マーシャルのゴミから見える世界

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金沢 正文
滋賀県

タイプ/職種
シニア海外ボランティア
廃棄物処理
派遣国
大洋州
マーシャル マジュロ環礁
一言メッセージ
環境は生活であり、文化であると思っています。さて、マーシャルのゴミから見える世界とはどんな世界でしょうか?

 

その19:マーシャル語あれこれ

2019.11.18

文化

今回は現地語であるマーシャル語のあれこれについて述べてみたいと思います。

 先日、マーシャル語レビューとして、マーシャルに赴任後1年を経過して、改めてマーシャル語研修を受講しました。赴任直後にマーシャル語研修はあったのですが、その時点では赴任先での業務内容も不明なので、どうしても基礎的な学習になりがちです。それに対して、今回は赴任先で実際に使う場面を想定した学習で、かなり実践的かつマーシャル語の背景となる歴史や文化まで深めることができて、なかなか有意義でした。

 さて、冒頭の写真はマーシャルでよく見かける大きな虹です。この虹に関わるマーシャル語あれこれを。

#01 挨拶の場面で〜“Iokwe”

 挨拶の言葉は「Iokwe/Iakwe/Yokwe」です。ちなみに、マーシャル語はもともと文字を持たない言語で、後から入って来たアルファベットを用いて便宜的に文字表記されています。そのため、[iakowe]という発音表記に対して、文字表記は上記のように複数の表記が使われています。

 さて、このIokweの語源はIia(Rainbow)とkwe(you) 。あなたとの虹の架け橋。つまり、挨拶としての「こんにちは」の言葉となります。ちなみに、I love you としてもこの言葉が使われます。響きも良いこの言葉はどこでも、誰でも必ず挨拶で使われています。お気に入りのマーシャル語の一つです。

#02 会話の終わりは〜“Emman”

 会話の最後は、ほとんど「Emman」で終わります。日本語の「円満」に通じる言葉で、意味としてもGoodです。長らく日本語の円満が語源と信じられて来ましたが、今年発行された初のマーシャル語・日本語会話集である「ヤッコエ!マーシャル諸島 話してみよう!マーシャル語」(橋下岳、末松洋介、佐藤美香)によると、この日本語由来説は明確に否定されています。綿密な調査の結果、日本語が入って来た時代より以前からこの言葉が存在していたとのことです。どちらにしても、意味は円満として問題ないようです。

 さて、このEmmanですが、使い方に関して、実はなかなか奥が深いです。例えば、会議で決まった約束事に対して、みんな最後に「Emman」。ところが、蓋を開けてみると約束事を守らない人が続出! マーシャルの人はシャイといわれおり、会議の雰囲気をこわさないように、とりあえずEmmanとみんな返事してくれます。できそうであったも、たとえ、できそうでなくともEmmanです 。後で聞くと、できなかった理由は山のようにしてくれます。できなかった理由ではなく、どうしたらできるかを考えてもらえると、さらに良くなるのですけれどね。

#03 さて虹は何色あるのか?

 冒頭の虹の写真を見せながら、虹は何色ありますか?と、日本人に聞けば間違いなく7色という答えが返ってきます。ところが、マーシャルの人に聞くと人それぞれで、4色、あるいは5色という人が多いようです。

 日本人の7色説は教育によるものとされています。もともと、ニュートンが唱え始めた7色説を教えられてきたためとのことです。実際、7色は知っていても、7色の中身(赤、橙、黄、緑、青、藍、紫)特に、藍まで出る人は少ないのでは?

 これに対して、こちらの4〜5色説は、言葉が世界を切り分けていることを示しているとのことです。実際の虹は無限の色彩の連続なのですが、各人が持っている色彩の言葉が4つしかなければ4色、5つあれば5色になるという説明です。例えば、パプアニューギニアのダニ族の人は色彩に関して「濃い色」「薄い色」という2色しか言葉を持たないため、ダニ族の人にとって虹は2色になってしまいます。なお、これらの説明は「ことばと思考」(今井むつみ、岩波新書)に基づいています。

 必要は発明の母ということで、生活上必要な言葉はどんどんと細分化され多くの言葉が生み出され、そして、進化します。そのように生み出された言葉が、また新しい世界を切り分けるよりどころになっていきます。

 さて、あなたが日本以外に住んでおられたら、地元に人にぜひ「虹は何色?」と聞いてみてください。新たな世界が広がるかもしれませんね。