2021/12/03 Fri
任国 活動
任地のゴミ事情と配属先の課題 その①
Sasa!みなさんこんにちは。
ケニアで環境教育隊員として活動している加賀瀬です。
みなさんは、ゴミの最終処分場を見学したことはありますか?
小学校の社会科見学で行ったことがある、という人がいるかもしれません。
冒頭に挙げた写真は、私の任地であるキアンブ郡ティカにある「カンゴキ(Kang'oki)最終処分場」です。
市街地を外れてほんの1kmほど進んだ先に、このような光景が広がっているんです。
果てしなく続くゴミ、ゴミ、ゴミの光景。
カンゴキ処分場は、キアンブ郡にある唯一の最終処分場です。そのため、郡内で収集されたすべてのゴミがここへ運ばれ、捨てられています。
ここでは、ゴミに混じったプラスチックや金属などの資源物の回収を生業とする「ウェイストピッカー(Waste Picker)」と呼ばれる人々が多数働いています。
同じ最終処分場でも、ぜんぜん見た目が違いますね。
日本とケニアでは、ゴミ処理に関して以下のような違いがあると考えられます。
①ゴミの中間処理方法
日本では、多くの自治体でゴミを焼却処理しています。
私の地元自治体でも、リサイクルの対象になるもの(プラスチックや瓶、缶など)や不燃物を除いたゴミは焼却されています。焼却後に残る灰はセメントで固められ、最終処分場に埋め立て処分されます。
一方のケニアでは、医療廃棄物などの一部のゴミを除いて焼却処理は行われません。収集されたゴミは、基本的にそのまま最終処分場へと運ばれます。
日本でゴミの焼却処理が行われるのは、日本の国土が影響していると考えられます。日本は山がちな島国であり、ゴミの埋め立て処分場を作るのに十分な土地がないため、ゴミの量を減らすために焼却する必要があるのです。
ケニアでは、主にコスト面の問題で、十分なゴミ収集・中間処理のシステムや、衛生的な埋め立て処分場などの設備の整備が進んでいないのが実情です。
また、カンゴキ最終処分場では、ウェイストピッカーたちが火を付けたり、自然発火が起こったりすることで、ゴミが燃えることがあります。コントロールされた日本のクリーンセンターでの焼却処理と違って、有害な成分を含んだ煙が環境中に排出されてしまいます。
②ゴミの最終処分方法
現在の日本の最終処分場では、土を被せて埋め立て処理を行いますが、ケニアでは写真の通りの「オープンダンピング」、つまり野積みです。土でゴミを覆わないので、食品包装のプラスチックの袋などの軽いゴミは、すぐに風で飛ばされてしまいます。
また、家庭から出るゴミのうち約70%が生ゴミであり、野菜くずなどを食べに放牧されているウシやヤギなどがやってきます。プラスチックや金属の混ざった生ゴミを食べてウシやヤギが死んでしまうこともあるかもしれませんし、ゴミを食べて育った動物の肉が食肉として流通していることも懸念されます。
不衛生な環境でハエが大量に発生するので、ハエが媒介する感染症(赤痢、チフス、コレラなど)が広がる恐れもあります。
他にも、こうした処分場では生ゴミなどの有機物から、嫌気発酵によってメタンガスが発生します。
メタンガスは先に述べた自然発火の要因にもなりますし、強い温室効果を持つ温室効果ガスでもあります(20年間で比較すると、二酸化炭素の約80倍の温室効果)。
前述したとおり、カンゴキ処分場はキアンブ郡にある唯一の最終処分場です。
郡内におけるゴミの発生量は、調査によると、2010年の約900tから、2020年には約1,400tへと増加しています。10年で約1.5倍の増加です。
最終処分場に運び込まれるゴミの量を減らさなければ、処分場はすぐにいっぱいになってしまいます。
キアンブ郡政府として、これに対処するために様々な手を打っていこうとしていますが、課題は多いです。
処分場に運び込まれるゴミの量を減らすためには、3R(Reduce リデュース/Reuse リユース/Recycle リサイクル:ゴミの発生量の減少/再利用/再資源化)という考え方が必要になります。
キアンブ郡では、生ゴミを堆肥へリサイクルする施設を建設したいと考えているようです。
郡内で排出されるゴミの約7割が生ゴミであるため、生ゴミをリサイクルすることは、ゴミの全体量の削減に大きな効果があります。
他にも、ケニア国内では金属やプラスチック、瓶、古紙などが回収され、リサイクルされています。
ケニアには「Taka ni Mali」というモットーがあります。「ゴミは財産」という意味です。
日本で言うところの「混ぜればゴミ、分ければ資源」ですね。
資源物の回収・リサイクルは、日本のようにちゃんとした制度として存在しているわけではありませんが、ビジネスとして成り立つので行われています。
例えば、前述のウェイストピッカーたちは、処分場で資源物を集めて、回収業者に販売することで生計を立てています。
私の活動においても、ゴミの分別についての教育を行う予定です。
分類は「有機ゴミ」、「非有機ゴミ」、「プラスチック」の3種類だけですが、まずはこのような簡単なレベルから始めていくのがいいと思います。
というのも、ゴミの分別はほとんど行われていないのが実情だからです...
これについては、また次回のブログでも触れたいと思います。
また、カンゴギ最終処分場の一画には、準好気性埋立構造(通称:福岡方式)の埋立処分場があります。
スウェーデン政府の出資のもと、日本の福岡大学と国連人間居住計画(UN-Habitat)などが協力して建設されたそうです。
土中に空気を送り込む構造になっており、好気発酵が進むことで、ゴミの分解を早め、メタンガスの発生を抑えるとのことです。
この処分場は、アフリカ初の準好気性埋立場として建設されましたが、こういった技術が普及していくとアフリカ諸国の処分場の環境改善が期待できますね。
今回は、任地の最終処分場について書きました。次回のブログでは、街中におけるゴミの課題について書きたいと思います。
それでは、Kwa heri!
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