JICA海外協力隊の世界日記

Sasa!ケニア・ティカ通信

ウェイストピッカーに対するワークショップを実施しました!

Jambo?みなさんこんにちは。ケニアで環境教育隊員として活動している加賀瀬です。
いよいよ3月。隊員としてケニアで活動する最後の月を迎えました。最後のまとめは次回のブログでするとして、今回は大詰めを迎えている私の活動について紹介したいと思います。

私の任地ティカには、キアンブ郡唯一の最終処分場であるカンゴキ処分場があります。
ケニアでは、ゴミは焼却処理や埋立処分されることなく、オープンダンピング(野積み)で処分されるのが一般的です。ゴミの分別などもされることはなく、あらゆるゴミが一緒くたに運ばれてきて投棄されています。
このゴミの中から金属やプラスチック、古紙などの有価物を回収し、リサイクル業者に販売することで生計を立てているのが、ウェイストピッカーと呼ばれる人々です。
私が配属先とともに実施しているのは、このウェイストピッカーの人々に対するワークショップです。

現在、カンゴキ処分場ではJICA専門家のアドバイスのもと、キアンブ郡環境局による改善活動が進められています。
この改善は、天候に影響されることなく処分場が持続的に運用されることや、現状のオープンダンピングからより環境的に望ましい埋立処分への移行を目指すものです。
この改善活動において、ウェイストピッカーの人々の協力を得ることが、作業をスムーズに進めるために必要となるのです。

カンゴキ処分場はキアンブ郡の施設ですが、その管理のために配置されている人員はそれほど多くありません。
一方、処分場で働いているウェイストピッカーの人数は約350名です。少人数で、それだけ多くのウェイストピッカーたちの活動を管理することは容易ではありません。
本来であれば環境局職員が行うべきゴミ収集トラックの誘導をウェイストピッカーが行っていたり、彼らがゴミを燃やして大気汚染や火災の原因となったりと、様々な問題が生じています。

処分場の改善を進めていくためには、ある程度、処分場のコントロールをキアンブ郡側に引き戻さねばなりませんし、それをウェイストピッカーの人々にも納得してもらわなければなりません。
幸いにして、私の同僚たちの過去からの努力があって、カンゴキ処分場のウェイストピッカーたちとキアンブ郡環境局の間には、対話ができる関係があります。
(処分場によってはウェイストピッカーがギャング化して、行政側と対立し、処分場の治安が悪化している場合もあるようです)
そこで、ウェイストピッカーの人々をワークショップに招き、環境局による処分場改善活動について理解してもらうとともに、活動への協力を呼び掛けることにしたのです。

ワークショップの内容は以下のような内容になっています。

  1. カンゴキ処分場の改善活動の目的と概要の説明。これは、キアンブ郡環境局の処分場担当の管理職から行います。
  2. JICAや日本の専門家による処分場改善への支援について。これはJICAの専門家の方が説明したり、私が説明したりしています。
  3. 処分場における安全や作業ルールの啓発。これが私のメインのパートになります。同僚の環境局オフィサーとともに行っています。

3について、もう少し詳しく説明してみたいと思います。
処分場の改善においては、ブルドーザーやショベルカーなどの重機を使用しています。日本では考えにくいことなのですが、ケニアでは処分場内で重機が稼働していても、その周辺を立ち入り禁止にすることはありません。ウェイストピッカーたちは、重機が稼働中でもその周りで有価物を拾っています。
言うまでもなく、非常に不安全な環境で作業が行われています。

また、ウェイストピッカーの一部の人々は、有価物を拾い終わった後の古いゴミに火をつけて燃やしてしまいます。そして、燃えた後で磁石を使って金属を集めるのです。
ゴミの処分場というのは可燃物でいっぱいの場所です。特に現在のような乾季には、ゴミはからからに乾燥し、非常によく燃えます。
場合によっては、処分場で火災が発生するおそれがあります。あまりに大きな火災の場合は、処分場の運用を停止せざるを得なくなります。ゴミ収集トラックは処分場にゴミを投棄することができなくなり、ゴミ収集がストップしてしまいます。
また、処分場には大量のプラスチックゴミがありますから、それが燃えることで有害なガスが発生し、ウェイストピッカーたちや処分場周辺の住民への健康被害も懸念されます。

他にも、道路や排水路に物を置かないこと、というのも重要です。
処分場の改善活動の一環として、処分場内の道路の拡張・整備や、排水路の整備が行われています。処分場内の道路は未舗装の土の道ですから、水に弱く、雨季には雨やゴミからの浸出水によって浸食されてしまいます。そのため、道路の定期的なメンテナンスや、水を速やかに排出するために排水路が必要なのです。
ひどい時には、道路がぬかるんでトラックが処分場内に入れなくなり、仕方なく道路上にゴミを投棄していました。それが繰り返された結果、処分場の外にまで大量のゴミが積み上がっていたこともありました。処分場内へのアクセスは改善活動の肝となる要素です。そのためには、道路と排水路の整備が不可欠なのです。
しかし、ウェイストピッカーの人々は、集めた有価物を道路上に置いたり、不用品を排水路に捨てたりして、塞いでしまうことがあります。

こういったことをやめてもらうためには、ただ彼らに禁止を押し付けるだけでは不十分であると思います。
こちら側の考えを伝え、彼らの言い分も聞いたうえで、両者で納得するやり方を決めなければなりません。

それ以外にも、投棄されたゴミから有価物を拾い集める際に、新しく導入したいルールについても説明しました。
こちらは、実際に何人かで体を動かして、体験型アクティビティとして実施し、講義ばかりにならないようにしています。

私は環境教育隊員としてケニアに派遣されています。元々は学校や地域コミュニティで、3Rなどの環境教育活動を行うというのが、配属先の要請でした。
しかし実際に現地に来てみると、環境教育担当の同僚は実際には兼任であり、主業務で手一杯で環境教育を行う余裕はなかったり、環境教育のために確保されていると聞いていた予算が実際には計上されていなかったりと、当初の要請内容とは条件が一部異なっていました。
配属先の機関の方針が変わったり、担当者が異動したりするため、こういったことはしばしば起こるようです。しかし、要請内容と実際の状況が異なっているからといって、活動をあきらめてしまう必要はありません。

私の場合は、任地でJICA専門家の方が処分場で活動されており、その活動を見学させてもらう中で今の活動へとつながっていきました。
私がいっしょに活動する人(カウンタパート)が、配属先の同じ部署の中で環境教育担当からゴミ処分場担当に変わりました。
そして、一般的な「学校や地域コミュニティでの環境教育」から、「ウェイストピッカーに対する教育・啓発活動」へと大きく活動内容が変わりました。
私が実際にワークショップを行うのは、2年間のうちの1ヶ月程度でしかないのですが、それでも非常におもしろい活動をさせてもらったと感じています。

これから活動を始める新隊員の皆さんには、初めから思うような活動ができなくても焦らなくていいですよ、と伝えたいです。
皆さんにはまだ時間があります。自分の納得のいく活動を見つけて、それが配属先にとってもメリットのあることであれば、いっしょに取り組むことができるはずです。

私自身がワークショップを行えるのはあと数回だけですが、同僚たちはウェイストピッカー350人全員に対してワークショップを行いたいと言っています。
つまり、彼らの手でこのワークショップは継続されていく見込みがあるのです。ありがたいことです。

私の隊員活動は、先がどうなるのか全く見えない時期が長かったですが、最後の最後でなんとか形になって終わることができそうです。
最後までワークショップ一回ごとに、改善を重ねていこうと思います。
それではみなさん、Kwa heri!

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