JICA海外協力隊の世界日記

キリバス marurung(元気)日記

学校訪問

Mauri!

今回は嶋谷がお送りします。

私はここキリバスのKiribati Family Health Association(KFHA)の助産師として、主に2つの活動を行っています。1つ目は「若年妊娠(WHOでは10から19歳の女の子の妊娠と定義されています)予防」、2つ目は「生活習慣病予防」です。今回は1つ目の「若年妊娠予防」の活動の一環として、キリバス南タラワ地区の学校を訪問しワークショップを行ったので紹介したいと思います。

なぜ若年妊娠予防のワークショップをしたのか? 

ここキリバス共和国では「若年妊娠」が大きな問題となっています。そこで、去年KFHAのスタッフと協力して、どうして若年妊娠が多いのか、その背景を知るための調査を行いました。調査の結果、キリバスの10代の若者の性や生殖に関する価値観、避妊や性感染症予防に関するサービスを受けることのできない理由が分かりました。

調査の結果を南タラワ地区の学校を訪問し校長先生に共有したところ、現在キリバスの学校では理科の授業で男の子と女の子の体の違いなどについて学生達に話す程度であり、性教育がカリキュラム内に入れ込まれていないことが分かりました。また、若年妊娠による学校の中途退学を防ぐためにも「性」について生徒に話すことの必要性を感じるが、学校で「性」について話すことは「タブー」とされており、またどのように「性」について学生達に話をしたらよいのか分からないという声がありました。そこで今回南タラワ地区の10カ所の学校を訪問し10代の若者を対象にワークショップを行うことになりました。ユースボランティアが主体となってワークショップをすることになったので、私はその支援を行いました。

学校訪問で行ったワークショップの内容

劇【写真1枚目】

去年行った若年妊娠に関する調査の結果を基にして劇の台本を作りました。KFHAのユースボランティア達が音楽に合わせて劇をします。劇は「対象者の行動を変えるための効果的なアプローチ」の1つであり、学生さん達も楽しみながら避妊や性感染症予防の大切さについて学ぶことができます。

妊婦ジャケット着用体験

キリバスで手に入るものを使って「妊婦さんの体験ができるジャケット」を作成しました。作成するうえで使ったものはキリバスの女性がよく腰に巻いている1枚布「ラバラバ」、ごみ袋、土7kg、この3つだけです。この妊婦ジャケットを着ることで妊娠約89か月の妊婦さんの体験ができます。多くの男子学生さん達に妊婦体験をしてもらいました。

人生設計ワークショップ【写真2枚目】

調査結果において、多くの学生さんが夢や目標を持っていることが分かりました。人生設計ワークショップでは少人数制のグループに分かれて夢をいつ叶えたいのか、いつ結婚し子供が欲しいのか学生さん達に話しあってもらいました。話し合ってもらった後に、望まない妊娠や性感染症が及ぼす人生への影響について説明し、夢を叶えるためにも避妊方法や性感染症予防方法について学ぶ必要性があることを説明しました。

コンドームデモンストレーション

実際学生さん達にコンドームを触ってもらい、使い方について説明しました。こちらはユースボランティアがコミュニティで啓発活動を行う際にも実施しています。

10校を訪問し終えた後には3校を選び、ラジオ番組上で避妊や性感染症に関する学校対抗のクイズ大会も実施しました。

若者がポジティブに「性」について捉え、自分を守るために、自分の健康のために、自分の将来のために「性」について学ぶことが大切だと私は思っています。また情報の提供だけでは人の行動は変わりません。そこで今回の学校訪問では、一方的に情報を伝えるだけでなく、実際に手を動かしたり、体験をしてもらうことによって「性」について学んでもらおうと思い、「妊婦ジャケット着用体験」「人生設計ワークショップ」を私の提案でワークショップの内容に取り入れました。

今KFHAでは教育省と協働して学校のカリュラムの改定作業を行っており、新しいカリキュラムには性教育に関する内容だけでなく、自己肯定や男女間のコミュニケーションの取り方についての内容も入れ込む予定です。さらに、来年度KFHAのドナーと協力をして学校の先生を対象とした、学生への「性」の伝え方についてのトレーニングが始めることとなりました。

今回の学校訪問にあたって、KFHAの20名のユースボランティア達と一緒に学校訪問のプログラムを作成しました。学校訪問開始後、初めは時間内に学校訪問のプログラムを終えることができなかったり、ワークショップがうまくいかないなど課題が沢山ありました。しかしその後みんなで反省会を開き、なぜ時間内に終えることができなかったのかなどを振り返りました。反省会を終えた後は、その反省点をその後の学校訪問に活かすことができました。

ユースボランティア達はキリバスの「未来」だと私は思っています。彼らと共に活動できることを嬉しく思うと共に、多くの経験を通して、いつか彼らが「キリバスを変える力」「世界を変える力」になってほしいと思います。

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