2022/03/28 Mon
任国 活動
モンバサ通信~インド洋に面したケニアの古都より
Hamjambo! みなさんこんにちは。
ケニアで環境教育隊員として活動している加賀瀬です。
3月7日(月)から11日(金)まで、「モンバサ」に出張してきました。
モンバサはケニアの南東部、インド洋に面した港町です。
古くからムスリム商人とのインド洋交易で栄えた街で、1,000年以上の歴史を持つケニア最古の都市の一つです。
120万人を超える人口を擁する、ケニア第2の都市としても知られています。
そのような歴史的経緯から、モンバサはイスラムやアラブの文化の影響が強い街で、多くのムスリムの人々が暮らしています。
モンバサのような、アフリカ東部・インド洋沿岸地域の土着の文化と、イスラム・アラブ文化の融合によって生まれたのが「スワヒリ文化」です。
ケニアの公用語の一つであるスワヒリ語も、東アフリカのインド洋沿岸地域が発祥なのです。
モスクも街中にたくさんあって、お祈りの時間を告げる朗誦が響き渡ります。
モンバサは海沿いの街のため、標高が低いです。
そのため、首都ナイロビや私の任地のティカなど中央高地の地域と比べて、気温と湿度が高い場所なんです。
久しぶりに日本の夏のような、むわっとする蒸し暑さを体感しました。
マラリアやデング熱のような熱帯病のリスクが高い地域でもあります。
安全面の問題から、JICA関係者は、旅行などのプライベートな用件で、モンバサを訪れることは認められていません。
そのため、普通であれば、JICA海外協力隊員は訪れることのできない場所です。
今回は、業務出張の機会を得られたため、幸運にもモンバサへと足を踏み入れることができました。
大変ありがたい、貴重な経験です。
今回の業務出張の目的は、セミナーへの参加です。
このセミナーは、「循環経済(Circular Economy)」に関するもので、JICAの後援のもと、ナイロビ市の廃棄物管理部門によって開催されました。
循環経済とは、従来の生産→消費→廃棄という直線的な「線型経済(Linear Economy)」に対して、資源の投入を効率化し、過剰な生産・消費を抑え、廃棄される物を少なくすることにより達成される、持続可能な経済のあり方です。
過剰な資源やエネルギーの投入を効率化するという点で、気候変動(地球温暖化)を抑制するのに重要な考え方であるとも言えます。
ナイロビ市のほか、ケニアの中央省庁やモンバサ市、そして私の所属するキアンブ郡が参加して、それぞれの取り組みについて発表し、意見交換を行いました。
また、国連機関や国際NGO、ケニア国内の民間企業、さらに日本の官庁や自治体、企業などの様々な組織がこのセミナーに参加しました。
ケニア側の参加者の多くが廃棄物管理の仕事に携わる人たちであるため、廃棄物管理や3Rの視点から循環経済を捉えがちですが、「拡大生産者責任(EPR)」など、より踏み込んだ視点も提供されて、大いに刺激を受けました。
ケニア環境・林業省からは、法令レベルで有機性廃棄物(生ゴミ)とその他のゴミを分別すべきではないかとの意見が出ました。
ケニアのゴミの6~7割が有機性廃棄物であることが、調査によってわかっています。
生ゴミとその他のゴミが混ざってしまうと、リサイクルは難しくなります。生ゴミとその他のゴミをしっかりと分別することで、生ゴミはコンポスト(堆肥)にリサイクルでき、その他のゴミも種類ごとに分別がしやすくなるということです。
これは多くの廃棄物管理担当者が認識していることであり、改めて課題として共有されたかたちになります。
会場で対面で行われる発表もあれば、オンラインでのプレゼンテーションも行われ、「ウィズコロナ」時代のセミナーとなりました。
高温多湿の環境の中、エアコンのない教室で、窓を開け天井のファンを回しながら行われたセミナー。
3日間にわたって、朝9:00に始まり、夕方16:30頃までスケジュールみっちりのセミナーでしたが、思った以上に皆さんしっかりと目と耳を傾けていました。
質疑応答が盛り上がって、毎回時間が押していましたね。
モンバサ市の再資源化施設(MRF)を訪れ、廃プラスチックを破砕・圧縮する設備や、有機性廃棄物を炭に加工する設備などを見学することもできました。
リサイクルが民間頼みのケニアにおいて、行政によるテコ入れがどう働くのかは注目したいところです。
私も、セミナー内で発表の機会をいただきました。
私の同僚が、今後キアンブ郡が予定している環境教育活動「エコスクール・プロジェクト」について発表。
それを受けて、私は日本の環境教育の歴史を踏まえたエコスクール・プロジェクトの意義と、循環経済との関係について述べました。
日本の場合は戦後の経済成長期に、経済重視で環境問題を軽視した結果として、公害・公害病という大きな問題が生じました。
その原因の一つとして、人々の環境に対する意識の欠如・不足が挙げられ、人々の環境意識を育てるための環境教育の必要性が叫ばれるようになった、というのが日本の環境教育の始まりです。
日本の小学校では、社会科の授業で日本の廃棄物管理について学び、クリーンセンターや最終処分場などの見学を行うことなどを紹介しました。
ケニアでは、将来的に人口がどんどん増加して、経済も発展していきます。
それに伴って、さらに環境に大きな負担がかかるようになります。
将来世代である子どもたちが環境に対する意識を持つことは、喫緊の課題です。
また、循環経済と環境教育の関係についてです。
一部の知識人やエリート層だけが循環経済を目指したとしても、それはうまくいかないでしょう。
社会のすべての人がモノを消費して、ゴミとして廃棄しているわけなので、できるだけ多くの人びとが環境やゴミに対する知識・意識を持つ必要があります。
そのために、学校で多くの子供たちに環境教育を提供するべきではないか、という意見を述べました。
今回のセミナーが、どのようなかたちで変化をもたらすのか楽しみです。
それではみなさん、Kwa heri!
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