまで。

それでは、また。

コンゴイ!(現地語キプシギス語で「ありがとう!」)

SHARE

最新記事一覧

JICA海外協力隊サイト関連コンテンツ

  • 協力隊が挑む世界の課題

    隊員の現地での活動をご紹介します

  • JICA 海外協力隊の人とシゴト

    現地の活動・帰国後のキャリアをご紹介します

  • 世界へはばたけ!マンガで知る青年海外協力隊

    マンガで隊員の活動をご紹介します

TOPへ