JICA海外協力隊の世界日記

マーシャルのゴミから見える世界

その27:"出マーシャル記"

本来ならば、本号で帰国前報告会の様子、次号はぶじ48日帰国しましたという報告でこのJICA世界日記を終える予定でした。しかしながら、すでに報道でもご存知の方もあるかと思いますが、今回のコロナ肺炎(COVID-19)対応のため、JICA海外協力隊の一時帰国という事態となりました。326日現在、大騒動の帰国を経て、2週間の待機中です。そこで、今回はこの大騒動の帰国のようすをご報告しようと思います。JICA始まって以来の事態、今後このような事態が発生することがないことを願って、私個人が見て、聞いた範囲の情報ですが記録として残すことは意味があると思います。冒頭の写真はマーシャル隊員9名と関係者家族2名がぶじ成田に帰着した時のものです。

#1 マーシャル、グアム、日本の温度差

 今こうして22ヶ月ぶりの日本でこの1週間を振り返ってみると、少々大げさですが戦争状態など有事の国外脱出はこんな様子なのではないかと想像できるようでした。今回帰国ではMajuro(マーシャル)、グアム(米国)、成田(日本)を経由して帰国しました。そんな中で、各空港(各国)のコロナ肺炎対応の温度差が大きいと感じました。

・マーシャルでは
 マーシャルの首都Majuroにある病院は国立病院一つだけです。また、この国ではこのような感染症対応の経験がほとんどないため、保健省トップは国家の危機的状況を認識されています。そのため、水際戦略として中国、日本をはじめとする感染者発生国からの入国を早くから禁ずる等の措置を取っています。例えば、国営のマグロ加工工場では入門時に体温測定、手の消毒徹底がされていました。ところがこれは例外で、みんなの日常話題には上がるものの、特にマスクする人もほとんどなく、コロナ肺炎は他の国の話という状況でした。国内では発生者がゼロという状況もあるでしょうが、やはり国民性もあるのかもしれませんね。

・グアムでは
 グアムでは当時5名の陽性患者が発生しており、入国制限が日々厳しくなる状況でした。Majuro出国時にはグアム入国者は強制的に2週間の隔離期間が設けられるとの情報もあり、戦々恐々での出国でした。いざ空港に到着すると、空港はガラガラ、街に出ても観光客は我々以外見当たらず、レストランはドライブスルー以外では接客を避けるため閉店状態でした。今回の帰国でもっとも厳しい状況でした。写真は深夜の鳥唐揚げ店のドライブスルーでかろうじて夕食を買うことができた場面です。

・日本では
 成田に到着してみて、これまでマスコミや聞いていた状況とは異なり、予想外に“普通の生活”がおくられていることに、少々驚きとともに安堵しました。これまで見聞きした限りではもっとギスギス、感情的に過敏な人が増えているという報道が目立っていましたが、現状はもっと落ち着いた状況でした。

#2 出国〜帰国までの時間的経過

 元々は4月8日に日本に到着して任期終了となる予定でしたが、3月16日に一時帰国が決まると、日本に帰る日が3月下旬に早まり、その2日後には便の欠航を受けて、さらに予定が前倒し。その週のうちに帰国となりました。出国から帰国まで、帰りの飛行機便が次々取りやめ等の変更が発生し、先の見えない不安の中で、帰国予定が繰り上がり、それに対応するのに精一杯でした。

#3 心に響いた言葉

 以上のように、出国から帰宅に至るまで、先が見通せず、つい不安になりがちな状況でした。幸いにもパニックにもならず、落ち着いた対応ができたのではないかと思います。JICA事務所スッタフのまさに献身的なサポートと共に、次に示すような心に響く言葉をその時々に仲間の人たちと共有し、仲間と共に行動できたということが大きかったと思っています。


・体ひとつ無事であれば、あとは何とかなるさ
 今回の一時帰国に際して、たまたまMajuroへ出張中で地元に帰ることもできず、荷物の片付けもできず、そのまま一時帰国となった方もおられます。そんな方の言葉です。これを聞いた時、地に足も着かず、さてどうしたもんだと迷っていた自分に大きな落ち着きを取り戻せた言葉でした。

・こんな時だから、みんなで助け合おうよ
 出国前夜に予定がさらに前倒しになり、当日夕方のお別れパーティーを実施するか、しないかひとりで逡巡していた時に仲間の一人の言葉です。これを聞いた時、つい焦っているうちに自分のことしか考えていなかったなあと反省させられました。

・最悪を考えながら、次の一手を考えよう 
 JICA事務所の調整員さんの言葉ですが、有事の基本的な考え方だと思います。
 今こうして、コロナ肺炎対応で大変な時期ではありますが、平和な日本に身を置いてみて、改めて上の三つの言葉を噛みしめています。最悪を考えながら、本当に大切なもの、守るべきものは何か、みんなでできることはないか、と自問しつつ、最善を尽くす。今回の貴重な体験を忘れずに次に生かしていけたらと考えています。

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