JICA海外協力隊の世界日記

Sasa!ケニア・ティカ通信

ケニア総選挙と首都退避

Habari gani?みなさんこんにちは。
ケニアで環境教育隊員として活動している加賀瀬です。
先日、首都ナイロビで2週間の退避期間をすごし、また再び任地のティカに戻ってきました!

以前のブログでケニアの総選挙について書きました。
ケニアでは総選挙は5年に一度行われます。大統領・国会議員・郡(カウンティ)の知事・地方議員・女性代表の5つの役職の選挙が同時に行われる、国内の一大イベントです。
今年は8月9日(火)に実施されました。投票日は国民の祝日となり、多くのケニア国民が地元に里帰りをして投票します。

今年の選挙で特に注目されたのは大統領選挙です。ケニアでは、大統領の任期は2期までと憲法で規定されています。
今回は、現職のウフル・ケニャッタ大統領が任期満了となることから、新たな大統領を決める選挙が注目を集めたのですね。
大統領選挙には4人の候補者が出馬しましたが、実質的に副大統領のウィリアム・ルト候補と、元首相のライラ・オディンガ候補の一騎打ちとなりました。

そして、私たちJICA海外協力隊員は、選挙期間中は首都ナイロビへと一時退避していました。
これは、ケニアでは過去に、選挙後に国内が大荒れになったことがあるためなのです。

2007年の総選挙後に、破れた大統領候補者が選挙不正を訴えたことをきっかけに、国内各地に暴動が広がり、1,000人を超える死者と65万人以上の国内避難民を出した事件が起きました。
これを選挙後暴力(Post Election Violence=PEV)あるいは、ケニア危機と呼びます。
内戦などを経験してこなかったケニアにおいて、1963年の独立以降で最大の危機となりました。

ケニアという国は、独立以前はイギリスの植民地でした。
ヨーロッパの植民地支配を受けていた他の多くのアフリカ諸国と同じく、その国境線は支配者側の都合で引かれたものです。
それによってケニアという国は、40を超える民族集団を抱える多民族国家となっています(同様の理由で多くのアフリカの国が多民族国家です)

その影響で、例えばウフル大統領はキクユ人、ルト候補はカレンジン人、ライラ候補はルオ人というように、政治家たちが出身民族の代表者となります。
選挙戦での候補者同士の争いが、民族間の対立を呼び起こし、衝突が起こってしまうということもあり得るのですね。

そういった懸念があるため、今回の選挙では大きな混乱が起こった場合にすぐに国外へ避難できるように、隊員たちは首都ナイロビへと集められたわけです。

選挙は予定通り8月9日(火)に行われ、大統領選挙の結果は翌週8月15日(月)に発表されました。
ひとまずウィリアム・ルト候補が大統領選挙を制し、次期大統領となりました。しかし、今回もまた不正選挙の疑惑が出ており、対立するライラ候補が最高裁判所に、選挙結果に対する異議申立を提出する事態となっています。
幸いにも、今のところは大きな混乱や衝突はなく、選挙プロセス自体は平穏に進んでいるようです。

ナイロビ市内で選挙結果に対する抗議デモが行われたり、ルト候補の出身民族であるカレンジン人の地域では人々が街中に集まって熱狂的に喜んだりと、選挙というものに対する文化の違いを感じましたね。
選挙の結果で人々がここまで熱狂するのを見ると、場合によっては暴力的な行動につながってしまうこともあり得るのだなと、テレビを見ながら思いました。

異議申立が行われたことから、大統領選挙はまだ決着せず、最終結果は早くとも9月になるまで確定しないこととなりました。
2007年のケニア危機のような事態は避けたいようで、両候補ともに支持者への抑制を呼び掛けています。
結果がどうなるかはわかりませんが、このまま平穏にプロセスが進んでくれることを期待しています。

なお、私の任地ティカでは、選挙期間を通じて平穏な状態が続いています。
戻ってすぐに活動を再開することができており、安心しています。

それではみなさん、Kwa heri!

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