JICA海外協力隊の世界日記

ラオスを縫う

魂の移動速度

ラオスにはバーシースークワンという儀式があります。

バーシー(捧げ物)スー(〜へ)クワン(聖霊/魂)、魂に捧げ物をするというような意味。

簡単に言うと、悪いものを体から追い出し、良いもの(魂)体に入ってきて!という儀式です。

魂が体から抜けていると体調を崩したり事故にあったり、不幸が降りかかると信じられており、それを防ぐためにバーシーを行います。

バーシーでは、ミサンガのような紐や糸の束を手首に結ぶことで体に“良い魂”を繋ぎ止めます。

ライフステージが変化するときは特に魂が体を離れやすい時期とされており、バーシーが行われています。

古来から環境の変化からくる体調不良を“魂”と結びつけて考えていたのかもしれません。

バーシーの際、お祈りを受ける人は片手を手刀のように構え、もう片方の手は皿のようにしてお菓子などを載せます。

祈る人は受けての手首に紐を結びながら相手のためにお祈りの言葉を呟きます。

「健康でありますように」「試験に合格しますように」といったことから「お金がたくさんもらえますように」「美男/美女の恋人ができますように」といった俗物的なことまで様々です。

この時に手首に結ばれた紐は3日間外してはならず、自然と切れるまでつけたまま過ごす人もいるようです。

私は配属先でのピーマイ(ラオス正月)パーティーの時にバーシーを初体験しました。

中央に置かれた巨大なマリーゴールドの祭壇を囲むように参加者が円になり、祭壇から伸びる紐を持ち合唱しながら祈祷師(?)の祈りの言葉を聞きます。

途中マリーゴールドの花弁とともにキャンディが宙を舞う場面もありました。

全体でのお祈りが終わると、手に巻くための紐を祭壇から取り、個々に祈り合う時間です。

手にはゆで卵を握り大勢の人とお互いに賀詞を送り合いました。

派遣前訓練中にバーシーのことを初めて知った時、沖縄の「まぶい」(魂)と似ていると感じました。

驚いた時や人にぶつかった時に体から「まぶい」が飛び出してしまうので、あたりを探して呼び戻し、口に入れ飲み込む動作「まぶいぐみ」をして体に魂を戻します。

やはり魂が脱けると体に不調が現れると思われているため。

「まぶい」はひとり7個ですが、ラオスの「クワン」はひとり32個あるそう。

そんなにたくさんあるなら1つぐらいいいじゃないとも思わないことも...

速い乗り物で移動した後に魂が追いつくまでしばらく待つというのはアフリカの部族の話として聞いたことがありましたが、ラオス人も飛行機などで遠く離れた場所に移動した際にはバーシーを行うそうです。

速く移動したことで体と離れてしまった魂をバーシーで呼び寄せ、体に繋ぎ止めるのです。

国が違っても共通する魂観をもっているというのはとても興味深いです。

わたしがラオスに来たときはベトナム乗り換えでしたが、魂はちゃんとトランジットできたでしょうか。

ではまた次回。

ぽっぷ かん まい(またね)

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